先に解説を読んでは絶対に絶対にいけません。
1930年、ロンドン。名探偵レイチェル・サヴァナクには、黒い噂がつきまとっていた。彼女は、自分が突きとめた殺人者を死に追いやっている――。レイチェルの秘密を暴こうとする新聞記者ジェイコブは、密室での奇妙な自殺や、ショー上演中の焼死といった不可解な事件に巻き込まれる。一連の事件の真犯人はレイチェルなのか?真実は全て“処刑台広場”に。英国推理小説界の巨匠による極上の謎解きミステリ
謎解きかなあ…?謎解きか。
物語の大きめな謎は私はわりと早い段階で気づきました。
別の出版社さんで人気でランキングに上がりがちの某女流ミステリ作家慣れしていると妙に疑ってかかりがちですね。*1
アマゾンのレビューであまり評価が芳しくないので大丈夫かなあと思ったのですが、浦沢直樹先生の作風を思わせる匂わせや章の終わりの衝撃的で謎を産むセリフなどで読みての興味をグイグイひっぱり、主人公レイチェル・サヴァナクが万能感があって謎めいているだけになにも信用できないまま読めて私は楽しめました。
レイチェル・サヴァナクがかっこいいんですよね。彼女に振り回されるもう一つの視点である新聞記者のジェイコブのキャラクター造形もいい感じ。
時代は1930年が舞台ですが、どこかしら現代っぽさも匂わせていて時代的にはバカにされがちな女性がその役回りを求められながらも強いです。あの頃にあったかどうかわかんない「多様性」という言葉が出てくる。
ちょうど1930年代に作られた映画を見ながら読んだのでこういう時代背景かと自分で補足出来たのもよかったかも。第二次大戦終わるまでくらいのイギリスが舞台の本はよく読んでいるのでなんの注釈もいらなかったのですが、注釈のない地名がわりと多く出てきて知らないで読む人には不親切かな、と思ったのでここで書いておこう。
オールドベイリー:裁判所があります
フリート街:イギリスの新聞街。新聞の会社がいっぱいあるらしい。
オールドベイリーは18世紀が舞台の本でもよく出てくるので、サラ・ウォーターズの本とか読んでいたら馴染みがあるかも。
ちゃんと注釈があったけどホワイト・チャペルも知っておいて損はないですよね。
あの時代の機関車の利用がどのくらい行き届いていたかとかわりとちゃんと取材された上で書かれているような気がしました。知らんけど。
そういうその時代の人達の営みを感じながらも、非常に殺伐とした物語が展開していくのをある意味楽しめます。ある意味。
私はこの小説、新刊で読めてよかったなあと思ったんですけどね。好感触です。
↓脚注に微ネタバレ
解説自体はネタバレじゃないけど、*3