夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

009 ダシール・ハメット 「ガラスの鍵」

(昭和生まれのお約束)「ハメットさーーーん」

ガラスの鍵 (光文社古典新訳文庫)

ガラスの鍵 (光文社古典新訳文庫)

 

 雑なあらすじ:賭博師ネッド・ボーモントは親友で街の顔役のポール・マドヴィックに地元の上院議員の後押しをしてその娘と結婚すると打ち明けられるが、その直後に上院議員の息子が殺され、その容疑がマドヴィックにかけらる。彼の容疑を晴らすために事件の解明に立ち上がるが…

 

一介の賭博師のわりに幅を利かせすぎボーモントがポール・マドヴィックと親友ぶりを見せつける冒頭、その母親と若く、殺害された青年と「いい仲」だった娘(つまり親子が上院議員の子供2人と、ってややこしい関係)とも懇意にやっているので幼馴染レベルの歴史ある仲かと思えば、出会って1年…

 

でもボーモントのポールへの献身ぶりは見事なもので、対立している集団に罠にかけられても拷問されても、ポールと仲違いしても彼を信じて真実を追求しようとします。

ボーモントは作中でえらくモテモテで夫がそばにいるのに溢れ出すエロスが止まらない女性までも籠絡したり。それでも特に女性に頓着していないあたり、これがハードボイルドっていうか…こいつ、ポールのほうが好きでしょ、って感じ。

 

割りと先が読めない展開で、筋書きを読もうとしたら全然ちがうことになって心配になる感じが面白く、ポールの母以外の女性が揃いも揃って感情に振り回されがちで共感できないくだらない人として描かれているのもむしろ面白く、大好きな1920年後半の雰囲気も相まって後半は一気読みでした。

電話での会話のシーンも当時としては斬新だったかもね。一方的なおしゃべりしかわからないから相手の反応は電話をしている側のセリフからしか読み取れない。

 

うちの父親が大好きなジャンルで、「マルタの鷹」も作者の名前も子供の頃から目にしていたけれど読んだのは初めて。

割りと面白かったなあ、ってくらいの感触ですが、頭のなかにずっとあったのは「出会って1年でこの仲の良さ…」でした。

BLまではいかないけれど立派なブロマンス小説かもしれない。オチがひどいけど。