あー!こちらもガーディアン紙が選ぶ1000冊の選書だったんだ。忘れてた。
ヨークシャの荒野に立つ屋敷〈嵐が丘〉。その主人が連れ帰ったヒースクリフは、屋敷の娘キャサリンに恋をする。しかしキャサリンは隣家の息子と結婚、ヒースクリフは失意のなか失踪する。数年後、彼は莫大な財産を手に戻ってきた。自分を虐げた者への復讐の念に燃えて……。時を超えて読み継がれてきた壮大な愛憎劇。陰鬱で荒々しい英国の自然を活写することで、その真の魅力に迫る決定訳!
ブロンテ姉妹はC・ブロンテ「ジェイン・エア」を小学6年生の頃に読んでいたんですよ。ハマって読んでた覚えがあります。
こちらの物語は、大昔に昼メロで翻案されたものが人気でうちも夏休みに家族揃ってハマっていた覚えがあるのと、一番最初にこちらのタイトルを知ったのは「ガラスの仮面」でした。そういう人もそこそこいらっしゃるんじゃないかしら。
8巻くらいかなあ。北島マヤが娘時代のキャサリンを演じていて、あまりの役のハマりっぷりに相手役の俳優がガチ恋してしまう、が、マヤのほうは役が抜けるとフツーの子なのでピンときてない、心配するのは桜小路くんという展開だったような(持ってるんだから確認せいよ)
しかしこのガラスの仮面での劇中劇の印象が強かったばかりに、可愛らしい思春期の恋愛を経ての愛憎劇と思ったままいまに至っていましてね、少女漫画でも読むつもりの軽い気持ちで着手したんですよ。それが大間違いと知る由もなく。
で、上巻を読み終わっての感想が…
ポプテピピックばりに、登場人物大体全員クソ!!!
大体全員自己中、他人の迷惑考えない。ヒステリックでギスギスしてキレッキレ。
キャサリンは北島マヤが演じたような可愛らしい要素がほとんどなく、ワガママで感情的で我慢が効かない、ヒステリー起こして体を壊して精神的にも危うい、言い方を選ばなかったらサイコパスです。いいところが顔しかない。
キャサリンの夫の妹、イザベラがヒースクリフに片思いするくだりのキャサリンのやることが中2女子のスクールカースト天辺の小娘が底辺の娘にやる嫌がらせそのもので胸糞悪かったなあ…イザベラもキツい美人なのにキャサリンの気性の激しさとあからさまな性格の悪さにタジタジ。
語り手がキャサリンの乳姉妹の召使いのネリーで彼女のフィルターがかかっているので、キャサリンが嫌いなばかりにディスりが多いとも取れるんだけど、とにかくめっちゃ悪く描かれています。キャサリンの兄のヒンドリーも召使のジョウゼフも、主人公のヒースクリフも、全員美点がない。
ヒンドリーは最初からクズ、ジョウゼフは召使とは思えないほど態度がデカくて失礼でクズ、ヒースクリフは全方向でクズ…
語り手のネリーもいろいろ言い繕って語り手が自分だから言い訳もしてるけど、人間関係をかき回していてるし偽善者です。キャサリンの異常な長台詞の聞き役をしなければいけない境遇は気の毒だけど、話がこじれた原因はネリーにもある。
ネリーから嵐が丘に何が起こったか聞き取っているロックウッドさんも好奇心で話を聞き出したけれどだんだんうんざりしてきているのが面白くって。
ヒースクリフが「ガラスの仮面」で見たような純情そうな少年じゃなくて、最初から陰キャで荒々しくて性格が悪いのでなんだか…裏切られた気分…私が良いように思い込んでいただけなんですけども。
少女漫画というより、なんかそのへんの安いマンガの電書サイトの広告で切り貼りされているような、悲惨な展開の作品みたいな地獄がそこにありました。
そういうのって下世話で妙に好奇心がくすぐられるじゃないですか。だから私もそういうのをうっかりタップしちゃった人みたいな気持ちで読みました。
ある意味面白いので現代っ子も読んだらいいよ。ヒースクリフがだまくらかして結婚しちゃったお嬢様イザベラが、ヒースクリフをよく知る召使のネリーに「彼は本当に人間ですか?」って手紙で質問してるくだりとかもう爆笑するもの。
イギリスの古典ってこんな意地悪な作品が多いのかなあ。イギリスじゃなくてもロシアでも意地悪な作品はあるけど。
下巻でこの気持ちが覆ってうわあすごく感動した!となればいいんですけど、下巻の序盤をいま読んでいてもそういう感じはしません…ある意味驚きが多いのですが、雑な展開なので新人がこの話を出版社に持ち込んだら編集に追い返されるような気がします。
…覆るといいなあ?
