夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

23010 ルイス・ベイヤード 著 山田蘭 訳「陸軍士官学校の死(下)」不真面目感想

とても不真面目な感想になります。

NETFLIX「ほの蒼き瞳」原作

才気煥発な青年ポオを協力者に、士官候補生の遺体損傷事件を調べつづける元辣腕警官のランダー。だが、そんな彼らの前に第二の、そして明らかな他殺死体が現れる。そして、令嬢リーへの愛に全霊を捧げるポオとランダーの関係にも、暗雲が立ちこめはじめていた。内なる孤独を抱えるふたりの男が、陸軍士官学校を震撼させた殺人事件に見いだした真実とは――。19世紀アメリカを舞台にした、圧巻の歴史ミステリ大作。解説=川出正樹

時代設定も物語の趣もよく、時代が時代だけに内容が古典的ミステリじみているのもしっくりします。

事件を側面からみれば大昔、天知茂が土曜ワイド劇場で明智小五郎をやっていた作品のように、謎めいた女性がやたら怪しげな様子で存在する感じなのもよし、別の側面から見ると事件なんかぶっちゃけどうでもいいからかなり年下だけどおもしれー男ともっと仲良くなりたいおじさんの複雑な心境の描写とかそれぞれ魅力はあるのですが、上巻からどーーー見ても犯人はわかるわね、というお話なので早く判明しないかなーって気持ちになるんですよ。

 

犯人が判明するくだり、クライマックスもだいたい予想通りの展開だったしな…

そこで何を楽しむかと言うと、途中で出てくる情緒不安定のおばさんの奇矯さがキャシィ塚本やん!って思うとか、ポオが自分の深層心理による作詩を亡くなった母によるものと言うのを「イタコかよ」と思うとか

主にツッコミが鋭くなっていくんですよ。こうなると。

 

で。事件がわりと綺麗に片付いて意外なくらいページが余っていることを不思議に思っていたらとんでもねーどんでん返しが。

…なるほど、本当に語りたかったミステリはそれかと。

 

そこへたどり着くまでに回り道と脱線もありましたが、事件の解決より友情を温めていた理由もわりと納得。

最後の最後で心から面白いと思えました。似たようなオチは他でも見たことがあって、これは所謂反則とも言えるんだけども、嫌いではないです。

 

ポオも変な人で文章がごてごてしていたけど人間としては魅力的でした。詩人だけに話を盛りがちで彼はただ一言ガスにヒントを与えただけがきっかけだったのに、過去を暴かれたりプライドを傷つけられたり踏んだり蹴ったりでちょっと気の毒でした。ちょっとくらい。