夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

TENET(映画) 見たよ!!(ちょいネタバレあり)

 クリストファー・ノーランにしては短い150分

TENET テネット(字幕版)

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  • 発売日: 2020/12/16
  • メディア: Prime Video
 

 

 

Tenet (Original Motion Picture Soundtrack)

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 2周しなければわからないだろうって話だからよし、1周でわかってやれと思って見たんだけど、たしかに2周しなければわからないところもありながら、1周目の終わりにああなるほどそういうことだから2周めでわかるな、ってまとまり方をしていました。

劇場で見ろって助言がさまざまなところであったけれど、家でアイパッド(でかい)で見て何が嫌って、暗転する度に私の顔が映って集中が台無しになるところですかね。

エリザベス・デビッキが美しいから成立する映画であるけど、この方はリゾート地の洋上が似合うなあ…クリストファー・ノーランって、美しい人の美しい部分を最大限に魅せるのがうまいですよね。キリアン・マーフィーにメガネを掛けさせるとかね。

 

逆行シーンはそれがやりたくてこの設定を作ったんじゃないかと思うほど面白かったですが、ラストあたりの戦闘シーンはみんなマスクだらけで私的に漫然としちゃってもう集中できなくなっていました。エリザベス・デビッキケネス・ブラナーのシーンの方がスリルがあってこわかった。ケネス・ブラナー、特に鍛えてないおじさんのはずなのにCIAの凄腕たちと渡り合ってなおかつ(バックアップはあるものの)だいたい勝てるのでつえーわ…

 

ニール役を演じたロバート・パティンソンは苦手な俳優さんだったんだけどこの作品ではタイムトラベル系では視聴者をキュンとさせる立ち位置を演じていてそりゃあ好かれますわ。昔だったらどちらかが性別が違ってたかもしれないところを同性が演じて軽いブロマンスにしちゃったところが私も好印象でした。

 

さっそく2周めを見ているんですが、音楽堂のシーンでなるほど。

音楽がずっとかっこよかったですね。緊張感マシマシになるタイプで現実感もない。どんなときに聞きたくなるかは謎だから、買うとかプレイリストに入れるかはわかんないけどかっこいいなーって思ってました。車の運転中に聴いていたらキリッとなりそう?

 

仕掛けとか面白かったけれどインターステラーのほうが好きです。デンゼル・ワシントンの息子がこんな歳になるとは。なぜかデンゼル・ワシントンって同年代だと思いがちだけど私の親と同世代なんですよね。だから息子が同世代(嘘)

結局未来で主人公になにが起こるのかが「物語はこれからだ!」って感じで終わるのですが、そこがいいのかもしれないし、2周めに確認するときのニールのあれやこれやも注目に値するんだろうな。

やっぱり難しめのSFは良い…我が家に帰ってきた気がする。すべてを理解したわけではないけどこれについてしばらく考えられるから幸せです。

 

(翌日追記)インセプションとかインターステラーのほうが好きで、この作品に感じていた物語としての違和感ってなんやろと他の作品を見たり遊んだりしながらひっかかりについて探っていたのですが、主人公がCIAのエージェントなんだけど、エリザベス・デビッキへの肩入れがらしくないのよね。物語序盤から一般市民の犠牲が最小限で済むように手を尽くすような人だと描写されていたけど、CIAのエージェントってその辺もっとスマートじゃないの?って私のほうが冷徹なのよ。

インセプションインターステラーは物語の核に主人公の妻(マリオン・コティヤール美しかったなあ…ほんまクリストファー・ノーランとは美意識が合うわ)との関係性とか主人公の親子関係が絡んで物語を動かす原動力になる、多少常軌を逸していても家族のためなら仕方がないと思わせられるけど、この作品では物語の主語が大きく、主人公が頑張る原動力がわりと大義にちかくてそんなことのために頑張れるの?って冷徹な私は思ってしまう。

だからあくまでフィクションなんだなってそんなに入り込めなかったのかも。主人公が自分のことを「主人公」と言っちゃうから、そのくらいのヒーローなら世界のために動くのかもしれないけれども。だからこそ自称「主人公」にしちゃったのかもしれないけど。

