夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

21012 アガサ・クリスティ「ゼロ時間へ」(ふんわりネタバレ)

 ( ゚д゚) ←読了2分前から読了1分後までの私の表情

有名な作品なので、ふんわりネタバレします。下手人の名前とかは出さないけど。

残忍な殺人は平穏な海辺の館で起こった。殺されたのは金持ちの老婦人。金目的の犯行かと思われたが、それは恐るべき殺人計画の序章にすぎなかった――人の命を奪う魔の瞬間"ゼロ時間"に向け、着々と進行する綿密で周到な計画とは?ミステリの常識を覆したと高い評価を得た野心作。

あらすじ読まなくてよかったな。話がかなり進むまで事件が起こらなかったのでこれはそういう話ではないのかとまで思うところだったわ。

この本は、私が子どもの頃に両親の本棚にあって、「逃げるアヒル」(スタローンの映画「コブラ」の原作ね)と「マルタの鷹」と一緒にタイトルを覚えていました。たぶんクリスティの本で一番先にタイトルを覚えた本じゃないかしらん。前者2冊は父の、クリスティは母の本です。

 

クリスティをちゃんと読んだのはこれで3冊めかな、ネタバレ知ってるのはいくつもあるけどおとなになってちゃんと読んだ3冊め。

 

事件が起こるまでの下地になる話がかなり四方八方にあり、それぞれがまとまってラストに行き着くのでそこはいいしそういう予感を含んでいるので面白く読み進められました。

冤罪をなすりつけられた娘の事件の真実を父親として見出すのではなく、警部という職業柄わかっちゃうところが序盤の好きなところですかね。でも序盤から胡散臭い部分がありました。物語で重要な役割を演じる男性を力づける看護師の物言いが暗示的なのは千里眼の持ち主の出る家系だからとか。そんな迷信じみたものを根拠にお話を盛り上げるか…って。

 

話の後半までは資産家のカントリーハウス?でバカンスを過ごすために集まった人たちの痴話喧嘩と恋の鞘当てと傍観者の下世話な反応の応酬があり、ダウントン・アビーを始め20世紀初頭の上流階級のお家あるあるですわァとまったり楽しみつつ、感情的な美人のキレっぷりとおバカっぷりがめんどくせーと思っていたところで事件が起こり、それから様々な証拠が提示され、あらゆる人が疑われては疑惑が晴れていきます。

結局誰がなんでどうやって起こしたんやろ?ってことに読者が謎を解く余地はなく、物語が進んでいくのをボーッと追いかけていくと、奇跡が起こるんです。

 

わたしゃー、こういうミステリで奇跡が事件を片付けるのは、嫌ですわァ

 

でもこの事件の謎が説かれることで救われた人が奇跡だ奇跡だって盛り上がってる。

しかもどういう経緯か、とんでもねーゴールインを見せた。

 

結果この顔→( ゚д゚) なんちゅー閉じ方すんねん、アガサおばさん…

 

サイコパスが犯人なのは犯人にしやすいからだと思うんだけど、アガサ・クリスティ以前にサイコパスが犯人の謎解き作品ってあったのかな。一見普通の人に見えるのも利点だよね。

あとサイコパスだから殺人を犯すというのもあるね。

 

感動もカタルシスもなく、ただただドラマを傍観した気持ちでしたが、まあそれでも最後まで読めたんだからお話づくりがうまいし、面白かったんでしょうよ。他の作品も読みたくなりましたよ。ポアロの名前が出てきてびっくりしたけどこの作品はノンシリーズです。

 

この作品に出てくるオードリーのような事情を抱えている人とかを実際知っているから書けるような表現があり、人間観察眼とかはたしかなんでしょうね。一通り謎が明かされると彼女の振る舞いや描写にも納得がいく。

しかし変な終わり方だった。

しばらく思い出しては首をかしげるでしょうな。