王家衛の映画は「いますぐ抱きしめたい」と「ブエノスアイレス」以外全部見ていて、ブエノスアイレスを見ていないのはもう、ずっと後悔しているの。
トニー・レオンを好きになったのは「欲望の翼」のラストの伊達男にポカーンとして以来。「恋する惑星」のおまわりさんと同一人物とは思わず。
王家衛の映画はやたらと地元で放映されるのでありがたいけど(「クラウド・アトラス」は上映しなかったくせに…)これってこの規模で全国上映して誰得なんだろう、私しか嬉しくないじゃん、ってくらいちょっと困った映画では。
この予告編で天下一武闘会を期待するかも。
でも予告編とか予備知識とか一切なしに、イップ・マンだけ「ブルース・リーの師匠だっけ。ドニー・イェンの映画見たいなー」くらいの気分で、トニー・レオンと王家衛がまた一緒に映画を作ったよ、っていうのを喜び勇んで見に行けば美しいカンフーアクションと独特の空気感と音楽の使い方、つまり雰囲気で楽しめるんじゃないかなーと思う。
そういえばエンディングですぐに立ち去った人がいたけど、カンフー映画は往々にしてそれはやっちゃいけないよ。これはだめなやつです。
ここからはネタバレを含むのでお気をつけて。
予告編を見てしまうと、ツッコミ入れ出したらキリがない。張震はトニー・レオンと一切絡まない。登場シーンもごくわずか。その代わり出るシーン一つ一つが印象的でかっこいいんだけど。亡命する直前のシーンは先端恐怖症気味の私にはもう、おっかなかった…。しかも南北のカンフーの流派の頂上決戦じゃなくてどちらかというと一人の大家の引退を巡るお話って感じ。トニー・レオンは巻き込まれかけたけど日本兵が侵略してきたのでしりすぼみに。
しかし張震のシーンって本当に必要だったのかは謎。しかしそれを云ったら「2046」にもトニー・レオン演じる小説家が書いたシーンとして深読み可能だけどただ撮ってみたけどつながらなかった感じの映像がいっぱい出てきて(SFなのが良かった)それはアリなのかなしなのか、期待させられた人によっては憤慨しそうで実際受け入れられない人もいたよねーというのもあって、王家衛に限っては今回が初めてではない。お話のつながりとか綺麗なまとまりとかあんまり求めてはいけない監督なので、本当になぜこれが全国ロードショーなんだろ、って疑問。タランティーノですら地元のシネコンで公開されなかったのに…
一部では時代が時代なので政治的なあれやこれやを勘ぐるかもしれないけれど、時代的には事実だろうし、伝統ある素晴らしい武芸の世界に無粋な他国が絡んでご迷惑をかけるのは、ほかに題材を変えるとどの国もその時代の前後では似たことがあったし、本来は中国人であったイップ・マンが香港に渡航後、中国には帰られなくなったことで遠回しに大戦後の中国の体制がアレなのも描写しているし、その辺の視線はただ時代を見据えているように受け取れた。張震は台湾人だし。深読みさせたいなら来日して宣伝なんかしないと思う。
チャン・ツィイーのことはそんなに好きじゃないんだけど(マギー・チャンとコン・リーが好き)これは彼女がひたすら美しい映画だった。イップ・マンより人物像をかなり掘り下げられていたし、お付きのおじいさんと猿がまた魅力的。イップ・マンを出さなくても良かったんじゃない?ってなくらい。ヘアスタイルとか衣装に常に女らしさを彩りつつもストイックな強さでその流派最強とされる男たちと互角に渡り合うのは、私が小学生の時にこの映画を見ていたら迷いなくその道の門をくぐっていただろうな、と思うほど華麗だった。カンフーやってる姪っ子に見せたい。
カンフーのシーンは華麗。贅を凝らした妓楼といった屋内やプラットホームなど、舞台はグリーン・デスティニーの中国四千年の美しさとは対照的な場所を選んでいて雨や雪で空気の流れを演出している。でも雨や雪多すぎとも思う。
王家衛の映画は他もそうだけど完全版とか続きがありそうな、大きな作品の断片的な部分を見せてる感じがありありなので、張震がなぜ白バラ理髪店で世界一怖い理容師さんになってるのか細かく知りたい。それ以外はもう別にどうでもいいんだけど。
所々で全員ドヤ顔の集合写真めいた止め絵のシーンがあって、そのなかでも白バラ理髪店の面々が本当に異様で可笑しい。
マドンナの「American pie」のPV的な感じなんだろうな。日本の映画ではあまりなさそうな演出。
トニー・レオンとカンフーってピンとこないんだけどHEROでも演じていたっけ。もう1回見てみよう。あの時はドニー・イェンがアクションは一通りもっていった感じの印象だった。思わず誰か調べたもの。やっぱりドニー・イェンのイップ・マンも見た方がいい。
ジャッキーのせいでカンフー映画にエンタテイメントというか笑いを求めがちなのでガチなのは特に多く見ていない。なにしろ、一番好きなのは「ミラクル」だもの。
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なんで死んだのー?って悲しみについてはまたいつか。