インセプションインターステラーで主人公が抱えていたメランコリックなものによる行動原理が希薄だからアイデアが悪目立ちしてるような気がする。

SFってアイデアだけじゃ面白くない、アイデアを動かすための動機づけがちゃんとしてないと入り込めないと常々思うところがあって、SFだけじゃないですね、現代ものでもそうか。

インターステラーは動機づけで主人公を旅立たせるまでに1時間以上かかったけどあれをじっくりやったからさらに面白かったのだと思うのです。旅立ったときに時間を見て「1時間以上かかってる!」って大笑いしたものだったけど。

動機づけが足らないから「わけがわからん」ほうが勝つのが残念だったな…

あとケネス・ブラナーがあんなに強いのがいちばんわけがわからん(やっぱりそれ

「シンイー信義ー」視聴中

 商品を引用しようとしたら、色物たちの圧がすごい

武士の約束

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シンイ-信義- ブルーレイBOX3 [Blu-ray]

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挫折しそうにないけどな。たぶん最後まで見られそう。

アマプラでも見られるの…

私の韓国ドラマの師匠、キム・ジュモクさんがちょいちょい私の中に現れる。彼は偉大…

面白くないことはないんだけどイラッとしてる坂田さんであった…

「ロマンスは別冊付録」感想 ネタバレあり

 イ・ジョンソクさんが兵役を除隊されて早速お仕事をされているらしいのでワクワクしています。

ロマンスは別冊付録 OST (2CD) (tvN TVドラマ)

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  • 発売日: 2019/04/01
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いろんなお年頃のイ・ジョンソクさんを見てきましたが、こちらが兵役直前の最新作ってことで、一番大人のお話っぽい。意外な感触。ずっと母胎ソロでいてくれ…って思う傲慢なれーさんであった…

ツンつくしという言葉が我々の中で生まれました…

 

確かに「次回予告」という表示はないが、予告で見たものが先送りされる現象が多くてヤキモキさせられるんじゃあわしゃあ…

あー甘かった。久々に私の中でノブが「ぶちあまあ」って云ってましたわ。

序盤からの謎が漸く解けるのと雨降って地固まる感じかな

出来上がるカップル多すぎ問題は感じるものの、出版社が舞台なだけに私も好きな世界がそばにある感じで、紆余曲折はあるけど仕事も含め楽しめました。

子どもが海外留学しちゃってるから、ただただダニを子育てにキャリアを奪われたシンママだけど年下の美男と恋愛する余地はあるポジションに仕立て上げてるので、子どもってお邪魔かなあと気にはなった。ウノはいい子だから邪魔っけにはしないだろうけども。それにしても存在感が希薄だった。お金以外で子育てに苦労してないもん。子どもに時間を奪われるというのが遠回しに伝わってくる。友達のチーム長の遅刻癖も子どもが原因だったし。一応卒業したら帰ってくるって云っていたけど、子どもの影響がないと仕事と恋愛がスムーズなのはよくわかってしまった。

そのへんが引っかかるからか、ダニの恋よりヘリンがいい子で癒やされてました。あとどん底へ落とされてからの驚異のリカバリを決めるジユルとか。

ヘリンよかったなあ…たぶん製作者側もヘリンが好きで描写してたところがあったんじゃない。

序盤、ダニが大変な目に遭っていたのをウノが気づいてやれなくてショックを受けていたけどダニはダニでウノの抱えている問題に気づけなかったことなどは対等に描かれていたように感じます。仲良くても知らない面なんてたくさんあるものね。この辺もリアル。

 

やっぱりイ・ジョンソクさんが主役をするドラマに外れはないけど思った以上に甘々の甘々で、甘いのを見たかったらおすすめかしらん。ダニが結構仕事で傷つくけどプライベートで癒やされまくりだものな。

そう、自分を好きな彼氏(配偶者)は癒やし…と改めて噛みしめましたわ。

 

次はなに見ようかなあ…愛の不時着吹替も見ていきますが。

「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」(映画)

 TLですごく評判が良かったので楽しみにしていました。ネトフリで見られるようになってよかった!

