今度はいまのところ何冠なんだっけ??
自らの葬儀の手配をした当日、資産家の婦人が絞殺される。彼女は殺されることを知っていたのか?作家のわたし、アンソニー・ホロヴィッツは、テレビ・ドラマの脚本執筆で知り合った元刑事のホーソーンから連絡を受ける。この奇妙な事件を捜査する自分を描かないかというのだ……。かくしてわたしは、きわめて有能だが偏屈な男と行動をともにすることに……。7冠制覇『カササギ殺人事件』に続く、ミステリの面白さ全開の傑作登場!
「カササギ殺人事件」が面白かったのだけど*1すぐに出たこちらもあまりに評判がいいからすごいねーって、期待しながら読んだらよ。主人公で語り手が作者本人のアンソニー・ホロヴィッツなのよ。
元刑事で癖の強いおっさんが警察捜査の顧問として仕事をしていて(ホロヴィッツとの関係はマイクル・コナリーのボッシュの仕事を思い出したり*2 )今回取り組んでいる事件について実録ものとして自分を主人公に小説を書いてみないかと。
もともとその元刑事、ホーソーンを苦手に思っていたホロヴィッツは断るつもりだったけれど取り掛かった事件が興味深かったり、なんやかんやと引っかかったり気になる部分が多くてつい関わってしまうという。
この関係性、ホーソーンのキャラのほうがくどいけどホームズとワトソンそのまんまだなと、この作家さんが作中でも触れているけど本家の団体からお墨付きをもらったホームズ作家で前作はアガサ・クリスティリスペクトハンパない作品を書いた人だったのでまあ狙っているんだろうなと思いつつ、ミスリードを誘ったりそこら中に伏線をおいたりするのでフーダニットが膨らみすぎて大変!で。フーダニットは興味がないんだけど、ホーソーンとホロヴィッツの関係性が面白く、私が読んでもわかるくらいホロヴィッツが重要参考人に対してしょーもないことを訊くのが面白かったり、ホーソーンがホロヴィッツが書いた初稿に口出したりタイトルに口だすのを嫌がったりするくだりは殺人事件とは思えないほど可笑しかったり、興味がない人もぐいぐい引き込むパワーが有る。
第1章に口出すくだりは銀魂のジャンプの編集者にマンガ原稿のダメ出しする銀さんみたいだったな…で、あまりのボケたダメ出しにおいいいいいいい!ってツッコミ入れそうになるわたし。あの、正しい形の第1章の最初の文章ひどかったな…
現実に即した話として、実在するすごい人物がいろいろ出てくるのが面白いです。
この作者さんのほかの作品のタイトルもいっぱい出てくるんですが、日本でも先に出版されていたアレックス・ライダーもよく挙がっていて、その度にあの超かっこいいカバーを思い出していました。買おう買おうと思って買ってなかったけど。
買いたくなるでしょ?ね??ジャケ買いするっしょ?
ちなみに、映画化もされてます。
物語が進むにつれて事件そのものにもだけどホーソーンにもハマっていくホロヴィッツ、まあホロヴィッツには妻子がいるけど最終的に到達するのがかなりのボジションで変な方向じゃないけど私はニコニコ読んでしまいました。
話の書き方もすごく凝っていて面白いし、肝心の犯人ももしかしたら、って思っていた人だったけど…
ここからでかいネタバレ。
クライマックスのピンチが「カササギ殺人事件」と似てるのがとても惜しい。
主人公が犯人に殺されかける、怪我する、そして犯人が犯罪の告白。よう喋る。
火サスじゃあるまいし…崖の上じゃないってだけじゃん
九死に一生を得るところもな。
その辺もうちょっと工夫してくれたらなと思うんだけど王道を行きたかったんですかね…
作中作とか実在作家が取材した体の実録ものという体裁のフィクションとか、半ば反則、アイディアの勝利的な設定を使って引き込む割にはクライマックスが…
前作のカササギ殺人事件での作中作アティカス・ピュントのシリーズとこの作品の続編もあるらしくてそれは是非読みたいけど、もうあのクライマックスはいいやと正直思っております。
で、本来の謎に当たる「冒頭に登場する女性が葬儀屋に行った理由」については、棺はダンボールでいいと言ったあたりに自分に対する扱いの悪さと、葬儀でシルヴィア・プラスの詩を朗読してもらうって時点で自殺じゃないかと私もわかりました。 映画にもなったはず。
これこれ。参考文献がこちら。自殺したい人じゃないとシルヴィア・プラスを自分のお葬式で読んでもらおうと思わんよな、と私は思った。だから余計に他殺が不思議になるっちゃーなるけど。
こういう謎解きものの伏線を張るのって本当に難しい。匂わせて容疑者を増やすのはいいけど匂わせて違ったときの肩透かしを軽減しないといけないしな。
謎解きそのものより仕掛けや設定で読ませるお話でした。わりと満足。
次はなにを読もうかなー