夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

23029 スティーヴン・キング 「異能機関」(上)感想

ある程度覚悟がバシーッと決まれば、もうページを捲る手が止まらないんですよ。

leira3mitz37.hatenablog.com

 

【恐怖の帝王、作家50周年を前に王道のSF巨弾が待望の邦訳!】

異能の少年少女を拉致する謎の機関〈研究所〉。
彼らは子供たちの超能力を利用して何を企図しているのか。
冷酷なるくびきから逃れるため、少年は知恵をめぐらせる。

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ミネソタ州ミネアポリスに暮らす12歳の少年ルークは、両親こそごく平凡だが、優秀な子供の特待校に通う神童だ。彼にはちょっとした特殊能力があった。ふとしたときに、周りのごく小さな物品をふれることなく動かしてしまうのだ。と言っても、それは他人が気づくほどのことでもない。

一流大学MITの入学内定を勝ち取ったルークだが、ある夜、3人の不審な男女が眠る彼をかどわかす。目覚めたルークが見たのは、自分の部屋そっくりにしつらえられているが、何かが違う一室だった。扉の外は自宅とは似ても似つかぬ、古びた大きな施設。そこには様々な少年少女が拉致され、自室と似た部屋を与えられて戸惑いながら暮らしていた。

目的も知れぬこの〈研究所〉で、残忍なスタッフや医師に、気分の悪くなる注射や暴力的な検査を繰り返される少年少女たち。彼らの共通点は「テレキネシス」か「テレパシー」の超能力を持っていることだった。

ルークは黒人少女カリーシャ、反抗的な少年ニック、幼く泣き虫だが強いテレパシーをもつ男の子エイヴァリーらと知り合うが、一定期間検査を受けた子供はひとり、またひとりと〈研究所〉の別棟〈バックハーフ〉へ連れ去られ、決して帰ってこないのだった。ルークはこの不穏な施設からの逃亡計画を温めはじめる――。

あらすじがめちゃめちゃ不穏でしょう。序盤はぜんぜん違う視点の物語で人死にも出ないのは上記の序盤を読んだ感想でも書いた通り。

キングといえば子どもが主役でもとんでもねーことを平気でやるのでなにが起こっても仕方がないという諦めにも似た気持ちで読みました。

 

プリズンブレイクみたいなものだから、やっぱり某ドラマみたいに首謀者は天才であったほうが良いんですが、こちらは同じ作者の作品の「ショーシャンクの空に」というか「刑務所のリタ・ヘイワース」も近いかも。原作読んでないけどね!

拉致監禁された場所が本当に悪夢を見るような場所なんだけど、その中でも身を寄せ合う子どもたちが愛おしく、働き続ける脳とまだ子どもの心と体との折り合いをつけながら事態を判断するルークにハラハラしてこっちも痛かったなー、いろいろ。

 

最近のキングの作品も面白そうと思いながらわりとご無沙汰だったのですが、上巻の時点でこちらは読んでよかったです。面白い。ルークが見た目は子ども、頭脳はおっさん(作者)みたいな気もしないでも…と思ったけど、細部まで描写がすごいし、天才ルークの天才ぶりも、天才が書くから天才の説得力が強い。

双子の姉妹の描写が面白かったですね。双子に関する表現を読んであの映画気に入らない割にネタにするのね、って思ったわ。

 

これからどうなるか、序盤の彼らがどう絡んでくるのか、予想をつけながらも誰も死んでほしくないなーと思いながら、続きを読もうと思います。

怖いより面白いね、怖いけど!