ネトフリ映画「ほの蒼き瞳」の原作です。日本語訳出版後けっこう経ってからの映画化で私が戸惑いました。いつか読もうと思いながら上巻しか持っていなかったので。
東京創元社さんの出版する海外小説はタイトルがとんでもなく改変されることが目立つ気がするんですが、こちらも例にもれず、本来は「ほの蒼き瞳」のほうがより原題に近いです。でもこっちにしないとミステリとして手に取りにくかっただろうな。
引退した名警官ガス・ランダーは、ウエストポイント陸軍士官学校のセアー校長に呼び出され、内密に処理したい事件の捜査を依頼される。同校の士官候補生の首吊り死体から、何者かが心臓をくり抜き持ち去ったというのだ。捜査の過程でランダーは、ひとりの年若い協力者を得る。士官候補生一年の彼は青白い顔の夢想家で、名をエドガー・アラン・ポオといった――青年時代の文豪ポオを探偵役に迎えた、詩情豊かな傑作謎解きミステリ。
ガス・ランダー役をクリスチャン・ベイルが演じているのですが、年齢的にピッタリ。
ポオも名前は見たことがある俳優さんが演じているのですが、まだ作品を見ていないだけになぜか私の頭の中ではティモシー・シャラメのイメージで動いていました。似合いそうだものな、コスプレが。
それはどうあれ、作中の死体の特徴がどう見てもオカルトだな、悪魔崇拝かなと思ったらそこにたどり着くのが結構大変で、登場人物ほぼ全員がピンときていないのに驚いたり、士官候補生のポオを捜査に入れるための「手続き」の段取りのほうに重みを感じたりと、ポオの存在ありきで進んでいるのがいいのか良くないのかが微妙に測りかねる感じでした。
私でもわかるよ、心臓だけ抜かれるというとオカルトくさいって。
そこにたどり着くまでに出てきた神秘学の大家らしい人のキャラクターは良かったけどあれだけしか出ないなら残念。
話の内容はガス・ランダーの手記や手紙、ポオからの報告書などで展開されるのだけど、未来の怪奇ミステリの原点と言われる作家であり詩人のポオによる報告書は策士策に溺れるって感じでごてごてした文章で、ここ大事なのかなー?と思いつつ、本来ならそこも楽しむべきなんだろうなとも思いましたが、めんどくせーよポオ…!ってなりながら読む始末。
物語はポオの詩で有名なアナベル・リィを匂わせる女性の謎めいた存在が彼に及ぼした影響をポオ自身の興奮した文体で語られて上巻を終了しましたが、どうなるんでしょうねえ。
アナベル・リィを知っていてよかった。ポオの作品はそんなに読んでなくて黒猫以外はあらすじを知っているくらいなんですが、詩のほうは学生の頃から読んでいて大鴉は原文もデータで持っています。アナベル・リィも原文で読んだかな。
でも私は海外の詩は上田敏が訳さないとピンとこないのでいいのか悪いのかわかんなかったのですが。
ポオが好きならもっと楽しいんだろうな。
それよりガスが以前飼っていた犬が私が飼っていた犬と同じなのでキュンとしたり、書いた日付を見てガスの運命に不安を覚えたり。
やっぱり主役が気になるのでした。