夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

23001 アンディー・ウィアー著 小野田和子訳 「プロジェクト・ヘイル・メアリー」上巻 感想

読初(よみぞめ)。なんと、わしらの大好きな星野源さんも絶賛なんですよね。

未知の物質によって太陽に異常が発生、地球が氷河期に突入しつつある世界。謎を解くべく宇宙へ飛び立った男は、ただ一人人類を救うミッションに挑む! 『火星の人』で火星でのサバイバルを描いたウィアーが、地球滅亡の危機を描く極限のエンターテインメント

最近テッド・チャンの「あなたの人生の物語」を読んだばかりなのでそこに通じた部分もあったり、下巻の表紙カバー見返しの出版社に寄る惹句にあったようにジェイムズ・ティプトリー・Jrを思い出すところもあり。圧倒的な危機を前に世界中が一致団結するのはどこかでも読んだ。「幼年期の終り」はちょっと違うか。

…と書くと、各作品を読んだ人にはネタバレですが、各作品を読んでいる人はもうこの作品を読んでいるはずですよ。私が遅かった。

実は80ページあたりまで読んでいたのですが、主人公の置かれた状況がわりと過酷で、「火星の人」もかなり過酷だったけれどこちらのほうが過酷なうえで出てくる専門用語などが超絶理系で難しかったから一旦閉じちゃった…あと私、閉所恐怖症だから閉鎖空間苦手なんだわ。

 

でも超絶理系ながら、バカな私にもわかりやすく割と説明してくれているんですよ。しかも主人公が「火星の人」のマークばりに好感が持てる。作者が陽キャなんだろうな、性格が良くて楽しい人なんですよ。まっとうで良識的な科学オタクって感じ。

上巻最後まで読んでいたら高校の頃に習った化学の知識が思い出せるようになってきます。どういう理由で地球が危機的状況に陥り、なぜ主人公がその対策の中枢的なポジションで活躍することになったのか、そしてなぜいま地球から遠く離れた場所で一人きりなのか、それが途轍もなく面白い構成で読み手に開示されていくのでちゃんと集中力があってこういう作品が好きだったらページを繰る手が止まらないってことになるんでしょうね。

 

私のエンジンがかかったのが「ロッキー」が登場してから。あんまりネタバレを踏まないようにしていたけどチラッとどこかで見たような気はしたんですよ。でも物語の展開的にそういう方向に持っていくのはズルいなあ、どういうことなるんだとうっすら思ったりしたんですけど、ロッキーとの出会いから関係性の構築までお互い運が良かったというねきか、いやはや。

でも主人公の性格が良くて、ロッキーにも可愛いところがあるのでこの僥倖がそこまでご都合展開にも思えないんですよね。

あなたの人生の物語」に似た会話の成立も、えらいスピードが速いし言語学の天才でもあるまいにとも思うけど賢いもの同士で合理的な会話手段を開発したと思えば…めっちゃスピードラーニングやで…とは思うけど、必要な展開ではある。

 

この出会いが地球を救うことになるのか、ロッキーの存在が私にはすでに切ないんだけどロッキーの運命やいかにとかいろいろ思うところはあります。とっとと続きを読みましょう。