デヴィッド・フィンチャーが大好きで原作があるのかないのかわかってないのは原作読む読まない問題が絡まないのでありがたーい、と、公開されてすぐに見ました。(アメコミが原作らしい)
ストイックな仕事をしながら心のなかでクールに御託を並べる割にしょっぱなからしくじるので、まず成功するところを見せないんや!新しい!とちょっと笑ってもーた。
暗殺者なり監視者が標的を狙うために張り込むところはどうしても私は銀魂の山崎のパンまつりを思い出してしまうんですけどね。
しくじるところも、いまがチャンスなのにそこで出来ないのことからタイミングを見誤るのが人としてありそうなので、いかに強そうなヒットマンでもそんなもんなんだろうなあという、フィクションなのにリアルを感じてしまう。
そしてリアルであったら、どれだけ儲かってもなんて割の合わない仕事なんだろうなと見ている間中ずーーーーーっと思っていました。
いま話題の集団強盗もだけど、お金儲け系犯罪は割に合わない。庶民の平穏は得られないじゃないですか。私だったら嫌だわあ。
割と真面目に淡々と報復の報復をしていくという展開で、派手さはそんなにないような気がしましたが、荒々しいアクションシーンが長くて場面の暗さにどちらがどちらなのかわからないのが主人公に感情移入していればハラハラする感じ。感情移入とかしなかったら「長いな」と思う。私はわりと後者だったけどファスベンダーが頑張ってたからそこは頑張れーと思っていたかも。凄腕の暗殺者無双ってことはなくて、容易い相手は容易い理由があり、苦戦する相手には苦戦するのもちゃんと理由があるのがリアル。
だからティルダ様の落ち着いた穏やかな反応は逆に不気味で、どうなんやろと思ったり、クライマックスのはずのじいさんに対する処し方の意外さも、これまでの狙われた殺し屋のカウンター無双映画とはちょっと味わいが違う気がする。何が起こるのかわからない怖さをはらみながらも、説明はほとんどなくお話が進んでいって無駄がないのは好き。
殺し屋なんてお金が絡まないと出来ないのを突きつけるように、お金の話ややり取りが都度都度シーンに織り交ぜられているのが印象的でした。自分の痕跡の消し方が丁寧なようでざっくりしていてやたらその辺にポイポイ捨てるのが面白かった。
自分に言い聞かせるように自分なりの殺し屋の掟のようなものをずっとナレーションで語るのだけど、そのたびに本当はブレているから言い聞かせている感じもある。想像の余地がたくさんあるのもいい。
気持ちいいとか良くないとかなく、エンタメ色もうすい、上等で丁寧に作った殺し屋の後始末を見たなーという感じです。
淡々とした殺し屋系映画といえば「ザ・コンサルタント」もそうだったけどゴリゴリの体をパッツンパッツンのスーツで隠したつもりのベンアフも面白かったけど細マッチョのファスベンダーがほぼ無表情でテキパキ動き、動揺するときは息遣いでお知らせしてくれるのも良かったです。
シリーズ化するのかどうか知らんけど(それより「ソーシャル・ネットワーク」の続編があるなら見たい)割りと予算を抑えた感じがあるのでまたいけるかも…
本当、賢い人が作ったんだなあというのがいつもわかるから好きです。