2週間前にAmazonでレンタル100円のときに借りたんですけど、わりと見ないまま忘れてしまうのでこれはちゃんと見ました。
オレたちは待っていた、“何か"が起こる日を。
「I'mAlive! ! 」とジョニー・サンダーを歌いながら車を飛ばしていく青年、ウォーレン(エヴァン・ピーターズ)とスペンサー(バリー・コーガン)。廃棄された食べ物を盗むことで最小限のリスクを楽しむ、そんなどうしようもない毎日だ。
くだらない日常に風穴を開けたい、特別な人間になりたいと焦がれる2人は、大学図書館に貯蔵される貴重な本を盗み出す計画を思いつく。手に入れれば1200万ドル。
誰よりも自由を求めるウォーレンと、スペシャルなことを経験したいと願うスペンサーは仲間集めを始めることに。
目をつけたのは、FBIを目指す秀才エリック(ジャレッド・アブラハムソン)と、当時既に実業家として成功を収めていたチャズ(ブレイク・ジェナー)。
彼らは互いを『レザボア・ドッグス』に習い「ミスター・ピンク」「ミスター・ブラック」などと呼び合うのだった。
強盗作戦決行日、特殊メイクをして老人の姿に扮した4人は遂に図書館へと足を踏み入れる――。
そこで彼らを待ち受ける運命とは?これは、刺激を求めて道に迷ったアメリカン・アニマルズ達の物語。
このジャケットのような扮装はしないのよね。いつするんだろうって見てたのです。
実話で、実際にこの犯罪を起こした本人たちもコメントしながら事件の成り行きが語られるのですが、それぞれの発想や懊悩、実行する様子が細かく表現されていて、お互いの証言の齟齬も正確に表現しているけれどその扱いも丁寧でした。
何者にもなれないことにもやもやを抱えている世代なんだろうけれど、目の前にあるでかいお宝を映画のように強奪して売りさばこうとするには地に足がついておらず、ご自分たちが振り返っても杜撰すぎたと思うんじゃないかな。
でもテンションとか熱狂が制御できず、突っ走ってしまった(大半は勢いに呑まれたというか巻き込まれたというか)結果、事件が起こってしまった。
どの経緯も稚拙でいい加減なんだけど(作ったジオラマとフィギュアは精巧)それでも成功すると信じたのかダメでもなんとかしたかったのか。一人だと踏みとどまれてもグループだとそうも行かなくなるものだなと思いました。
狙うブツがでかすぎたから捌くのも大変なんだけど、素人だからそのへんもよくわかっていないうちに大丈夫だと思う。実際盗んでしまった後の振る舞いも狼狽が過ぎて杜撰で、そらー捕まるわ、自分ならもっと上手くやる…とどのくらいの視聴者、観客が思ったかわからないんですけど、そう思っちゃうって危険なのよね。
彼ら(主に首謀者)も映画からヒントを得たり影響を受けて安易ででかい山を狙ってしまった。人はこうやってフィクションの影響を受けていくんだなって。
実際に犯罪を起こした人がその時にあったことや思いを合間合間で語りながら、その人達に相当する演者が再現するかのように演技をするんだけど、見た目に共通するところはあったりなかったりするのに不自然に感じなかった。首謀者にあたる青年を私がX-MEN(マカヴォイが出るほう)で惚れ込んだエヴァン・ピーターズが演じていて、かなり無謀で愚か者なのにぐいぐい雑に引き込んでいく魅力があります。ご本人もなかなかハンサムだけどちょっと怖い気がしました。更生しているらしいからそれは私の先入観なのだと思うけど。
かなりヤバい話なのについ乗っちゃうしご本人とのギャップも薄い。相変わらず素晴らしい存在感。演者の人たちはみんな上手でしたが、今の自分への焦燥感や犯罪を行うに当たってなにを恐れ、でもやらずにいられなくなり後戻りできなくなっているのかが伝わってきます。
白眉は一旦頓挫したときと自分はやらないと断った時の解放感のくだり。人はやってはいけないことをやらずに済んだときにとても楽になれるのだとこちらにも伝わってくる。
でも成功に賭けちゃうんだけど。
あんな杜撰なことでとても大事な本をよくも狙ったなって、呆れる雑さだったのに。
狙われたオーデュボンの本は抄録の本が最近出版されて欲しいと思っていたやつで、本物はとんでもないお値段だとは知っていたのですが、この作品で狙われたものだとは知っていたような知らなかったような、そんな感覚。
彼らが素手で雑に扱うのを、その部分はフィクションながらヒヤヒヤしながら見ていました。種の起源の初版本も。あんなふうに扱いやがって…馬鹿野郎どもめ…
だいたい本は書いてあることが重要なのでページを安易にめくるべきではないような価値をつけてほしくないけどな。初版本だろうが何刷だろうが本は本よ。読めなくてどうする。
そんなことを思いながら事の顛末を見守りました。犯罪って、成功させるのが難しいんだからやらないに限るわ。