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(字幕版)

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  • 発売日: 2020/11/21
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「リチャード・ジュエル」「トロン:レガシー」などの女優オリビア・ワイルドが長編監督デビューを果たし、女子高生2人組が高校最後の一夜に繰り広げる騒動を描いた青春コメディ。高校卒業を目前にしたエイミーと親友モリーは成績優秀な優等生であることを誇りに思っていたが、遊んでばかりいたはずの同級生もハイレベルな進路を歩むことを知り、自信を失ってしまう。勉強のために犠牲にしてきた時間を一気に取り戻すべく、卒業パーティへ繰り出すことを決意する2人だったが……。主演は俳優ジョナ・ヒルの妹としても知られる「レディ・バード」のビーニー・フェルドスタインと、「ショート・ターム」のケイトリン・デバー。「俺たち」シリーズのウィル・フェレルとアダム・マッケイが製作総指揮。

モリーレディ・バードシアーシャ・ローナンの親友役をやった子かあ。どうしてもそういう感じの役になりがちなのか。目立たない優等生というか、でもこの作品では主役で輝いていました。

遊ばずに頑張ったのにバカにしていた同級生たちもハイレベルの大学に入ると知ったときの表情がすごかった。それよりアメリカのハイスクールってどうしてこうも汚いんだろうって思ってしまう時点で私もどちらかと言うとそっちがわなんだろうな。

そんな彼女と親友が、本来なら鼻に引っ掛けないはずの卒業前夜のパーティに繰り出す気になるとそりゃあ痛々しい目に遭うんだろうなと思ったらいろいろ違う部分もあって、キーパーソンも魅力がある人達ばかりで、日頃バカにしていた同級生たちが一人ひとりそれなりに魅力があるとある程度わかるという、お互いを理解し合うことの良さが描かれていて非常に面白かった。

予想外の展開がいろいろ起こるんだけど、見ていて気持ちがいいことが多かったかな。

モリーもエイミーも勉強しか出来ない子じゃないのよね、頭が回るところも魅力として描かれるモリーがとてもよかったし、私は呼んでないのにしょっちゅう出てくるジジがお気に入りでした。個性あふれるメンツで、いかにアメリカといえどこんな個性が振り切れた子たちばっかやないやろーって思うところもあったけれども。

あと卒業シーズンに卒業生の親族は家を空けてはだめだというのは昔からその手の映画を見ると思う…

あー楽しかった。

私的に、エイミーの母が「フレンズ」のフィービーで、元気そうで良かったです。

21002 周浩暉「死亡通知書 暗黒者」感想 最後にネタバレあり

 面白かったんだけど…この作品がどういう経緯でどういうシリーズで出版されたか知らなかったからさ…

死亡通知書 暗黒者 (ハヤカワ・ミステリ)

死亡通知書 暗黒者 (ハヤカワ・ミステリ)

 

死すべき罪人の名をネットで募り、予告殺人を繰り返す劇場型シリアルキラー〈エウメニデス〉。挑戦状を受け取った刑事・羅飛は事件を食い止めようと奔走するが……果たして命を懸けたゲームの行方は? 本国でシリーズ累計120万部突破の華文ミステリ最高峰

刑事の羅飛は18年前の因縁から事件に巻き込まれて捜査に加わるのだけど、なかなか事件の捜査に入れてもらえないの。本来は管轄外の刑事だから。だから事件の捜査を行い、渦中でいろいろ行動をするのは別の刑事たち、その分羅飛はちょっと自由に動けるという利点があるの。

その辺面白いし、警察小説が大好きだから手に汗握る展開、主要登場人物がなにかしら隠し事をしている、誰が犯人か、なにが起こっているのかなかなか分かりづらい。もう出ているのか、出ていないのか、いろいろ。謎が謎を読んで、それを明かすタイミングが上手くてグイグイ引き込まれるんだけどまあそれでも疑問点はあって、登場人物の行動より作者の作為や物語のための展開なんだな、と思う部分も大きくあり。

終盤の羅飛の判断も、その判断に至らしめたある作為も、大元になった事件についても一通りちょっと軽いのが気にかかってしまった。

面白いんですけどね。

そしてラストの一文で私は目を剥くのですよ。

ネタバレにはならないとは思うけど、一応離しておくか。

 

 

 

 

「第一部 完」

 

 

な、なんだってえええええええええ!?

