夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

旅する料理 イタリアから世界へ(映画)(ドキュメント)

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旅する料理

アルゼンチンで制作されたのでアルゼンチンとアメリカ目線での移民によるイタリア料理の広がりをテーマにした1時間ちょっとのドキュメント。

 

Netflixは料理系のドキュメントも豊富で、食べるのも作るのを見るのも好きなのでいろいろ見ようとしています。

 

(おそらく)第一次大戦で何もかも失ったイタリア共和国から、職業と生活を求めて世界に(このドキュメントではアメリカとアルゼンチンへ)移って行った過程から、そこからいまのイタリア料理と呼ばれるものへの変化について、19世紀の移民からの伝統、最近世界に移った人から見た本来のイタリア料理とのちがい、その良し悪しや移民による文化の伝播がどのようなものかを描いておりました。

 

まず、イタリア料理はそんなに肉を使わないのが、移民が住んだ先で肉が安かったから肉を大量に取り入れたという話、15歳のときに移民で米国に来た女性が料理業界で活躍しているんですが、その話をしていて子どもの頃に肉を大量に食べていた(食べるしかなかった)人はおとなになるともう欲しがらないと言っていて私的に「嘘やん」と思いましたね。その人、伝統的イタリアンマンマの体格をしているのですが、それが肉によるものではないのかもしれないというのもまた私にとっては学びと言うか、衝撃というか。

 

それとアメリカではイタリア料理にはミートボールが入りがちというイメージがあったのですが(フレンズのジョーイがミートボール入りサンドイッチが大好物だったり、ミートボールにとんでもない執着がある描写が時々見られる)それはアメリカ(たぶん主にニューヨーク、ブルックリン)で独自発展したもので、イタリアではないというのも衝撃。カリオストロの城でルパンが明らかにヨーロッパである場所でミートボール入りパスタを次元と食べていたけどあれも本当はありえないんや…という、思わぬ方面からの矛盾の指摘が。

 

もともとイタリアで成功していて最近外国へ越して活躍しているシェフが海外での変化についていろいろ嘆いているのが、「ミラノ風ナポリタンは矛盾してる」とか、それは確かにと思ったり。パルミジャーノとパルメザンの違いを熱く語る伝統を守りたい派の意見と、その土地で形を変えて馴染んでいく謎イタリアンを嬉々として作り、提供するイタリア系移民とをどちらも否定せず紹介していくところは好きでした。

伝統的なものをしっかり伝えるために団体を作る人、祖国の料理を少しでも失わないために持ち込んだ野菜を先祖が殖やし、ずっと作り続けている一族とかそう云う人を見ると伝統も大事やなと思うし、貧困から抜け出すためにその土地の食材に馴染むしかなかった時代から現在のなんでも手に入る時代になって、イタリア料理への人気が浸透していまはイタリア料理のために従事するのがやはり貧困から抜け出すために移民してきた他の民族や人種というのも伝えられていました。

 

ちょいちょい出るイタリアンマンマがやっぱりそれぞれクセがあって魅力もありました。ファビオのマンマの息子自慢と現在のファビオが面白かったな…イタリアンビュッフェをやって大人気らしいのだけど、たしかに美味しそうだった。

 

アルゼンチンの人気のピッツァのお店では繁忙の時間に向けてピッツァの生地にトマトソースとモッツァレラを散らした下ごしらえの状態で作り置きをたくさん作っているのですが、それを保管するのが(すのこっぽいものを敷いているけど)足元で、衛生的にどうなんと思いつつも案外日本もこんなかも。足場の高さは違うものの、澄ましバターみたいなんをでかいタッパーに入れて蓋じゃなくてサランラップをフワッとかけた状態で足元に近いキッチンワゴンの下部において都度必要なときに足元から取り出して使ってる洋食屋とか知ってるものな。

 

ちなみに私は、「火が通るならまあ、いいか」と思っちゃう方です。だからその洋食屋の常連。

 

しかしこういうものを見ると、いまのご時世でファビオのお店は大丈夫かなとか、いろいろ心配してしまう。

 

締めくくりに、移民の料理がその国で浸透したら移民がうまく馴染んだことになるという話をしていて料理で移民をその国で定住出来たり居心地よく受け入れられるなら楽しいことだなと思ったのでした。

 

こうして見るとイタリアは第一次大戦でもいい目に遭わず、第二次大戦では敗戦国になったけれどそれを契機に国外へ出た人の数が多くてそれとともに世界中に料理が浸透して「イタリア系」としてある程度色んな国で(良くも悪くも)活躍しているので、たくましいし強いしいい文化を持っていますね。

 

とりあえず(本来のイタリア料理ではないにしろ)ミートボールが入ったパスタを食べたくなってきた…

子どもの頃から今に至るまでお肉が大好きなのでこれからも体が許す限りは様々な国のお肉料理が食べたいですね。