夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

20010 チャーリー・ジェーン・アンダーズ「空のあらゆる鳥を」

1ヶ月半かかりましたわ。そりゃー読んでない時間のほうが圧倒的に多いけども。

魔法使いの少女パトリシアと天才科学少年ローレンス。特別な才能を持つがゆえに周囲に疎まれるもの同士として友情を育んだ二人は、やがて地球と人類の行く末を左右する運命にあった。しかし未来を予知した暗殺者に狙われた二人は引き裂かれ、別々の道を歩むことに。そして成長した二人は、人類滅亡の危機を前にして、魔術師と科学者という対立する二つの秘密組織の一員として再会を果たす…。ネビュラ賞ローカス賞・クロフォード賞受賞の傑作SFファンタジイ。

起こる終末が本当に起こりそうなのです。気候変動が生活に影響を及ぼし、大災害で都市が壊滅状態になる。復興より壊滅のほうが多くなるとどうなるかとか。

スピリチュアルなものとAIって意外に親和性があるのかもと思わせる展開もあり、魔法VS科学、魔法+科学という図式が主人公二人の関係性から描かれるのだけど、物語の半分くらいは主人公二人は大人や社会から異常で理不尽なくらい抑圧されていて読むのが大変でした。特にパトリシアの方は姉がクレイジーでえげつない。周りの学生も敵。そしてローレンスも決して味方というわけではなく、自分で自分を守るのに精一杯という感じで物理的にもヒリヒリした展開が続きます。ええ、物理的に。

 

おもしろいかどうかと問われると、着想は面白いしモチーフも嫌いじゃない。反重力も魔法も好きだけど、料理の仕方があんまりうまくないというか、旨味が足らないというか。

主人公二人がそんなに魅力的じゃなくて、ひどい目に遭っていても心配とか守りたいとか頑張れじゃなくて「まあ、遭いますよね」って気持ちになるの。抗いはするけど子どもがいかに非力かを思い知らされる。それに対しての要領が悪くてちょっと卑屈で、周りの学生と大人の誰一人として彼らを助けないのも現実的ではない、物語としてそういうほうが盛り上がるっしょって扱いな気がして。彼らを助けるためのロープというものは美味しいときに登場するんだけどそれより前にもなんとでもできたやろ、と疑問に思ってしまう時点で物語に入り込めないのよね。

 

大人になってそれぞれが一角の人物として成長しても、やっぱり人との距離のとり方が下手くそなんだけど今どきの大人あるあるのこじらせているのがこの二人はどの道程を辿ってもなんかこじらせていたんじゃないの、って思える。そしてオチまでの成り行きもこじらせからの真摯な向き合いって、こじらせの王道という最近よく見るスタイルなんだけど胸が熱くなるものでもなし。それより「大人はこうやってる」ってのを下敷きにして動いたみたいに見える。なにもかもおぼつかない、能力があるだけって。

こういう人たちが世界の命運を握るのね、まあそういうものですよね、って冷静な気持ちになりました。

面白いかどうかは人によって違うだろうけれど、私もまたこじらせているようで大人とは要領よく渡り合ったところもあったので

「こいつらヘッタクソやなー」

って思っていました。

大人になっての他の仲間達もそうなんだけど、圧倒的にコミュニケーションが足らない。話し合わないうちに相手の重要なものを破壊したとか誰かを殺すとかやってるものね、そんなんで世界が救われるわけがないわ。

 

自分には合わないのによう最後まで読んだな…