シリーズ物なのは知っていたけど!3部作ってそういうこと!?って。

 

 

以下、本当のネタバレ

 

 

 

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21001 キム・チョヨプ「わたしたちが光の速さで進めないなら」

初めて韓国の小説を読みます。しかもSF短編集。

わたしたちが光の速さで進めないなら
 

廃止予定の宇宙停留所には家族の住む星へ帰るため長年出航を待ち続ける老婆がいた……冷凍睡眠による別れを描き韓国科学文学賞佳作を受賞した表題作、同賞中短編大賞受賞の「館内紛失」など、疎外されるマイノリティに寄り添った女性視点の心温まるSF7篇!

「巡礼者たちはなぜ帰らない」

手紙文から始まる物語で、書き手の住んでいる世界がどんな状態なのかが徐々に明らかになっていくにつれてこりゃあすげえやと思うので、なーんの情報もなく手にとって読んでほしい。

短めの話の中に濃密なエピソードを想像の余地をたくさん残して書かれている。

これあとでネタバレもしよう。めちゃくちゃ好きです。泣いちゃった。

 

スペクトラム

宇宙での遭難とファーストコンタクトと交歓などを伝聞調に語られたお話。

翻訳者の言葉選びも美しくて感激してしまう。未知の生命体の描写が非常に好みでした。私は理解の及ばない未知の生命体が大好きなのであった…

交歓のなかに潜むものが素敵でね、「ガニメデの優しい巨人」とは全然お話は違うけど思い出してしまいました。また読もうかなあ。あの小説大好きなんだ。

しかし短い中に落とし込むのがうまいなあ…ケン・リュウばり。

こちらは映画化が決まっているそうです。アバターみたいになるのか、どう膨らませるのか気になるなあ

 

「共生仮説」

実際は行ったことがないはずのありえない場所の光景を描き、多くの人の心を揺さぶった絵画と画家の謎と人類の秘密に纏わるSFミステリ。ちょいハードSFもあるのか、私はハードSFをそうでないものとあまり区別がつかんけど。

幼年期の終り2001年宇宙の旅などを思い出させる。直接的な引用とかはないんだけど、あの作品で伝えたかった明示されないものにつながるような秘密が潜んでいるような。このへんの解釈は私の思い込みというか発想だけかもしれないけども。そんなモチーフと一人の画家の思いをリンクさせて叙情的に仕上げるので物語として心に残るの。うまい。

あと「スペクトラム」もそうだったんだけど、谷川俊太郎風味でもある。我々が宇宙生命体を求めてしまうのは寂しいからなのよね。そこに哲学的見地があるのも踏まえて展開されているので本当に読みどころがいっぱいある。短いのに。

 

「わたしたちが光の速さで進めないなら」

表題作。一人の女性に起こった悲劇をハードSFと物理学などを交えながらもその辺興味なくてもわかりやすく表現された切ないお話でした。

専門家だったらもうひとつまみツッコミが入りそうだけどな…たぶん理論上では?離れ離れになった相手はまだそこへ着いてないのでは。私は物理には詳しくないからよくわからんけど。

でも私が子どもの頃SFにハマった一つに、光速での宇宙旅行やワープ航法などの仕組みを活かした少女漫画があって(昔はこってこてのSFがふつーに少女マンガ誌に掲載されていたのです。竹宮恵子先生や萩尾望都先生、もうちょっとあとで清水玲子先生が有名ですがそれ以外でもとても上手なSFがありました)、その頃からその時間の歪みなどで生じる切なさについては気にかかっていたので懐かしさを感じました。「夏への扉」もその歪みが描かれているんだっけ。この作品にはまーったく絡んでないけれども。絡んで奇跡が起こってほしかった。

 

「感性の物性」

これまでの作品と違って日常系、「世にも奇妙な物語」っぽさもある。感情、感覚、想念の名前のついたアイテム(石ころのようなものからパッチのようなものまで)を持っているとその感情に突き動かされるという商品が発売されて社会現象を起こすが、主人公と危うい関係にある恋人が憂鬱になるアイテムを所有して、という流れだけれど、主人公が編集者だからかなぜそれを必要とするのかという思索が展開される。これまでの作品の、問題が発生するなり気づくなりの展開に様々な思いがあるというものだけじゃなくて人の形にならない想念が形になったものに対する向き合い方についても物語に出来るという作者の振り幅に感服。

