夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

「君の名前で僕を呼んで」(映画・ほんのりネタバレあり)

これは夏に見たほうがいい映画なので、なんで春に公開しちゃったのか、私は今の時期に上映している映画館を探して遠路はるばる見に行きました*1。 

1983年、17歳のエリオ・パールマンティモシー・シャラメ)は、今年も両親と共に北イタリアの別荘で一夏を過ごしている。エリオは、アメリカの名門大学で教鞭をとるギリシャ・ローマ考古学の教授と、何ヶ国語も流暢に話す母親の一人息子だ。アカデミックな環境に育ったエリオは、他の同年代の子供に比べて、文学や古典に親しみ、翻訳(英語、イタリア語、フランス語を流暢に話す)や、音楽の編曲を趣味にする(ピアノとギターを弾く)など、成熟した知性豊かな子供に成長した。

毎年パールマン教授は、博士課程の学生を1人、アシスタントとして別荘に招待する。今年やってきたのは、課程論文を執筆中のオリヴァーだった。エリオは、自信と知性に満ちたオリヴァーを、はじめは嫌厭するものの、徐々に彼に対し抑えることのできない感情に駆られていく。『君の名前で僕を呼んで』は、そんな2人に与えられた6週間の、情感と情熱溢れる恋模様を描き出す。

 

ちょっと待って…吹替版は入野自由くんと津田健次郎さんのカップリングなの…?

自由くんとツダケン!!??

おいおいおいおいおいおい

キャスティングした人天才かよ…

 

アンニュイで知的で育ちのいい美少年と知的でモテそうな美男、しかも舞台は北イタリアの水の豊富な田舎の別荘(プールが歴史の有りそうな石造りで周りはアプリコットがたわわに実る果樹園、地元の使用人がとてもいい存在感)、美少年の両親は独特で懐の深そうな知性あふれる仲良しカップル、女の子には困ってない感じ。

こういうところで夏を過ごせばそりゃあ、ときめく恋も美しかろうて…って、日本の蒸し暑い灼熱の夏の中にあって思います。

 

ある程度ユダヤ教を知っていると入っていきやすいかもしれない。ハヌカーとかダビデの星とか、そのくらいの程度ですけど。*2

ティモシー・シャラメのことは全然知らなかったのだけど、いまこのときだけの体つきと雰囲気が存分に際立っていて魅力的です。時間が経過するとともにどんどん美しくなっていくので、もう一度彼だけを見て物語を追いたい気分。ポーの一族エドガーっぽさがある。性格はぜんぜん違うけど。

アーミー・ハマーは超大好きな映画「ソーシャル・ネットワーク」でウィンクルボス兄弟を演じていたのが本当に好きで。三白眼気味の物憂げな目つきとか雰囲気も良くて、今回の知的な役もハマっているし、無言だけど表情でなに考えているか必要な時はわかるところに惹かれます。特に列車の中から窓越しに見えたあの顔。

 

若いときにしかできないかもしれない幻のような恋、お父さんからのメッセージ、主人公がとても大事にされているし自由にさせてもらっていて幸福な感じ、親は知性があって器がでかいに限るなあ…と、本筋とあんまり関係がないようで重要な部分についても考えさせられたり。

イカップルの親戚を歓迎して迎え入れるシーンがあったからすごく期待したものね。

 

ふたりがああなってこうなるまでが結構繊細にじわじわと描かれていて、割と赤裸々で生々しい表現もあるにはあるけれど、私はなんなんでしょうかね、西洋人の血が混じっているし、昔から奔放だからか、全然平気だけど*3、同じ時間に見た観客がふたりが夜中に会ってああしてこうするシーンで立ち去ることがありました。つーか、見に来ていた人が途中で我々以外全員帰っていた…こわっ

 

ええと、この映画をなんだと思って来たのかしら…事前調査なし?私もぶっちゃけそんなに事前調査してなかったけど、まあなにがあってもいいやって感覚でした。

 

私、夏が苦手なのは虫がいっぱいいるからなんですけど、この北イタリアにはあんまり虫がいないのかな、そのへんの鬱陶しさが全然なくて外でも過ごしやすそうで、私が理想に描いても絶対に享受することはないであろう夏の過ごし方がされていたのだけど(水べりで本を読んでふやけても全然平気とか、絵にはなるけど私には無理)、冬のハヌカーで暖炉べりでハエがいたのにびっくりしました。あれ、演出なんだろうけどなんでハエ?高度すぎて私にはわからん。(考察ブログ読んでなるほどーって思った。虫嫌いとしてはもっといい暗喩はなかったのかと思うけれども)

