夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

22011 ジャナ・デリオン「ミスコン女王が殺された」 感想

ワニ町シリーズ第2作。前巻が面白かったのでアグレッシブに2作目も読みました。

軽く読めるし美味しそうな料理はよく出てくるし、主人公と仲間たちの軽妙で動きの想像つくやりとりが楽しくてずっといい雰囲気。気の利いたイケオジが出てくるのも良い感じです。

シンフルの町に着くなり巻きこまれた騒動にケリをつけ、当初の計画どおり静かに暮らそうとしたCIA秘密工作員フォーチュンの決意を、一本の電話が打ち砕く。ハリウッドに行った元ミスコン女王パンジーが帰ってきたのだ。折しも夏祭りのメインイベントが子どもミスコンに決まり、元ミスコン女王という経歴に偽装しているフォーチュンは、パンジーと共同で運営を任されるが、大衝突をしてしまう。その翌日パンジーが殺されたことを知ったフォーチュンと地元婦人会コンビは、疑いを晴らすため動きだす……暴走が止まらない、痛快度大増量の第2弾!

事件は前作の直後なので季節感や環境はほとんど変わらないので1作めを読んで記憶がある状態で読んだほうが楽しいです。

コメディタッチで凄腕のエージェントのフォーチュンが制御ほぼ不可能な凄腕の老婆たちと懇意になり、予測不可能なとんでもない事態を打開するためにあれやこれや行うのだけど、起こるトラブルが「ここでこういうトラブルが起こってほしくないな」とひっそり思ったらそれをちょっと上回るトラブルが起こるので面白い。実際ゲラゲラ笑うところがあったり。

 

殺されたパンジーが本当にこんな奴いるのかなと引くほどのビッチで、そんな彼女でも殺されると上辺だけでも同情されて容疑者にされた新参者のフォーチュンは理不尽な嫌がらせを受けるのはこういうのは洋の東西を問わずどこでもありそうで痛ましい。それでも全幅の信頼を寄せられる(不安もあるけど)仲間がいるというのはいいものだなと読んでいて羨ましくなりました。

フォーチュンには抱えている闇があるし、仲間たちも深堀りすると悲しい事実があるかもしれないけど、そのへんはまだうっすら匂わせる程度。

 

私が常々思っている「なんで真犯人はべらべら自分の犯罪を告白したがるのか」がこちらでも。クライマックスとカタルシスが一気に昇華するからかな…

でもそのとおりで、一気にスッキリして終わり方も良かったです。フォーチュンの意外な気遣いはシーリアが娘を失った母親で、フォーチュンが母親を失った娘だからかもね。

 

それにしても殺人事件が起こったにも関わらず主要登場人物が「一般人」だから死因をなかなか掴めないでなぜ殺されたかは憶測が当たり、周りの人たちの協力や情報のやりとりによって事実が浮かび上がってくるというのが、田舎のコミュニティも含めて身の丈に合っていて、探偵役がやたらすぐに死因や手がかりを掴めるというご都合主義がないのはいいですね。主人公一人では絶対解決できなかった。

 

続きもかなり面白そうなので近々読むと思います。翻訳者様と出版社に感謝。

 

 

3作目

日本では最新作の4作目。全部既に買ってます。