ユウウツ体というアイテムを何故恋人が所有するのか、の答え、彼女の思いは自己憐憫と思えるのだけど、そういう気持ちでも大事にしたいものを否定はできないよなーと、主人公のやりきれない思いに寄り添いたくなりました。

 

「館内紛失」

「図書館」というものがいま我々の常識にあるものと違って、死者がデータ化されて再会できるいわばお墓のような場所になっている未来のお話。分かる人にしかわからないけれど、FF10の異界の人と会える場所みたいな感じ?ジーン・ウルフの「書架の探偵」よりは現実的というか。そこで妊婦になった主人公が初めて亡くなった母に会いに行ったら母が「紛失」検索閲覧不可能な状態になっていたという入り口から、複雑な母娘、父親や弟との苦々しい関係が浮き彫りになります。

私には鬱とは無縁だけどとんでもなく破天荒な母親(このブログによく出てきますが、幼少の娘にスプラッタームービーとか嬉々として見せるクレイジーな美女です)がいてずっと振り回され続けていたのでこのお話を語るにはそりゃあもう語り尽くせないほどの思いが溢れますが、死ぬ死ぬ言いながら全然死にそうにないうちの母が死んでしまったらどう向き合うのか(あいつ化けてそばに居座りそう)。そのへんがちらりと掠めながらも、この物語は妊娠による仕事の継続という、女性が仕事をする限りわりと直面しがちな問題にも触れていてそこにも考えさせられたり。

非常に重たい話でした。韓国の納骨堂は好きです。夏の暑いときの墓の掃除がいらない(笑)

韓国は子どもが生まれると人の呼び名が「○○のお父さん」「○○のお母さん」になりがちの習慣が人によっては重いだろうなあと改めて思いました。親友とかだったら嫌がりそう。私は母と私が名前がほとんど一緒で、周りが呼ぶのがどっちなのかわからないので困るということが日常的にあったのだけど(隣人が私に「れーちゃん、れーちゃんはいる?」と訊いてくる場面とか。娘に母がいるかどうか聞く場面で。わからないっしょー)、それで母が私を自分と同一視したり、理想を求めたりするのもあるようなないような複雑な部分がありました。期待に応えるつもりはなくても応えられるスペックがあったからそんなに自分では負担にはならなかったんですけどね。幸せな子どもですよ。

人によってかなり感情を揺さぶられるお話だと思います。それをSF面も充実させて物語にするからすげえなあ…と、物語のシステム面に惚れ惚れしました。そのうちこういう技術が開発されそう。そうしたら母に会いたいか?おじいちゃんには会いたいなあ。

 

「わたしのスペースヒーローについて」

このままの体で遠くの宇宙に行けないなら改造すればいいじゃないって発想をもとに、人体をサイボーグ化して宇宙の果てへ送る技術が花開き、その元祖として犠牲になった人に憧れて宇宙飛行士になったが、元祖となった人には大声で言えない秘密と事実があった…

という出だしから、その憧れの人について向き合い、自分の道を見つけ出すのだけど爽やかな語り口。ミステリであり、謎を解くにしてもすべてが憶測なのだけどこうであったらいいよね、って感覚だからかな。

テラフォーミングは星を地球に人間に似せて環境を改造するのですが、こちらで語られているのは逆のプロセス。もしかしたら、可能であれば、火星に住むために人体の方を改造する方向も考えられているかもなー、あんまり具体的な話があるって聞かないけど。地球も温暖化していくなら暑さに耐えられる改造が施されたりしてな。

キャプテン・アメリカが貧弱な体からすんごいマッチョになるような感じで、憧れのスペースヒーローはそのへんの優秀なオバサンがサイボーグ化するその切り口が面白かったけれど、のちのちつきまとうスキャンダル、誹謗中傷、まったく無縁の第三者からの指弾がね、いまのネットでの中傷と重なる部分がかなり多くて、そのことについても揶揄したかったのかな。

