夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

23022 凪良ゆう「美しい彼」 感想

最初の十数ページを読んでいて私は自分の心の中にいる五飛に話しかけていました。

「五飛、教えてくれ。この二人がどうやったら恋人同士になるんだ…陰キャのパシリと俺様系スクールカーストのトップなんてバッドエンドしか思い当たらないじゃないか、教えてくれ、五飛!」

そうしたらねえ、五飛が教えてくれたとかじゃなくて自分でたどり着いたんですけどねえ…(ガンダムW Endlesswaltzでも五飛は教えないはず)

 

ああ、性癖がもう、ガッチリと合ったんですね!?って。

 

陰キャでドMで超苦手なタイプの人が主役で語り手なのは前から知っていたので、こりゃあ私は合いませんなあと思っていたのですが、作者がいまは飛ぶ鳥落とす勢いの凪良ゆう先生でいらっしゃって実写版がえらくいい感じなので今日、出来心で読み始めたんですよ。前から買ってはいたんです。

 

そうしたらね、わかってはいたんですけど夜更かししちゃいますねえ。最後まで読んだのですが、この二人本当に面白い。

謎めいたところがあった清居くんですが、アンサー編ともいえる清居目線のパートでわかるんですね、こりゃあ重度のツンデレだと。

 

陰キャで鈍感で無駄に繊細なのか図太いのかわかんないドMってあっちのほうはすごいというのはなんか別の作品で指摘されてたような気がする、あ、「赤と白とロイヤルブルー」で、「やっぱり、大人しそうな顔をしている人にかぎって、やることは激しいのよ」ってセリフだった。面白かったからメモってた!

 

この作品を読んで私は思い知ったんですがね、自分の中の新たな性癖というか萌え要素に気づきましたね。

高校の卒業式で一旦お別れして音信不通になり、大学に入って少し経って再会しちゃうというシチュエーションに、無駄に萌えますね。

広くて人口が多い東京なめんなとも思いますけどね、東京は再会できちゃうんですねえ…

 

高校時代のあれやこれやは本当に胸糞案件で、これだから平成のスクールカーストは…(令和は知らんけど、創作上ではわりと酷いことはない、コンプラ的にうるさい世の中だから)と思いながらも、ドM陰キャが王様のモンペゴリラになる瞬間に感動すら覚えました。

 

私、あんまり日本人作家が書いたBL小説を読まないのですが(翻訳だってそんなに読んでない)、ボキャブラリーがいろいろあって、知らない言葉もあったんですが、あまりにもふさわしい単語だから「ああ、あそこのことね!」とわかっちゃって察しがいい自分がお恥ずかしいやら楽しいやら。そういったものを丁寧に活用して美しく激しいドスケベな描写がされていて感激しつつも敬服しました。

スティーヴン・キングの強烈な暴力描写あふれるホラー作品を読んだときも思ったけど、覚悟がないと面白くて人を惹きつける小説は書けないですね!

 

これは人気があるはずだわあ…ここまで気持ち悪いと突き抜けてるよね、と思わされる攻めとそんな攻めにズブズブとハマる受けという関係性が出来上がるまでを丁寧に、本当に丁寧に書かれていて、本当、満足しました!続きももちろん読みます!ありがとう!