郵便配達出てこねえ…(そこは有名なネタらしい)
街道沿いのレストランで働き始めた俺は、ギリシャ人店主の美しい妻コーラに心を奪われてしまった。やがていい仲になった彼女と共謀して店主殺害を計画するが……。一人称の語りの迫力、その裏に秘められた繊細さや社会性が注目され、近年「ノワール」の傑作として注目される20世紀アメリカ犯罪小説の金字塔!
ぼちぼち取り組んでいる「ガーディアン紙必読1000冊」のうちの1冊です。光文社古典新訳文庫のフォントの大きさをしても200ページ弱だし話の内容も面白そうとお手軽な気持ちで開いて実際3時間くらいで読めました。
ガーディアン1000の本はなるべくメモを取りながら読んでいるのですが、まず「ギリシャ人可哀想」って書いちゃう。
そのくらい、妻の不倫の果てに自己中で道徳的なものが抜け落ちてるバカップルの犠牲になるギリシャ人がとても良い人のように描かれています。本当、気が良いホワイト上司なんですよね。妻相手にはその時代ではわりと当たり前な感じで強気ですが、別に暴力振るったりひどいモラハラするわけでもない。ただ脂性なだけでは。
殺すまですったもんだあり、殺したあともすったもんだあるんですけど、印象に残ったのが頭がいいのか悪いのかわからないコーラがいきなりのポエマーになるところですね。殺害シーンの描写も頭の中にありありと浮かぶようなすばらしいものでしたが、コーラの危うさが痺れる。
口から吐き出すセリフがあまりにも詩的でした。
すごく愚かな女性のようでしたたかなのか、したたかなようで弱い部分もかなりある自己中女なのか。
最後までなにが起こるかわからないところがあり、テンポよくお話が進んでいくのですが、1934年に上梓されたとは思えないほどきつい殺害シーンと、一応抑制を利かせているのかもしれないけどオブラートに包まない性描写、息が詰まるような心理描写にこっちのアドレナリンがドバドバでした。
はー、こんなにおもしろいとは!
主人公はかなりのくそったれなんですが、最後の数ページは揺さぶられたのでこれをジャック・ニコルソンがどう演じたのか気になりました。見たことない。うちの母は見てるらしい。
あっという間に読める割にかなりのスリルとサスペンスを味わえました。ギリシャ人の可愛さと可哀想なところをもっと語りたいかも…