不倫報道でも渡辺謙は雑でなかったことみたいになって、渡部建は謝罪会見をしてもめちゃめちゃ責められ、復帰できる様子がない。家族や周りのスタッフ以外にはなーんの得も損もないことなのに、叩ける相手は叩きたい。でもなぜか渡辺謙は叩けない。私はどっちもどうでもいいし、役者としては渡辺謙さんは好きだし、芸人としての渡部建にはなんの魅力も感じません。そんな現象がこの作品でも語られていました。救い?は時間が経っていて、受け取る当事者がそんなに傷ついていない、適当に受け流していることかな。相手にしたら負けやと思う。本当にくだらないことだもの。

 

物語の終わり方も爽やかというか、派手な感動はないけれどすとんと落ちるようないい終わり方で私は好きです。短編集の締めくくりとしても上質な物語でした。

 

総括

すごい。

私がこのお話を新年初めに読むことに決めたのは、一つ前のブログにも触れてますが、1年前に最初に読んだのがペストもので、そのあとの世界中の大騒ぎを意味なく暗示しているような感じがして不気味に思ったから、なんだかハッピーになれるものをと探しても見つからず、というところで、今後1年をなにかしらいいものにしたくて、最近興味津津でハマっている韓国という国の、翻訳出版されるのが珍しいSF小説にしたのです。すごく好きな国と文化になると思うから、コンゴトモヨロシク…という気持ちを込めて。書いたのが若い女性であるというのを帯や作者紹介で押し出していますが、私自身もSFいうても叙情的というか情感に訴えるファンタジー色のほうが強めなのかなあとか、失礼な、根底に潜む偏見じみたものを誘発されてそんな自分をいまは恥じる。

だから書いたのが若い女性であるということをなるべく無視して読んだのですが、もう、すごいSFでした。もうさ、作者に関する余計な情報いらんわ早川書房編集部さんよー。もともと作者近影とかが邪魔だと思いがちだからな。あってよかったかもと思ったのはイアン・マキューアンだけやで(枯れた美男)

 

情感に訴えかける物語性ではあったけれど、ちゃんとSFの世界のシステムから生じるもので、そこにSF要素いらんかったやろ、ってツッコミがはいる部分がなかった。そして日々じわりと肌で感じたり苦しく思うことをあからさまでなくどこかしらに潜ませて思い至らせる巧みさがある。

お年始からすごいものを読んでしまったと感激しております。ここまでとは。

韓国の文化や人の生活様式をちょっと知っている方がより面白いかも。血がつながってなくても「姉さん(オンニ、ヌナ、だっけ)」とか「兄貴(ヒョン)」とか「おばさん(アジェンマ)」「おじさん(アジョシ)」と親しむつながりとか。韓国のドラマを集中的に見ておいてよかった。

 

一番好きなのは「巡礼者たちはなぜ帰らない」ですが、私自身がちょっと救われた気持ちになったのよね。だからあくまで個人的な気持ち。個人的じゃなくてSF好きの観点からいくと「共生仮説」と「わたしのスペースヒーローについて」が面白かったかな。

素晴らしかったので、この作家さんにはもっと創作にとりくんでほしいです。誰か英訳しないかな。大きな賞を狙ってほしい。

よかったです。早くも今年ベストかもよ。

以下、「巡礼者たちはなぜ帰らない」のみネタバレの感想を載せておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「クイーンズ・ギャンビット」(Netflix ドラマ)ネタバレ 感想

 先日親友と「モッキンバード」という小説について話をしたときに、ウォルター・テヴィスかべつの作者の作品かというやりとりをしました。親友が挙げたのはテヴィスじゃないほうでした。私はテヴィスの方をたぶん持ってるんじゃないかしらん。

The Queen's Gambit: Now a Major Netflix Drama

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  • 作者:Tevis, Walter
  • 発売日: 2020/10/29
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 この手元の「駒」が物語を表していますね。

母親の無理心中未遂により孤児になったベスは養護院で雑用係からチェスを習い、引取先で養母と連携を取りチェスの天才として名声を恣にしていくというのが前半。

その表層的な展開とは別に、養護院でおとなしくさせるために子どものうちから精神安定剤を与えられ、その薬によって齎されたチェスボードの幻影でプレイすることに快感を憶えていき、ドラッグとアルコールも学生のうちから知っていくことに。途中で旅先で養母を失い、「母親の死」を二度まだ成人しないうちに体験することも人生に大きな影響を与えたのかな。

