夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ

 大昔にハヤカワ・SF・シリーズ(銀背)で出版されたのが絶版になって久しく、しかもあまりに大昔なのでデータとしてAmazonにもないという状態で、読んだ人たちやコニー・ウィリス本人*1とそのファンから語り継がれていた伝説の作品、ルイス・パジェット(ヘンリー・カットナー)作「ボロゴーヴはミムジイ」がアンソロジーに収録される形で復刊して数ヶ月。

伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ (ハヤカワ文庫SF)

伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ (ハヤカワ文庫SF)

 
S-Fマガジン 1965年11月号 (通巻75号)

S-Fマガジン 1965年11月号 (通巻75号)

 

 ルイス・パジェット「ボロゴーヴはミムジイ」

時間SFだという話は聴いていたけれど具体的にどんな話かまったくわかっていなかったのだけど、読んだら「幼年期の終り」を思い出すところもあり。

大人は昔子供だったのに、大人になってしまうと子供のことは理解しがたい存在になるのかね。

私は子供の頃に考えていたことを割りと克明に覚えているから(というか今と考えていることはさほど変わんないというか)ここまで理解不能じゃないけれど、噂を聞くとこんなちょっと怖い話だとは思わなかったので驚いている。

タイトルがあの作品からとられているのも初めて気づいてあの作品は奥が深すぎるとか。10歳の頃に自分のお小遣いで買った本だけど不気味なイラストに目が行きがちで、しかも買ってすぐにあの有名な作品の続編で私はそっちは映画でしか知らない、と気づいて読んでないまま数十年…

ネタバレになるのでその作品名は伏せるけど。

 

何かに取り憑かれた(言い換えれば集中している)子供はそれ以外にはなんの未練も思慕もない、それをそばで見ている保護者は寂しさと管理者として制御できない恐怖を感じるのかもしれない。ちょっとかわいそうになった。

 

面白いかどうかは読む人によってぜんぜん違うと思うのだけど、私は銀背を5000円近く出して買わなくてよかったなーって。適切な価格を翻訳者に印税として支払える状態で購入できてよかった。早川書房さん、復刊してくれてありがとう。

 

 

幼年期の終り

幼年期の終り

 

 

 

 

*1:何かの講演とか自分の著作の前書きとかなにかで強く推していた