夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

24018 ハビエル・セルカス「テラ・アルタの憎悪」 ネタバレ回避感想

まず前科者が刑事になれるのがすげー!!!!

獄中でユゴーの『レ・ミゼラブル』と出会い、犯罪をやめ警察官となったメルチョールは、カタルーニャ州郊外の町テラ・アルタで、富豪夫妻殺人事件の捜査に当たる。夫妻は拷問の末に惨殺されていた。メルチョールは夫妻の事業には裏があることを直感するが……

スペインの小説を読むのはたぶんこれで2作目?

フェリクス・J・パルマってスペインの小説家だよね??

すごく面白かった。

他に「風の影」は持っているんだけど未読。

映画はペドロ・アルモドバル中心に見ていて郊外がどういう景色なのか、バルセロナの街がどんななのか、マドリードは、集合住宅の雰囲気とかはイメージできます。アニメもスペインが舞台になったシーンがある作品にハマることがあるので(「明日のナージャ」と「ユーリオンアイス」な!)本当、知らない街という気はしなかったですね。

ただし、舞台になったテラ・アルタは全く知りませんでした。歴史的背景も昔ひどい内戦があったというのはピカソを特集した番組とか、「ミツバチのささやき」とか?何かしらで触れることはあって、そりゃあひどいもんだったというのはうっすら知っている程度。

そしてヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」に関しては、子供の頃に同級生で成績が良かったが、ヒステリー起こして私を縦笛でぶん殴ってくる女の子が読んでいたので私も読もうとしたら母から「暗いわよーーーーー!」と言われ、子供の頃から暗いものが好きじゃなかった私は読まずにたまに気になってあらすじを攫う程度で、映画も舞台もアニメも見たことがありません。そのくせ同時期に「椿姫」「女の一生」「ジェイン・エア」とか読んでるんですよね。あれも暗い。

 

そんな私なのですが、物語に入り込んで読めました。

主人公の生き様が強烈なのですが、これまでの人生を合間になぞりながら、比較的平和な田舎町で起こった凄惨な事件の捜査に執念を燃やしていく構成で、何が語りたいのか、事件は解決するのか、スペインの地方警察ってどの程度有能なのかわかんない中、待ち合わせすると絶対遅刻するあたりが西ヨーロッパ!ってちょっと笑いながら物語を追っていたら、物語がいきなり動いてそこからがめちゃくちゃ速かった。

 

主人公の過去も、これまでの心の有り様の変遷も物語にとっては大事で心に残るエピソードだし、終盤の展開は私のジャッジでは反則っちゃあ反則なんだけどそれまでに十分匂いはあったなと思えるのでセーフです。

レミゼで人生が変わった男の物語として、ミステリ(というよりサスペンス)の枠を超えて文学作品と言えるかもしれない。スペインでしか書けない。

これで終わるにはこの主人公の人生の語り方からしたら惜しいと思っていたら三部作だそうです。

 

同じスペイン語圏だからメキシコやコロンビアともかなり関係が深い現在のスペインの背景も知れたし、やはり外国のミステリはそのへんも面白い。

レミゼウィキペディアで攫っていたほうがいいしスペインの歴史もちょっとは知っておいたほうがいいけれど、丁寧に描写をしてくれるからそういう知識がなくても面白く読めると思いますよ。

バルセロナの海が出てくるのですが、景色の描写に既視感があるような…と思ったら「ユーリオンアイス」で、ちょっとうれしくなりました。

 

ということでネタバレしません。おすすめ!レコメンド!

だいたいマドリードが舞台だけどなにかがバルセロナが舞台だったような…?ペドロ・アルモドバルの映画わりとよく見ているからなにがなんだか。猥雑な中で人間の熱さとか優しさとかに触れられるのが特徴なのだけど、上記の小説も垣間見える部分がありました。ハートウォーミングとは言い難い作品ばかりなのに、なぜか最後にはとびきり優しい気持ちで見終わるんですよね。

行ってみたいとは思わないけれど、好きな国ではある。もっとスペイン語圏の作品も読もう。カスティーリャ語とか独立とかいろいろ複雑なんだろうけど、雑にそう思います。