夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

21022 ホリー・ジャクソン「自由研究には向かない殺人」ふわふわネタバレ感想(読んだ人にしかわからないやつ)

今年は東京創元社さんが強いなー!まだ「ヨルガオ殺人事件」は読んでないけど。

高校生のピップは自由研究で、5年前に自分の住む町で起きた17歳の少女の失踪事件を調べている。交際相手の少年が彼女を殺害し、自殺したとされていた。その少年と親しかったピップは、彼が犯人だとは信じられず、無実を証明するために、自由研究を口実に警察や新聞記者、関係者たちにインタビューをはじめる。ところが、身近な人物が次々と容疑者として浮かんできてしまい……。予想外の事実にもひるまず、事件の謎を追うピップがたどりついた驚愕の真相とは。ひたむきな主人公の姿が胸を打つ、英米で大ベストセラーとなった謎解きミステリ!

途中までアメリカが舞台だと思っていて向こうのティーンエイジャーはすげえなあと思いつつ、知っている試験の制度と違うしケンブリッジとオックスフォードが志望大学として出てくるのでイギリスか!と気づいたのでした。

試験の制度はアメリカと似ているところもあるけれど、ちょっと違う。日本とは全然違う。本当は英米のほうが学生の「考える力」を伸ばすにはいいんだろうなとは前から思っていたり。

 

自由研究の題材としてはきな臭いが、高校生のピップが自分の信じるものに従って行動していく様は気持ちよくて確かに数年前、まだ子どもだった時分に行きあった事件が不可解なら追求したいだろうと思うし、なんの権力も頼れないとなると自由研究の一環としてインタビューと調査という形で接触するのは頭いいなと思える。

でも人が死んでいる事件というセンシティブな案件に踏み込んでいく中で人のプライバシーを暴くために危ない橋を渡りまくり、合法的でないことをやってしまうのは無鉄砲と言うか若さ故の過ちというか、これを終わりよければすべてよしとして看過されるのはどうかなあ、そのへん気になるなあと引っかかっております。

 

終盤の犯人の解明と自白のシーンと主人公が危険な目に遭ってしまうというのはなんとも火サス的でもうちょっと若々しくてもいいのに、危険な目に遭って誰かが助けに来るパターンとか他にないんかいと思うところはありました。なんであんなにかんたんに自白するんだろ。

あと、ある存在の成り行きに私個人は辛さを感じずにいられない。読むのやめようかと思った。

 

他には様々な犯罪の容疑者たちが主人公ピッパに罪の証拠を握られているのに放置するというところには無理を感じました。どいつもくそったれなんだけど、ふつうやったら知られていたら放置しないでしょ。手駒がどこにあるかわからない状態だからなにもできないと思ったのかもしれないけど。そのへん、様々な情報を握っている主人公は強かったなあ…

 

そしてある脅迫によりPC等を破壊して捨てさせるくだりがあるけれど、クラウドがあるいまそれ無駄だってわかるじゃんね。脅して重要なものを破棄させるという懲罰を与えたかったにしてもだ。それで証拠がなくなった、安心、じゃないっしょ。実際クラウドからデータを復帰させたので脅迫からの犠牲という激しい痛手はあったけど研究自体にはなんの損失もなかったという…

 

そのへんのツメの甘さを感じつつも読ませる面白さ、生半可じゃないスリルもあり、最後の最後にビシーッと決める爽快さは良かったです。

フィクションだけど現実にも起こりうるいろんなことがこの作品には詰まっているような気がしました。どの国もわりと似てるねえ…

 

シリーズ化されて続きも来年?出版予定らしいので楽しみ。絶対読みます。