それでも薬やアルコールに溺れると言うより研ぎ澄まされていくようだった。でも何度も忠告をされる(自分が体を壊している自覚がない養母以外)

天才は放っておけないのかいい支援が受けられる環境を不安定ながら持たれるのが面白いけれど、ちょいちょい亡くなった実母の人間不信、男性不信のような呪いの言葉を思い出すのが特徴的。孤独な人がなにかを庇護する(ここでは孤独な母と娘)と、日々の思いや思い込みや、悪くなると呪いをじわじわと吹き込んでいくのよね。私もおぼえがある。

 

孤高の天才の話かと思ったら、終盤は熱血スポ根的な印象も受けました。元カレや負かしてきた男たちが激励するシーンが面白いくらい胸熱。

男性社会のチェスプレイヤーの世界に美しい衣装とバリバリのメイク、とんでもない眼力で挑むのだけど、ジェンダーとかセクハラ的な要素はチェスプレイヤーの上へ行けば行くほどあまり気にしてない、スポーツマンシップというか、同好の士というか、彼らはたぶんただただ「つええやつとたたかいてえ」って気持ちでいるんじゃないかしら。負けてショックの人もいれば、嬉しそうにしている人さまざまいて私はひげもじゃのソ連人の負け方が好きでした。

 

養護院時代の仲間の人がいいアフロだったなあ…

 

ワッツ役の人が子役から知っていてあのまま成長しているのでびっくり。お髭が生えてるだけで顔は変わってない。

ラブ・アクチュアリー [DVD]

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 こちらですごく可愛かった。マライア・キャリーを唄うクールな女の子が好きな子。

 

このブログでもたまに触れているのですが、私はチェスが取り上げられた物語が大好きなんですよ。駒の動きはざっくりしか知らない、将棋は知っていて詰将棋はやってますけど。将棋と違って持ち駒として再び盤面には出せないのよね。

作中でも引用されたチェスの駒が宇宙だとかどうとかもいままで読んだ小説で知っていてチェスがモチーフの作品だったらわりと取り上げられがち。それもあるからか、チェスボードが眠っているときの天井に浮かぶというこの作品でのシーンは宇宙を見ているようにも感じられました。

チェス用語も大好きで特に好きなのはツーツクワンクですね。動きたくないのに動かされてしまうという比喩にも使われるやつ。

 

チェスの駒の美しさや私には理解の及ばないテクニックで戦う様子を見るのが大好きなのです。将棋も対局は苦手なのよね。カードバトルと同じで、自分の手駒とか手札にしか集中できず、相手の出方に興味を持たないからそりゃあ負ける。向いてない。(人を操るのは割と好きで得意だし、行動も読めるのになあ…)でも詰将棋はパズルだから大好き。チェスプロブレムにも挑戦したいと思いながらも、駒の動きや特色がいまいちピンとこないからまだ無理。

 

作中でチェスの勉強をする姿が沢山でてくるのだけど、そうしている人を見るのが好きだからそれだけでも見てよかった。人が勉強したり、本を読んでいるのを見るのが好きという変な性癖があるんですよ。

 

チェスプレイヤーといえばソ連人(ロシア人)、天才、孤独、というイメージが付きまとうけれど今作でもソ連がバリバリでてきてそこも好きです。チェスプレイヤーは外国人でもアイドル扱いというのは全然大げさな描写じゃないと思う。

ボビー・フィッシャーの本を持っているので読みたくなっちゃった。

 

チェスもので好きなものを3作挙げておこう

ボビー・フィッシャーを探して [DVD]

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 大好きなローレンス・フィッシュバーンがいい役で出ます。

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

 

 すごく美しい小説です。

 

 学生の頃に何回も読んだ歴史SF…かな!?歴史ミステリよりもSFかな?私の好みがふんだんに取り込まれています。

 

それにしても、クイーンズ・ギャンビットが日本でもヒットしたらたぶん原作が翻訳されるのでもっと盛り上がってほしいな。読みたいです。