夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

24019 カーリン・アルヴテーゲン「バタフライ・エフェクト」 感想

北欧ミステリの女王が書いた、非ミステリ(というのを読み終わって知る)

北欧ミステリの女王が描く濃密な人間ドラマ。

不治の病に罹り、夫と別れて死を待つ日々を送る五十代の女性ボーディル。法律家としてキャリアを積みながら、心理カウンセラーに依存する三十歳、独身の娘ヴィクトリア。良き父良き夫であり、建築家としても成功を手にしていたアンドレアス。小さな出来事がやがて大きな波となり、それぞれの人生の歯車を狂わせていく……。

あらすじもちょっと違う気がする。

 

あらすじとか読まずに取り掛かったんですよ。10年くらい前に誰かが評価していたのでKindleで購入してずーーーっとそのままにしていたんですが、そろそろ読もうかなと気まぐれに読み始めたら、あまりの重さとか語り手たちが私と性格が合わなすぎて一人ひとり説教かましたくなりながらも、「いつになったらミステリ要素とかどんでん返しが起こるんだろう…」と読み、60%のところあたりでうすうす、「ははーん、これ、ミステリじゃないな?」と気づきました。

 

一応ミステリ要素として冒頭の展開が謎なので、誰がどうしてどうやったかというのは気にしてもいいかもしれないけども。

でもこれも回り回って(バタフライ・エフェクトってそういう意味合いあるじゃないですか)…

 

 

ボーディルの夫が全部悪いのでは。

マジで!超!クソッタレなんですよ。

自分のつまんねープライドのために彼女を縛りまくった挙げ句、避妊もしないわ、妻も娘もモラハラしていくわ、器は小さいわ、もー!

うちの父そっくり!!!

 

という感じで、語り手のボーディルと娘のヴィクトリア、どちらも読んでいて痛し痒しってところがあったり、私はこういうのじゃないなーと思う部分も多々ありで、この人たちの人とのつながりを求めるところとかは私にはないからそんな面倒なもん捨てちまえって思っちゃいがちで、私、よくこれを読み切ったなあ。

過去の自分への言い訳と自分をこんなふうにした怨嗟と罪悪感に満ち満ちた独白をずーーーーーっと聞かされておりました。

ヴィクトリアがなかなか面倒くさい奴で、しょーもないところもいっぱいあるんですけどあの父の娘だしなあ…といまは思っちゃったり、そんなの払拭してくれ!と、あの父の娘は思うのでした。払拭したい!

 

もう一人の語り手の、ある事件に巻き込まれるアンドレアスだけ接点がないのもミステリ要素ではあるか。でも読んでいてうすうす繋がりに気づいていくんですよね。

 

アンドレアスの行く末が興味深いけど、こういう人SNSでちょいちょい見るわと思うところもあり。でもこれかなり前に書かれたお話だから、昔からああいう人っていたんだろうな、そこを活写してるんだと思います。

 

そして、スウェーデンでも家父長制が強く呪いのように息づいていて、女性たちはその犠牲になりがちなの、先日読んだスペインの小説でも感じるところがあったので、どこの国も同じなんだと思うと絶望しちゃう。

 

ミステリとは言いがたいけど、読ませる引力は強かったです。

この作品が他人事であるならその人が羨ましいかもしれない。本当、いろいろ身につまされました。