夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

24004 アガサ・クリスティー「ABC殺人事件」 感想

長年の時を経て、うちのママの言うとおりだったと言わざるを得ないーーー

ポアロのもとに届いた予告状のとおり、Aで始まる地名の町で、Aの頭文字の老婆が殺された。現場には不気味にABC鉄道案内が残されていた。まもなく、第二、第三の挑戦状が届き、Bの地でBの頭文字の娘が、Cの地でCの頭文字の紳士が殺され……。新訳でおくる、著者全盛期の代表作。

 

小学校中学年の頃に、同級生の間で突如として海外ミステリを読むことが流行したことがあったんですよ。

「少年探偵ブラウン」が特に人気で、学校の図書館や学級文庫で競争率も高かったんじゃないかしら。そこからホームズとかアガサ・クリスティーを読む子も何人もいて、それを思うと今より海外ミステリに夢中な人が周りに多かったのではと思います。中学になったら三国志銀河英雄伝説が流行るようになるんですけどね。

 

が、当時私はミステリにそんなに興味がなかったんですよね。うちの母がアガサ・クリスティーのファンでたくさん読んでいて、家で見るテレビドラマもミステリ中心、映画はホラー映画中心で、それでもう食傷気味でした。

 

私は当時は学校に導入されたばかりの「世界の偉人の伝記」シリーズの方に夢中だったんですよ。ナイチンゲールとかキュリー夫人とかは当たり前で、パスツールとかレセップス(パナマ運河を作った人)とかのちょっとマニアックな偉人の功績も何度も読んでいました。そこから岩波の世界の名作文学に興味が向いていったので、ミステリはおとなになるまでちゃんと読んだことがあんまりなかったかも。

アガサ・クリスティーは母からたくさんネタバレを食らったのはこのブログで何度も書いた通り。ホームズもまったく興味がなかったしな…宮部みゆき先生の「レベル7」を彼女が人気が出る前になんだか勘が働いて手にとって読むまで全然読んだこともなかったかもだ。映画とかでは散々触れていたからミステリに興味がないとかはなかったんですけどね。

 

ABC殺人事件は、小学生の頃の海外ミステリブームのときに同級生たちが我先に読んでいたイメージがあります。そのタイトルから「ミステリを最初に読むのにうってつけの初歩的な作品」って勝手にイメージしていて、クリスティー読みの母に同級生がみんな読んでいるんだけど面白いのか訊ねたら、それはネタバレせずにただ「そんなに面白くないからみんなが読んでいるからって読まなくてもいいんじゃない」みたいなことを言ったんですよ。母が一番好きなのは「そして誰もいなくなった」なんですけど。

 

その助言?もあって読まないままだったんですが、母の言うことを鵜呑みにしてもどうかと思うし、名作として今も読まれているんだから何かしらの面白い要素があるに違いないと思って手に取った…と。

 

前置き長い!!!

 

でもこの作品も前置きが長いというか、回りくどいというか。

本当は1/3で済む話だったのではと思わないでもない。ポアロの胡散臭いフランス訛りのセリフを省いても良かったのではとか。あれ鬱陶しくない??キャラ付けなんだろうけども。

 

読み進めていくうちにこれは倒叙ミステリなのか叙述トリックなのかと首を傾げ、でもクリスティーが書いているんだからこの人がその通りに犯人じゃないんでしょ、とこっちは疑っちゃうんですけど、大してあんまり考えないうちに終盤でポアロが手早く謎を解いちゃったので「あ、そう…」って私は思うしかなくて。

登場人物を並べてみて、被害者の会をわざわざ一同に介するくだりがあったところからして、そこに意味をもたせるなら…と物語の流れそのものより作者の狙いについて考えちゃうと行き着く答えは決まってくるしね。

 

犯人に島国根性から来る外国人disがあったとかうっすい動機が織り交ぜられるのが、そういうキャラ付けにするにしてももっとマシな設定なかったんかと思ったりだ。被害者の会の面々のキャラクターをもっと掘り下げたら深みもあったかもしれない。

容疑者の名前とそのクローズアップのされ方がFGOを連想させられたのが一番読みどころというか、面白かったです。

 

これは私にもし娘がいて、ABC殺人事件を読もうとしていたら、流石に水は差さないとは思うけどもっと他に面白いお話はあるからいまそれを読まなくても…と、そっと促したかもしれない。

ストレスだけが溜まる作品だったな…ポアロが好きじゃないと改めて自覚してしまった。ミス・マープルのほうがまだ好き。一番好きなのはトミーとタペンスです。

 

わりと残念な読後感ですが、へこたれずこれからもアガサ・クリスティーを読んでいこうと思います…母の言う通りだったのがちょっとだけ悔しい。