なーーーーんの情報も入れず、一作目から読んだらいいです。
1mmも情報を入れちゃダメ。
私なんか読んだ人からこの作品の構成について触りだけ聞いてそれだけでもソワソワしたもの!
大学入学直前のピップに、ストーカーの仕業と思われる不審な出来事がいくつも起きていた。無言電話や匿名のメールが届き、首を切られたハトが家の敷地で見つかったり、私道にチョークで頭のない棒人間を描かれたり。調べた結果、6年前の連続殺人との類似点に気づく。犯人は逮捕され服役中だが、ピップのストーカーの行為は、この連続殺人の被害者に起きたこととよく似ていた。ピップは自分を守るため調査に乗りだす。――この真実を、誰が予想できただろう? 『自由研究には向かない殺人』から始まった、ミステリ史上最も衝撃的な三部作完結!
過去の感想はこちら。
自分がいかに遵法精神にあふれているか思い知ったわ…二作目でも主人公ピップがやらかしたことに対して文章的に眉をひそめているわ、わたし。
ここからは前作までのネタバレを含みます。
ピップは友達のお兄さんが行方不明になっているのを見つけ出すために否応なしに事件に深入りして解決するものの、思ってもみない事件に巻き込まれて自分の目の前で人が死んでしまう。そのショックを抱えたまま三作目に突入。
遵法精神は強い割に人の死に関しては(創作の世界では)あまり重く感じないのかピップが抱えている苦しみにさほど寄り添えず、ピップが苦しみのあまりやらかすあれやこれやに非常に苦々しい気持ちになっていきます。
まだ若いから、っていう理由で全ては片付くような気もするけど、ピップはケンブリッジ大学に入学する権利を得た賢い子なんですよ。でも二作目の感想でも書いたけど彼女は「頭がいい愚か者」だなーと思っちゃって。おまけに自己中。
錯乱しているとはいえ、物語の流れとしてそうあったほうがいいと作者が思ったにしろ自分勝手な行動にたまに折り合いをつけるために周りを慮ってるようにもとれる。頭がいい子だからそこまで頭が回るような。
最後に向けての身の処し方も、自分がそれで満足なんだろうな、ってちっとも寄り添える気分にはならなかった。
お話としてはむちゃくちゃ面白い。三人称と一人称を織り交ぜながら一人の少女が錯乱して追い詰められていく様子が見事に描かれており、物語も一作目から動いていてピップが自分に言い聞かせたようにうまく収まったのはすごいと思う。
読んでいるこちらは正義のありどころについてずっとモヤモヤを抱えながら物語の行方を追うしかなくて、ピップが直面した現実と真実に若干やるせない思いがあったけど彼女がやらかしたこと(もう、やらかしとしか思えんよ)は心の底からは同情できず、事あるごとに自分の周りの大事な人たちに対して抱える刹那的な思いも「酔いすぎでは」と感じたり。
あれだけ巻き込んでおいてアンタ…!
ピップは一作目でも法を逸脱した行為をしたし(被害者の家に泥棒に入って日記をくすねたとか)、二作目では癇癪を起こしてマックスの車をめちゃめちゃにした。そういう子なんだよなあ…って思い返しながら物語を目で追っていくときの無力感たるや。
お話は面白かったけども!!3作目まで読んだ価値はあったけども!読んで良かったとか、読んだ「甲斐」はあったとは言わないな。
読者の気持ちが非常に試される作品でした。
私は真面目だなあ…
物語の都合とはいえ、心配しながらも迎えに行かないラヴィとか、振り回されるラヴィとかについてはどこかでいろいろ語りたい気もする(どこで)。
いろいろ議論が飛び交いそうなので、読書会向きだと思います。
面白かったけど、YouTubeの番組でこの作品について話す、すでに読んだ人の顔が曇っていたことに納得です。私も読んでいる間ずーーーっと曇ってた!
でも面白いから読んだほうがいいですよ。今年必読!です。
この下にネタバレでボヤいた感想を載せます。
羽海野チカ先生が担当した集英社みらい文庫の読書ノートにボヤきました。