夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

008 宮内悠介「あとは野となれ大和撫子」

 アラル海があんなふうになっているなんて初めて知ったわ。

あとは野となれ大和撫子

あとは野となれ大和撫子

 

 雑なあらすじ:空爆で5歳で両親を失ったナツキはアラルスタンの大統領の後宮へ入る。15年後、後宮で成長したナツキは親友のアイシャとジャミラ(not怪獣)と現大統領の演説を見物に行くが、その際に大統領が暗殺されてしまう。一気に情勢が不安定になり、国家としての存続を危惧した彼女たちは外部からの侵略から守るために立ち上がる

 

後宮と云っても女性たちに英才教育を施し国力にするという、実に合理的な仕組みになっていて閨房じゃあないのよね。その辺設定に守られている女性たちに対して「いくらなんでもお綺麗すぎるぞ設定が」と思いつつも、周りのイスラム社会じゃそれが許されないとわかっているから自分たちを守るために動くという部分もある。

 

舞台になっているのが現実で砂漠化してしまったアラル海をSF要素ありでテラフォーミングして作られた国家なのがさすがSF作家の書く作品だなと、その辺は面白く読めました。

ジャミラという名前の女性が砂漠化した土地に生きているってシャレが効いてる…

ウルトラ怪獣シリーズEX ジャミラ

ウルトラ怪獣シリーズEX ジャミラ

 

 持ってまーす

 

その土地柄でウズベキスタンカザフスタンロシアなどの影響やその歴史も織り交ぜながら、ガールパワーで国を守ろうとする姿が爽やかで軽やかに描かれているので重々しいところもサラッと読めます。それにしてもソ連ひでーなあ。

20世紀後半は異常なスピードで科学技術が発展を遂げたけれど、未熟な部分もあって見切り発車的なやり口で結果的に環境破壊を招くことも多々あり、それが公害問題だったり酸性雨だったりオゾンホール問題だったり温暖化問題だったりするのだけど、なんでアラル海がほとんどなくなったことが意外に知られていないんだろう。他の国の環境破壊は話題としてあれこれ知っているけれど(東南アジアの森林を燃やしてどうたらこうたらとか)アラル海っていまも大きな湖として存在しているものだと思っていた。

アラル海 - Wikipedia

たぶんね、私が真剣に地理を学んでいる時に教科書がグラスノスチの影響をあんまり受けていなかったのね…でかい湖がまだあるって思い込んでいたもの。

 

なんとか回復できるといいね…人間が行っていい所業と思えず、そら寒くなってしまった。

 

 

物語の動きより、お話の舞台に衝撃を受けてしまったな…