夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

プロミシング・ヤング・ウーマン(映画) 感想

めっちゃ見たかったやつ。

キャシーは、ある事件で医大を中退し、今やカフェの店員として平凡な毎日を送っている。
その一方、夜ごとバーで泥酔したフリをして、お持ち帰りオトコたちに裁きを下していた。
ある日、大学時代のクラスメートで小児科医となったライアンがカフェを訪れる。
この偶然の再会こそが、キャシーに恋ごころを目覚めさせ、同時に地獄のような悪夢へと連れ戻すことになる……。

去年のアカデミー賞にノミネートされたときにトレーラーをチラッと見て、これは見ようと思ったきりすっかり忘れていたらアマプラに入っていました。

 

キャリー・マリガンが演じるキャシーが被害者で復讐するのかと思ったらそんな単純な話ではなく、親友の復讐であり、泥酔した女性に性暴力を働こうとする男や女性ってだけで性的な暴言を吐く男に思い知らせようとする話で、じっくり見入ってしまうサスペンスでありました。

正直言ってこういうことをやってみたいってことはチラッと思いはするし、世の中のこの映画に出てきそうな愚かなことをやりかねない男性たちに見てほしい。いっぱいいるもんね!!

 

亡くなった親友は同性にすら味方になってもらえず絶望して亡くなったことになってるけど、一緒に医大を中退したキャシーに対して道連れにしてしまったことはなにか思わなかったのか、そんな彼女を解放したくて自分は死んだのではないかとか私は勝手に思ったのだけど、そういう想像の余地があるくらい亡くなった親友に関してはほとんどキャシーからしか語られない。母親はちょっと出てくるけど、彼女はキャシーが過去にとらわれていることから解放しようとするし。親友が本当はどうしたかったのかは遠回しにしかわからないから、親友のために復讐するというより理不尽な事件で親友を失ってしまった自分のためにってのもありそう。

キャシーの本名というか正しくは「カサンドラ」という名前なのもね。

 

どんなシーンもなにが起こるかわからない不穏さが漂っていて、キャシーの部屋の甘くて美しい内装も、勤め先の白い壁にペールブルーの装飾にキャシーが身につけているものがピンク色だったり、本来ならそこに女性がいるって素敵で雑誌に載りそうなのに、キャシーがわりと可愛い服を着てそこにいるとなんだか怖くなる。これってナタリー・ポートマン主演の「ブラックスワン」を思い出すんですよね。薄いグレーとかペールブルーにピンクって「女らしさ」のある女性を彩るのに向いているのだけど、か弱さが際立ってちょっと心配になる色使いになる。隙があるように見えるんですよね。

 

彼女の選択は危なっかしさがあるけれどやっぱり医大に行くくらいだから賢いし、情けもあるから根っからの復讐鬼ではないのですが、私も彼女とともに人に対して絶望してしまいました。まークズの描き方がうまいし、役者さんもうまい。

でも2日連続でお見かけしたアルフレッド・モリーナは出番は少ないけど強い印象を残しました。やっぱり好きだわ。

 

サントラがすごく良くて、ブリトニー・スピアーズの「TOXIC」をバイオリンで奏でるのはめちゃめちゃ狂気をはらんでいてスリルをもりあげていました。この曲知ってるわ、TOXICやんてわかった瞬間スッキリ。

この映画で一番のスッキリポイントはこれとセクハラ暴言を吐くバカ男のピックアップトラックを傷つけるところかな。実際は犯罪になるからなかなか出来ませんて。

 

出てくる男性の多くが泥酔していたと思っていたのにいきなりシラフで真顔のキャシーにビビるんだけど、セクハラ暴言を浴びせられて真顔で見返したらあんなにビビるもんなのかな。なるか。パワハラ暴言に真顔で見返したら相手が怯むことはありましたね。自分のほうが優位に立っていると思っている相手に無言で強気の雰囲気出されたら怯むよね。

 

キャシーがかなり強くてあまり暴力じゃないやり方で憎い対象を倒すけれど、現実では彼女のような罠のはめ方をしても無傷で済むとは思えない。夢のような復讐劇でもあります。でもスッキリ気持ちよく終わりってやつじゃなく、不穏さが一気に形になって、後味は悪いやらいいやら。

地獄を味わわせて殺すより生き地獄をずっと味わわせるほうが復讐としては強いよね。

キャシーがアルになにをしようとしたのかよくわかんなかったけどドラゴンタトゥーの女でリスベットがキモい奴にやったリベンジと似たようなやつかなー。彼女の本来の復讐が見たかったです。

 

かなり痛々しいので見るには覚悟がいるけど、めっっっっちゃ面白かったで。

トップガンでマッチョな男たちに寄り添っていた娘さんたちが男性目線の都合のいいイメージなら、そういうのにムカついてきた娘さんたちの本音がこっちだと思う。都合の良いように身を処す人だっていて、それが悪いとは私は言わないけれども(言う人もいるね!)。それが大学の偉いおばさんだったり、同級生でスルーしてた人だったりするんだろうな。