夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

24001 アイザック・アシモフ「鋼鉄都市」感想

年またぎで読みました。

警視総監に呼びだされた刑事ベイリが知らされたのは、宇宙人惨殺という前代未聞の事件だった。地球人の子孫でありながら今や支配者となった宇宙人に対する反感、人間から職を奪ったロボットへの憎悪が渦まく鋼鉄都市へ、ベイリは乗り出すが……〈ロボット工学の三原則〉の盲点に挑んだSFミステリの金字塔!

え、まだ読んでなかったの?って自分でも思いますが、初めて読みました。アシモフ自体は「雑学コレクション」は学生の頃から読んでいてその膨大な知識を貪るように得て脳内でオーバーフローを起こして気持ち悪くなったりもしました。人生の役に立つかどうかはわかんないけど話の種にはなる内容でね。

 

あらすじは知っていたのですが、1953年に書かれたいわゆるレトロフューチャーの雰囲気が強い、ディストピアものとも言える作品というのは読んで初めてはっきりとわかりました。宇宙人にちょっと頭を押さえつけられているけど過剰な干渉は受けてない、自分たちで自分たちを強く管理している社会なんですよね。それは増え続ける人口に対して燃料や食料が制限されているから。

 

そんな時代背景を細かく描かれながらも主人公の私服刑事であるベイリは学生の頃から先輩格にあたる本部長から世にも珍しい宇宙人の殺人事件の捜査を持ちかけられる、という入り口なんですが、そこから精巧に作られたヒューマノイドとパートナーを組まされて行動をともにさせられるくだりから事件の捜査に入るのか…と思ったら。

 

これが、なかなか捜査に結びつかない。逆にヒューマノイドが足手まといなのでは?と思うくらい、ヒューマノイドがロボットであることを隠したり守ろうとするあまりに事件とは関係のない冒険を繰り広げる羽目になる。その合間に開陳されるベイリの覚醒毛利小五郎ばりの珍推理やベイリの妻との馴れ初め、妻のお名前コンプレックス。

これが事件になんの関係が?と思っていたら!

 

関係あったんだなーこれが!

 

結構脱線があったようなのにどれも大して無駄じゃなかった。

ただし、解決に導くために用意された材料ではあった。ごくごく内部的な事件であり、真相は「なんかコナンでありそー!元ネタこっちになるけど!」って感じでした。

 

いつまでも内々の問題やベイリ本人の気持ちの問題などの描写に注力しているのでこれはそもそもミステリではないのかな?と思っていたらたしかにミステリじゃなくて思考実験でしたー!って流れもあり、あ、そういうオチで片付くの…?と思ったらちゃんとミステリでしたー!というツイストもあり、私は戦後で社会の構造に変革が起こっている時期のアシモフたんの思考の中で振り回されたんでしょうね。

どこにケリがつくのか、ロボット三原則がどう関わってくるのかこれはと首をひねりながらも、オチでまあ、納得かな…って。

 

大きな思考実験を一人の刑事がたどり着いた結論で収束させるのはどうかと思うけれどもな。

おもしろかったけど、もっと若い頃に読んでいたらいまの私と同じように思うのかどうかは謎です。

 

こちらには続編があるのですが、続編はミステリなのか、そこが気になります。

アーサー・C・クラークロバート・A・ハインラインアイザック・アシモフは御三家と呼ばれるような組み合わせでこれで3人の作品を一作品以上は読んだことになりますが、一番好きなのはクラークですね。いちばん苦手なのはハインライン。でもハインラインが一番多く読んでます。

アシモフはミステリも有名なのでそちらも読んでいこうと思います。

あと、自分が持っていることが判明した「空想自然科学入門」も探して読もうかしらん。「われはロボット」もちゃんと持っているので読もう。

 

こちらが続編。

雑学コレクションは本当に読んでいると胸焼け起こすくらい膨大な知識が流れ込んでくるんですよね。夏場にエアコンの効かない自分の部屋で読んだから熱中症になったのかもしれないけども。

私はなにを頭に入れているのだ…と思ったものであった。面白いんですけどね。ヴィクトリア女王が結婚する日までお母さんと同じ部屋で生活していたとかあったような。

南極とか北極の動物のくらしとかも細かく書かれていたような。

 

翻訳の福島正実さんは私は「幼年期の終り」と「夏への扉」でもおなじみの人で、今では表現されないような面白いSF単語を発明された方ですよね。「文化女中器」があまりにも有名。こちらの作品でもその魅力にあふれていました。新訳されることがあるかもしれないけれど、こちらも大事にしてほしいな。