夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

エドガー・アラン・ポー 「黒猫/モルグ街の殺人」 (読書中)(光文社古典新訳文庫)

 邱永漢先生の本を読んでいたらもっとお金に賢くなるかなと思って先日半額ポイントバックだったのを購入して読んでいたんですよ

 冒頭は邱永漢先生が育った時代とかを踏まえて今までの人生を振り返っていたような内容で、先日その続きを読もうと手が空いたときにスマホKindleを開いたんですよ。Kindleってほら、読みかけから続くじゃないですか。

そうすると、語り手がどういうように育てられ、どういう環境であったかが語られていて大変動物好きで子供の教育のために親も惜しげなく与え、若くして結婚したが妻も大変な動物好きで猿まで飼っていたが何よりも賢かったのは黒猫であったと。

ふむふむ、邱永漢先生は動物好きだったんだなと思っていて読んでいたらだんだん雲行きが怪しくなって、徐々に酒に溺れるようになった語り手が妻や動物に罵詈雑言や暴力を振るうようになり、黒猫にとんでもないことをしてしまう…というところまで読んで

 

え??邱永漢先生超やべーじゃん、こんな人がお金の神様でいいの??

 

と、ゾッとしてタイトルを確認したら私がその日開いたテキストのタイトルはこれでした。

 後でチェックしたら、邱永漢先生の本を読んでいたのはiPadで、こちらはスマホで蔵書を確認していて開いていたみたいなんですよね。

 

邱永漢先生がこんな奴だったらAmazonのレビューで炎上するわ。ちゃんと尊敬されてるじゃん、一瞬たりとも疑った自分を恥じるわ。

 

しかし読んだ行きがかり上、内容が非常に不愉快でもオチまで読むか…ということで、「黒猫」を読みました。

暖炉に押し込められた令嬢、身体を切り裂かれた老婦人……誰が、いかにして殺したのか? 推理小説が一般的になる半世紀も前に、不可能犯罪に挑戦する世界最初の探偵・デュパンを世に出した「モルグ街の殺人」。160年の時を経て、いまなお色褪せない映像的恐怖を描き出した「黒猫」など、代表的8篇。多才を謳われながら不遇のうちにその生涯を閉じた、ポーの魅力を堪能できる短編集。

 

「黒猫」

前述の通り、酒で異常なまでの残酷な面がむき出しになった語り手は、己の安いプライドを満たすために黒猫プルートーを惨殺してしまい、それに対する罪の苦しみをごまかしながら過ごし、もともとは資産家の生まれだったのがだんだん持ち崩すようになってくる中で、超場末の酒場で黒猫を拾うのときっかけに取り返しのつかない事態になるのですが。

 

動物好きは読まないほうがいいですね。それだけの報いは受けるけれど、描写はされなかった他の動物も心配だし、黒猫が可哀想。私も黒猫を飼ってるから黒猫に冥界の王の名前をつける時点でなんで不穏な扱いをするのかも疑問だし、何もしてないのに不幸な目に遭い、その復讐をする(ように感じる描写)のが黒猫なのかも嫌なので、ポーが黒猫をそういう扱いをするのもイヤッ。

 

己のプライドを満たすために動物を惨殺するようなくだらない男は、その罪の意識を埋めるためにまた猫を求めようとするのですが、もう、おめーは動物を飼うな!と創作物相手にキレッキレになるのですよ。でもね、動物虐待をする人に限って今度は幸せにするとか言い聞かせて動物を求めるし、DVをするやつに限って家族を求めるんですよ。ばかじゃねーの、向いてないんだよ、思い知れということで、男は多くの犠牲のあとで報いをうけます。

 

いやーかなり胸糞が悪い作品でした。

が、最初は邱永漢先生の生き方の本を読んでいたので、なんというか、「麦茶だと思った状態でコーヒーを飲んだらどっちでもない変な味」になるように、自分がこれを読むんだと思って読むのとはまた違った味を感じました。いい話を読むつもりだったのがとんでもない胸糞物語だったときの気持ちってこんなの。

こういうのって紙の本ではなかなかできないことですね。紙カバーを隠して売る本とかたまにあるけど、結局は知った状態で読んじゃうだろうし。

 

逆に動物虐待をするお馬鹿に読んでもらいたいですね。

 

他のお話も不穏なので、今度は覚悟して続きの作品を読もうと思います。