夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

23028 アンソニー・ホロヴィッツ「ナイフをひねれば」 感想(作品紹介) ネタバレなし

今回は犯人を当てたぞーーーーーー!ただしトリックは全然わからんかったけど!!

「われわれの契約は、これで終わりだ」彼が主人公のミステリを書くことに耐えかねて、わたし、作家のアンソニーホロヴィッツは探偵ダニエル・ホーソーンにこう告げた。翌週、ロンドンの劇場でわたしの戯曲『マインドゲーム』の公演が始まる。初日の夜、劇評家の酷評を目にして落胆するわたし。翌朝、その劇評家の死体が発見された。凶器はなんとわたしの短剣。かくして逮捕されたわたしにはわかっていた。自分を救ってくれるのは、あの男だけだと。〈ホーソーンホロヴィッツ〉シリーズの新たな傑作!

 

作者自身や一部のカメオ出演的な人物が実在している体で描かれるフーダニット、ハウダニットのシリーズ4作め。全作年末のミステリランキング上位の常連ですが、今回もランキングが楽しみになる内容でした。

 

最近わたくしはBLを読みすぎているからかしらん、冒頭でアンソニーホーソーンに決別を告げているのがもう、片思いとか拗れた腐れ縁にケリを付けたがる主人公に見えて可笑しかったな…ホーソーンの様子に後ろ髪を引かれながら決別をするアンソニー。おいしゅうございました。

そこに恋愛感情はないにしても内容的にそんなもんだったからな。

 

今回のお話のあらすじを知ったのはお年始の東京創元社さんのイベントか、去年のこのミスでの情報だったか。今度はトニーが逮捕されるぞ!ってことでそれだけで笑っちゃったんですよ。

このシリーズってとにかく筆者=主人公トニーが間抜けに描かれがちで、ホーソーンを差し置いての行動が調査の足を引っ張ったり、核心をついてると自信たっぷりの推理がものすごくズレていたりと、読者の私が3巻読んだ時点でかなり信用しなくなっている。ただ色んな面でしょっちゅうひどい目に遭っちゃう語り手、ってイメージなので、いままでの中でもなかなか悲惨な窮地に陥ってるな!と期待してました。

 

事件の調査は小説として読ませる内容でとても丁寧。登場人物全員容疑者の説得力がある、調査に時限があり、追い詰める刑事は因縁があっていやーーーーーなやつなのは過去作で知ってるし。スリル増し増し、でもシリーズ全作読んでいたらスリルは若干薄まるんだけど。→薄まる理由は脚注にて*1

 

フーダニットには興味がないはずが、このシリーズだけは確かに一緒に犯人探しが出来てそれが楽しめるので私は続きを読むのが楽しみで、今回もあっという間に読んじゃいました。

前回のが箸休め的な旅行で保留されていたけど今回はシリーズの核心であるホーソーンの秘密も改めて思い出さされ。それも読者に提示するのがうまいんですよね。

 

この巻から読んでも大丈夫か、って実は大丈夫なんですよ。その辺語り手のトニーが前作までのネタバレを回避しながらホーソーンとの関係や周辺の人間関係をさり気なく紹介してるし、事件そのものはシリーズと関係ないし。

この巻が面白かったら「メインテーマは殺人」を読む、でも良いんじゃないでしょうか。

 

いままで読んでこの巻が一番好きかも。3巻「殺しへのライン」を読んだときはそれが一番だったような気がするから毎回更新してるような。でも「メインテーマは殺人」のリーダビリティの高さも捨てがたい。「その裁きは死」は私はフーダニットに無頓着なのに物語の大体を覚えていられているのでやっぱり面白かったんでしょう。

 

年中行事になりつつあるアンソニーホロヴィッツの新刊ですが、今年も楽しかったです。トニーのすっとこどっこいぶりが可愛いったらないね。

 

次はトリックも当てられるようになりたいです。ハウダニットな!

 

 

*1:だってホーソーンって信頼感あるから