夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

24012 24013 チョン・ウングォル「太陽を抱く月」上巻 下巻 感想(2024/05/26更新)

珍しく同じ作家さんの本が続いています。しかもこちらもドラマ化作品ですね。

キム・スヒョン(『ドリームハイ』)、ハン・ガイン(『赤と黒』)、チョン・イル(『私の期限は49 日』)らスターたちを主演に、韓国にてドラマ化され最高視聴率46.1%を獲得したファンタジー宮廷ロマンス時代劇、ドラマ『太陽を抱く月』の原作小説!! 若き皇太子フォンは、ヨヌと出会い恋におちる。朝鮮王朝の権力闘争の中でフォンは、ようやくヨヌを皇太子妃に迎えることになる。だが喜びもつかの間、直前にヨヌがこの世を去ってしまう。憔悴し、何年もヨヌを忘れられないフォンは、やがて謎の巫女に出会う……。宮廷を巻き込んだ一世一代のラヴ・ロマンスが、芳醇なミステリの中で香しく立ちのぼる!!

「成均館儒生たちの日々」と比べると明るさとか頓狂さがなく、場所もほとんど王宮から出ないし、主人公である王様がぶち当たる謎の答えはなんとなく察することが出来るのに、これがちょおおおおおおおおおもしれーーーーーんですよ!!!

 

本当、むちゃくちゃおもしろい、この作品。

 

作者さんの教養の深さが物語をちゃんとしたものと読ませるし、仕込まれた謎がちゃんとミステリとして存在するから、王様が知りたい謎の答えの重要な部分は読者の私も見透かせるけど、でも何で?って、WHYの部分もうっすらわかるような気がするけどそれが確かなものになることを祈りながらページをめくろうとして、王様と上記引用文の「謎の巫女」のくだりでもう、もどかしくてページを行きつ戻りつして読むのに思いの外時間がかかかってしまうという…

 

王様が自分を取り巻く信用ならない政治家たちを牽制しながら自分が后に望んだ女性がなぜ死ぬことになったのかという謎を追うのがスリルがあって私がヒヤヒヤする、ヒロインがなかなか掴み所がないながらも彼女が窮地に陥らないようヒヤヒヤする、でも一番ヒヤヒヤするのが、王様が正室、妃になるひとと閨をともにするかどうかってところなんですよね!!

 

パク・ボゴムさん主演でわれわれがドハマりした「雲が描いた月明かり」でもそういうスリルがあったし、最近では「光る君へ」でもありましたが、結ばれるべき相手がいるのに他に結婚相手が出来てしまうというのはやるせないじゃない??その結婚相手との子どもを作ることが位の高い男性の一番の仕事になってしまうところとか、結ばれるべき相手をとおしてその人を見ている視聴者としてはもう、一番あってはならないような気がするんですよ。

そういうスリルを手に汗握り、どうする、どうなる、王様!!!???って刮目しちゃうじゃないの!

leira3mitz37.hatenablog.com

 

「雲が描いた月明かり」に関してはヤケクソ結婚式とかすったもんだありましたね。この作品とちょっと共通点があって、イケメンの剣士が出てきます。

この作品でのイケメンの剣士はCLAMP先生が描きそうなストレートロングヘアの美男子で、胸に秘めた思いが切なげで大変よろしい感じ、でも一番に思い浮かんだのはファイアーエムブレムナバールでした。

CV子安武人さん

 

こと朝鮮の王宮に関しては何が起こるかわかったもんじゃないから王様も巫女もまわりの人達の命も心配なのでヒヤヒヤしながら続きを読もうと思っているんですが、誰が味方なのかも分かりづらい。明(ということは時代設定は1600年より前かも…朝鮮出兵より前かな、そんな匂いがしないから)出身の道士とか、巫女の後見人みたいな凄腕の巫女ババアとか曲者が多い。そんな中でナバールのような剣士の義理のお母さんだけは信じられる感じの存在なので、そこも見どころです。

 

湿っぽい話しは苦手なんですが、この作品は読ませるなあ。本当に面白い。ドラマは見たことがないのですが、先に本を読んで良かったみたいです。

王様とヒロインはおそらく同じ目的に向かって謎解きをしているはずなんですが、どちらもお互いの狙いがわかってないからどこかしら足を引っ張り合っているというか、お互いにお互いの身を危うくしているところもあってあちこちに撒菱があるみたいにいろいろ心配です。

 

とりあえず王様とヒロイン頑張れ!!ババアも頑張れ!(たぶん味方だろうから)

 

2024/05/26 読了

オペラのようなお話でした。劇的な悲劇、劇的な真相、劇的な(犠牲の多い)大団円、ラストは主人公二人が高らかに歌でも唄いそうな。

 

犠牲の中で最後の最後まで救いがあったのが良かったのと、人物像の描写にブレがなくて、ヨムの鈍感さ、王女の愚かさと純粋さなど、それゆえに起こったあれやこれや、ずっと変わらないからこその物語なんですよね。

 

すごく丁寧で誰に対しても公平に書かれているから面白かったなあ。

血なまぐさいメロドラマと、日本の平安時代に通じそうな呪いと祈りが混ざっていて、王室のしきたりなども面白かったし読み応えがありました。

ドラマ見てないけど原作で満足かも。ヨムとウンを演じた役者さんは確認したい。王様は知ってるから大丈夫!

 

読んでいる間「美しさは罪」ってずっと思ってました。この作品の根底にあるものかも。