夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

リー・バーデュゴ 「太陽の召喚者」

太陽の召喚者 (魔法師グリーシャの騎士団1)

太陽の召喚者 (魔法師グリーシャの騎士団1)

太陽の召喚者 魔法師グリーシャの騎士団

太陽の召喚者 魔法師グリーシャの騎士団

ジャケ買いファンタジー。

隣国との戦いが続くラヴカ国には通常の軍隊である第一軍に加えて、〈闇の主〉(ダークリング)を指揮官とする第二軍があった。炎の召喚者、風の召喚者など、特殊な力を持つグリーシャたちの軍団。だが彼ら召喚者の怖るべき力をもってしても、〈真海〉との間に横たわり、魔物が潜む〈偽海〉を消し去ることはできなかった。太陽の召喚者が現れるまでは……戦争孤児の少女アリーナと幼なじみの少年マルの驚くべき冒険を描く傑作ファンタジイ。

設定がしっかりしているけれどメートル法が採用されているのが、我々の世界とリンクされているのかどうなのか疑問。人の名前や地名はロシアっぽかったりドイツっぽかったりと異国情緒が香るファンタジーの雰囲気がある。
自分が特別だとわかった少女の人生ががらっと変わるというファンタジーはよくあるけれど、これはそのなかでもよくある自分の運命に大袈裟に酔う感じがさほどなくて、地に足が着いている部分と翻弄されている部分がいい塩梅。それより彼女が入り込むことになった新しい環境に関する説明がしっかりし過ぎていてボリュームがあるので、ハリー・ポッターじゃあるまいしとダラダラ読んでいたらそこはSMファンタジーから官能ファンタジーまで出版したことがあるハヤカワFTだけあって、そっち方面に期待できる(期待したいのかどうかはさておき)要素もある骨太のYAファンタジーではあった。女性向けです。

少女を新しい環境へ誘う<闇の主>と呼ばれる男性が謎めいていて妖しい。少女の幼馴染のマルが精悍な美青年らしいのだけどマルへの思慕を寄せながらも権力も美貌も兼ね備えた男性にフラつくのはまあ、ええんでないの、どうなるんかいなとワクワクできますよ?
まあ、言いたいことは山ほどあるのであとはネタバレ枠で。

ちなみに三部作で続きも2作目までは出版されています。

魔獣の召喚者 (魔法師グリーシャの騎士団)

魔獣の召喚者 (魔法師グリーシャの騎士団)

この表紙、<闇の主>なんだろうなあ…

そして1作目の初版の帯の裏表紙部分の2作目の広告では、1作目をある程度読んでいたらオチが予測できるほどのネタバレがされているのでご注意を。








ここからネタバレ。
正体や思惑が判明してドン引きし、気持ちが離れてしまった後で「おまえもまんざらじゃなかっただろ?」と本命の前で暴露する男って………


ゲスい!!!


それまでの描写や美貌も台無し!しかも突き詰めたらかなりのおじいさんだし!!ようやるわ!!
と、最後まで読んで<闇の主>を思い返すと笑い転げちゃうのでした。
続きでさらにゲスっぽくなりそうなのでそこが気になります。あーもう、がっかりだよ!