 

表現はソフトな方で、どっちが右か左かもわからないくらいだし同性愛的表現が平気とか好きな人でポジティブな性格の人なら耽溺出来るのではないでしょうか。

私はたぶんこれは何回でも見られる。

夏を気持ちよく過ごしている映像作品って好きで、トラン・アン・ユンの「夏至」とかも大好きでDVD持っているくらいで。

夏至 特別版 [DVD]

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原作はこの映画の先まであるらしいし、映画も続編に意欲的らしいので(なんか不穏だけど)とりあえず原作を買いました。

君の名前で僕を呼んで (マグノリアブックス)

君の名前で僕を呼んで (マグノリアブックス)

 

 Kindleで。

 

君の名前で僕を呼ぶくだりとか甘酸っぱい、なんともロマンティックでね。

あの辺りから壮絶に美しくなっていくのよ、エリオが。

彼シャツ欲しがったり着たりするの可愛いよね…

 

というか、なんで同性同士だといけないんだよ!(机を拳でなぐる

でもダメだって思っているからこそ叶うと美しくて楽しくて幸せなのかな(床にのの字を書く

 

という気持ちの繰り返しです、ここのところ。

 

世の中の誰もが、自分の好きな人を胸張って好きだと思えるような世の中になればいい(でも行動を伴う不倫はアカンでー

 

 

この映画を見たらソーシャル・ネットワークも見たくなるので、映画より8年若いアーミー・ハマーを見ました。つくづく、知的な映画が似合う。あと、オールバックにしたら1920年代の美しい紳士の雰囲気がある。J・エドガーではゲイで相手役がディカプだったけれど、あれを知っているからこの作品も期待できたわけで。そして期待通りでした。

 ↓老けメイクが微妙なんだけど身長的にでかいカップルで迫力あります。

J.エドガー (字幕版)

J.エドガー (字幕版)

 

 

 

 

ジェイムズ・アイヴォリーさんありがとう…90歳手前でこんな素敵な作品を脚色してくれてありがとう…

 

そのつながりというかなんというか、たまたまですけど、こちらも買いました。

モーリス (光文社古典新訳文庫)

モーリス (光文社古典新訳文庫)

 

 学生の頃映画も見たんだけど、その頃って本当に綺麗な男性同士しか嫌やなーってひどいことを考えていたので、ヒュー・グラントの相手役というか主人公がそうでもなかったからそれほど盛り上がらなかったような気がする。確実にいまより見る目がない、私。

アナザー・カントリーは見たかどうかあんまり憶えていない。

モーリス

モーリス

 

 ちなみに真ん中の男の子は「SHERLOCK」のレストレード警部ですよ…

 

 

この映画でのエリオの仕草、オリヴァーの物腰と目つき、吉野朔実先生に見てほしい映画だなと思いました。本を読んだり楽譜を作っているシーンとか。見たらきっと何か描いているような気がする。特にエリオを見ていて既視感があった。伏し目がちに本を読むところ、本を持つ手。私が憧れている何気ない仕草でした。

夏の暑いなか本を読むシーンとかなにか書いているシーンがときどき目につくのよね。

 

 追記。

私は1983年が舞台のお話に対してなんの違和感もないし欧米文化にもわりと馴染んでいるのでふつーに「君の名前で僕を呼んで」の作品を楽しんだのだけど、ゲイのカップルを「ソニーとシェール」と表現するのもふつーに流したけれど、ある程度年配で洋楽とかに知識がないとわけわかんねーのかと気づいた。ソニーとシェールのヴィジュアルとセリーヌ・ディオンとその夫との組み合わせのヴィジュアルを混同しちゃうけれど。

シェールを初めて見たのは私は「月の輝く夜に」ですけどね。すっげえ顔!って思ったの。ろくちゃんはそれより前に歌声から入ったそうです。すげー声よね。

*1:嘘。地元に近い映画館でたまたまやっていた。すごく見たかったから超ラッキー

*2:しかし私は幼少の頃ユダヤ教を知らないうちに布教されていたので旧約聖書とかもある程度頭に入っていたりな…

*3:パンツかぶったりアプリコットがひどい目に遭うシーンとか