夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

22002 ジャナ・デリオン「ワニの町へ来たスパイ」 ネタバレ感想

これは気持ちがいい。こういうのを読みたかったのです。

超凄腕CIA秘密工作員のわたしは、潜入任務でちょっぴり派手に暴れたせいで、狙われる身となり一時潜伏を命じられる。ルイジアナの田舎町シンフルで、“元ミスコン女王の司書で趣味は編みもの”という、自分とは正反対の女性になりすましつつ静かに暮らすつもりが、到着するなり保安官助手に目をつけられ、住む家の裏の川で人骨を発見してしまう。そのうえ町を仕切る老婦人たちに焚きつけられ、ともに人骨事件の真相を追うことに……。人口三百に満たない町でいったい何が起きている? アメリカ本国で大人気、型破りなミステリ・シリーズ第一弾。

巻を重ねるごとに人気が増す感じがするこの作品の1作めを実は発売当時に買っていたのだけど、読んだのは今日という…

どちらかというと映画に向いた設定で主人公はシャーリーズ・セロンがいい、ちょっと年齢が合わないけどと思いながら読んでいました。昔だったらシュワルツェネッガーが主役で男性版で映画になっていたかも。ロック様でもいいか。もしくはわしらのスティーヴン・セガール。もしくはデンゼル・ワシントン

 

私は本を読むときに重箱の隅をつつくようにご都合主義とか作者が物語のために動かした展開とかを見つけてはツッコミを入れていましたが、こちらの作品では1箇所以外は無理がないというか、もともと無茶苦茶な展開だからおかしくも感じない、ルイジアナの小さな町に潜入するはめになったCIA工作員が数年前の殺人事件の謎を解明するという展開の中で、特異なルイジアナの湿地だらけの街、住人みんな幼馴染みたいなところがあって情報が筒抜け、なんか変なコミュニティと言うかシンジケートが蔓延ることが描写されることで地域的に異様だから異様な人が潜り込んでもそんなに変なことにならないのが妙にしっくりする。

 

容疑者と思われた被虐待女性のマリーの潜伏場所以外は本当に変に感じませんでした。

マリーの潜伏場所に関しては、気づけよ!!!凄腕ならさあ!!って思ったし私はここに隠れているんだろうなって分かっちゃってた。慣れない家とはいえ、風呂とかをいない間に使われて気づかないとか脇が甘い。

いつもと違うスイッチが入っていたとはいえ。

 

そこだけが首を傾げるけど、年末に読んだ本以来よく行き当たるとんでもねースペックがある高齢者たちの老人力コミュ力は現実でもおかしくはないし(特にアメリカは)よく出てくるカロリーの高そうな食べ物がいちいち美味しそうなことに気持ちが持っていかれて面白く読めました。私は高齢者不信だけど、人としての温かみのある老獪さは嫌いじゃない。

オールドミスのコミュニティの決まりで、未亡人の加入レギュレーションの「未亡人は夫の死後10年以降」という決まりの理由が「夫の洗脳が解けるから」というのが妙に納得。

 

終盤の展開も、まあCIA工作員が主役ならそうなりますわねって読める展開ながら描写がうまくて気持ちよさすらありました。若い人が演じるなら誰がいいかな…

 

しかしCIA工作員が潜入しているのは夏の間だけという縛りがありますが、これシリーズでいま日本で4作出ているのにどうしたらそこまで延ばせるんだろ??

不思議だけど追い追いシリーズを追っていきます。楽しかったなあ。マッシュポテトのグレイビーソースがけを食べてみたいと前から思っていたんだけど。南部の料理って美味しそうなんですよね。

そしてアメリカの土地の特異性って想像を超えてます。ワニがどこに居るかわからない湿地やバイユーと呼ばれる小川が家のすぐ裏にあって犬がここほれワンワンすると人骨が出てくる。バイユーに関しては全然説明がないので(その説明のなさ、富野由悠季監督作品かよと思うほど)調べました。個人的には住みたいとまったく思わない環境ですよ。

災害も半端ないものなーと思っていたらカトリーナの話とかも出てきました。

でも彼女のスペックをしてルイジアナの湿地帯という特異な地域では2ブロック先の知人を訪ねるのがわりと一番の危険な冒険だったのが面白かったな。クライマックスより大変そうだった。あの展開面白くて笑いながら読んでしまいました。た

 

今後もCIA工作員のフォーチュンはこの町にしばらく潜伏するようですが、彼女はとんでもなく強い仲間を得てこれからどんな活躍をするのかしら。

いま読みたい本(国産本2作)をとっとと片付けて続きも購入しようと思います。