夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

23031 23032 蔡 駿「忘却の河」(上)(下)感想 ネタバレなし

推しの子✕日曜劇場

1995年6月19日、名門高校の教師申明(シェン・ミン)は何者かに殺された。殺害された生徒と恋愛関係にあったのではないかと疑われていた直後のことだった。慕っていた生徒や同僚、そして婚約者の谷秋莎(グー・チウシャー)からも見放されて――。先に起きた女子高校生殺人事件との関係などが疑われたが、結局真相はわからず事件は未解決となった。
時は流れ、2004年。谷秋莎は訪れた小学校で、すらすらと漢詩を暗誦する小学3年生司望)スー・ワン)と出逢う。父が経営する私立学園の良い広告塔になると思ったのだが、次第に司望に執着していく秋莎。ある日、ふたりは廃車のトランクから死体を発見する。それはあの申明の旧友の死体だった。
忘れたはずの因縁が甦り、そして司望にちらつく申明の影。天才小学生は申明の生まれ変わりなのか? いま、輪廻が巡り始める――。 中国のスティーヴン・キングが描く、異色の輪廻転生ミステリ。

冒頭の例えがしっくりするというか、私は上記の粗筋を読んだ時点で「なんていま旬なんでしょう」と思ったものでした。

「推しの子」を読んだ後でしたからね。

読んでる間ずーっとYOASOBIの「アイドル」が頭の中にかかっていたような。この作品、大好きなんですよ。

 

あくまで設定上の話でアイドル要素のない「推しの子」っぽい感じはありましたが、謎が謎を呼ぶドラマチックな展開はスティーヴン・キングというより日曜劇場っぽい。

引用される人や作品が共産圏じゃないところの文化になりがちなのが他の中国の作家さんでもありがちですが、かなり影響を受けてはるんやなあといろいろ思うところがありました。あと、他にも思うところがある感じ。

 

出てくる人の視点がわりとどれも信頼できないところがあるので全部読んでみないとうまく頭が整理できないところがありますが、超面白い、ということはお伝えしておきましょう…竹書房さん、今回も面白い作品をありがとう。

 

2023/10/07 19:59

下巻を読み終わりましたー。

Amazonのタイトル、直らないのかな。(仮)はなにかの間違いです。

複数の登場人物から語られることがどれも信用できないので上巻を読んだ時点ではなんとも言えなかったのですが、最後まで面白かった…

 

何を書いてもネタバレになっちゃうからそこは避けたいし、ネタバレで書いてもどうとも言えない感じ。とんでもねー日曜劇場でした、と思うような。

 

中国というお国柄、周囲の目や偏見の凄まじさがハンパない、そこから起こった問題もあるような気がしました。日本だったらそこまで問題にされないことまで深刻なスキャンダルになるんだもの。人の命と女性の立場の軽さとかも怖いですよね、他の小説でも思ったことがあるけど。

何が怖いってさ、ふつーに川べりに数年放置されてる車よ。

 

お話の核心に触れない部分もおっかないし、お話の核心は核心でおっかない。

ミステリー、サスペンス、ちょっとスリラー。ロマンスもあるよ!うん!

過去と現在と前世と現世が入り混じり、登場人物全員ひと癖あって様々な事実が浮かび上がるたびに「ひえ…」と思わずにいられない。

 

面白かったです。あらすじに惹かれるなら是非読みましょう。

いろいろ出てくる共産圏じゃない文化がだいたい知っていて馴染み深くて面白かったですね。中国の方もお好きなんだ、っていう作品もいっぱいありました。

せめて文化だけは隔たりなく、好きなものは好きだと尊重したいっすねえ。

 

2023/10/08 後日付記。

そういえば読んでいる間に思ったことなんだけど。

ダン・ブラウンの本が好きならオカルト好きとか殺人犯を疑われるなら日本にはどれだけ犯罪者予備軍がいることだろう…

私はダン・ブラウンは好きっちゃあ好き、そこまでっちゃあそこまでなんですが、オカルトは大好物ながら、善良な小市民です。