もう大昔からファンだけどそういえば一番最初に見たのは「ミステリートレイン」だわ。母子共々、海外の映画で活躍する工藤夕貴さんが見たかったの。
妻にキスし、バスを走らせ、愛犬と散歩する、いつもと変わらない日々。
それは美しさと愛しさに溢れた、かけがえのない物語。
ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手のパターソン(アダム・ドライバー)。彼の1日は朝、隣に眠る妻ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)にキスをして始まる。
いつものように仕事に向かい、乗務をこなす中で、心に浮かぶ詩を秘密のノートに書きとめていく。
帰宅して妻と夕食を取り、愛犬マーヴィンと夜の散歩。バーへ立ち寄り、1杯だけ飲んで帰宅しローラの隣で眠りにつく。
そんな一見代わり映えのしない毎日。
パターソンの日々を、ユニークな人々との交流と、思いがけない出会いと共に描く、ユーモアと優しさに溢れた7日間の物語。
すごく単調な毎日のように見えて、どの時間も主人公パターソンさんのインスピレーションの源泉になっている。仕事中にほんの少し耳を澄ませて聴けるなにげない話や、食事休憩中の景色、パートナーの日々改造していく内装の柄、毎日の犬の散歩で立ち寄るバーでの時間などなど
私はアメリカの詩の良さがわからないので(エミリー・ディキンスンもわからんしと思っていたらエミリー・ディキンスンのこともちょっと触れてた)そのへんはぼんやり味わっている感じです。英語で理解するといいのかもね。だからその点で言うと詩を書き込む描写がちゃんと手書きのテロップで現れるのはある程度効果的。
途中で出てくる少女が書いた詩のほうが好きです。瑞々しかった。
なんだかボヘーっと見るのに向いている作品です。
ジャームッシュの作品では私は一番「ゴースト・ドッグ」が好きなのですが、あの作品も詩的な部分があったような(「葉隠」にインスパイアされていたわ。武士道とは死ぬことと見つけたり、ですね)
正直、パターソンさんがノートに詩を書くことがどれほど大事なのかはよくわからなかったので、終盤の雰囲気はもっと淡白なものかと思ったけれどやはり魂を込めたものだったのかとここで知る。書くだけ書いたら満足の人かなと思ってた。浮世離れしてるパートナーのやることなすこと、私は好きなんだけどイラッとする人もいるかもしれないね。でもイラッとする人は何かしらしんどいものを抱えていると思うので、んー…マインドフルネスとかやってみるといいかもね(適当)。
永瀬正敏さんは東京にいたリーマンの詩人が日常に嫌気がさしてある日突然仕事中に出奔してパターソン市に現れたのではと勝手に解釈しました。ちょっとくたびれている感じがいい。
双子とかモノトーンにこだわるパートナーとかいろいろ意味を追求したら面白いけれど、なんの説明もなくふと現れた永瀬正敏さんはくたびれたリーマンの姿をしたポエトリーの妖精さんのようでした。
「詩の翻訳はレインコートを着てシャワーを浴びるようなもの」
だから私はエミリー・ディキンスンの詩の良さがわからない。
こういう何気なさすぎるお話も見たら充実した気持ちになれるからジャームッシュはすげえなあとしみじみ思いました。上手。そして世のカップルはこの作品のパターソンさんのように、相手に感謝して、適切に褒めて、一緒の時間を大事にして、一人の時間も大事にできると円満に続くかもね。そりゃあ美しくてクリエイティビティなパートナーを得られるわ。
↑これ持ってるはず。(数日後:見つけました。持ってました)