2024/7/24 未明 下巻読了
もー!とっとと読み終わりたくって!こんな不愉快な小説久しぶり!
偏見、差別へのカウンターが金と権力と暴力と暴言(しかも本人だけでなく子どもにまで)ってどうなの…
ヒースクリフが本当、救いようがなくて、確かに悔恨とか悲しみも抱えているんだけど、その対象がクッソわがままで根性が悪かったキャサリンかと思うとあんまり同情できず、ある意味お似合いのカップルではあったけど魅力はなかった…
悪い人でも何かしら魅力を感じる人だっているけど、ヒースクリフはそんなのはない。キャサリンもない。本当に救いようがない。勝手にヒステリー起こして狂って聴いてくれる人がいるからって一方的に自分の哀れっぷりをぶちまけて思い通りにコトを運びたくて傍若無人の振る舞い。
勢いだけは感じられるストーリーテリング(というか長台詞)を受け止めようがなく、本当、読むしかなくてなすすべがない。
子どもたちが割りを食うようで、ヒースクリフとイザベラの子どもがまた救いようのない奴で、キャサリンの娘キャシーが一番マシなようでこの子も人の言うことを聞かない。一番翻弄されたのはへアトンだけど、育てられた環境に身を委ねるしかなかっただけに残念な成長過程をたどり、どこもかしこ救いがない。
語り手のネリーもなすすべがないけどなんとかキャシーだけは守りたい気持ちでヒースクリフとその息子リントンにブチキレた瞬間があって、そこは爆笑したけども。
それ以外はドン引きで、なんてものを読んでるんだ私は…!という気持ちでいっぱいでした。
読み終わって、終盤の展開は悪くないと思うんですけど、あの時代に女性がよくこういう闇の力に溢れた物語を書いたなと、登場人物の物語より書いた人に感服はしました。
ガラスの仮面と昼ドラでしか知らなかったから、こんな禍々しい物語とは思わなくて。ジェーン・オースティンが書くようなのを想像していたんだけど(多少の意地悪や人間関係のいざこざや理不尽な相続話はあるかもしれないけれど、エモいロマンスもあるのではと期待してた…)あとで知ったんだけどジェイン・オースティンとわりと対極の存在らしいな?
私としては読んだことがないけどウィリアム・フォークナーの小説に持っている偏見というかイメージに近いものを感じたので、英米えげつない対決としてウィリアム・フォークナーも読まないと!って思ってしまいました。
そう、終始にわたってえげつなかった…召使のジョウゼフが、自分では敬虔なキリスト教徒のつもりらしいけどかなり邪悪で言葉も汚くて存在そのものがショッキングでした。でもそのへんにいる普通のめんどうくさいじいさんくらいにしか思われていないあたりに、あんなのがゴロゴロいた時代なのかと思うとゾッとする。
ヒースクリフのバイオレンスぶり、存在そのものが理不尽な感じなのも衝撃的。圧倒される。
ようあんなの書けるわ。
ここ最近「思ったのと違う」本によく当たっているんですが、こちらがその白眉でした。翻訳がうまいのもあるからか、スイスイ読めるのが癪に障る笑
紙で700ページ超えですが、リーダビリティが高いので夏に大作を読みたいなあと思う方には、メンタルやられるけどおすすめです。まじでムカつく。でも面白かった!アーンショウ氏がヒースクリフを拾わなかったら皆んなもっと長生きしただろうなあ…
そして、こんな嫌な作品のあとだから明るい小説が読みたいと思ったのに、次はまたえげつない小説になりそうです。