夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

オールド・ガード(Netflixオリジナル映画)

 おおお!原作はグレッグ・ルッカなのね!!

 あらすじ:不死者のアンディたち4人は己の正義のために戦いつづけていたが、ある日スーダンの児童多数拉致の解放の依頼をうけて現地に入るも、彼らを待ち受けていたのは彼らの特性を確定するための罠だった。罠を仕掛けた男を追う道中で、彼らの「仲間」である不死者が現れたことを察知する。海兵隊員のナイルが作戦中に頸動脈を切り裂かれたが、奇跡の生還を果たしたのだ。不死者となり戸惑う彼女を守り、仲間に引き入れるためにアンディは単独でアフガニスタンに乗り込むが…

 

アンディの武器の斧が象徴的なのでこれもしかして漫画になってたりするかな、と思ったらグレッグ・ルッカの原作をコミカライズされていたのでした。アメコミとかってそういう、わかりやすい武器がトレードマークになりがちのイメージある。日本もベルセルクのガッツのドラゴンころしとかは象徴的ですよね。

アンディが最年長の美しき戦士でほかはアラブ系と白人2人、十字軍で敵同士だった2人は同性カップルでニッキーは思慮深く、ジョーは愛情深いのが印象的。二人で罠にかかってとっつかまっているときのロマンティックなセリフに久々に乙女ポーズ(両手で口を覆ったりするアレ。ため息交じりに「オーマイガー」言うてまうアレ)を取ってしまいましたよ。アツアツなんですよ…!!拉致したモブ兵士たちに見せつけるんですよ(そして後に拘束されているのにモブ兵士たちをボコボコにするという鬼強カップル)片方がひどい仕打ちを受けたらもう片方がめっちゃリベンジするんですよ。美しい…このカップルで過去スピンオフ作ってくれ…マルタ島について教えて頂戴

 

どうしようもない悪役をハリポタのダドリー役をやっていた人が演じていて、大人になっても卑怯で悪い顔に見せるからもう…もっといい奴の役も演じてるといいけど(そこまでは調べてない…ああ、クイーンズ・ギャンビットですごくいい人を演じてた!よかったよかった!!すっかりネトフリ俳優なのかな??)

この作品の素敵なところはいっぱいあるのだけど、どうしようもない悪役たち以外は、罠にかけた人、裏切り者にはそれなりの理由があって、本来は誠実で善良な人であることとか。

不死者は死なないけれど基本は生身の人間と変わらないから拘束とかガスや急襲には対抗しきれないというのは、日本のラノベ及びアニメの「バッカーノ!」と設定が近かったです。バッカーノ!のほうは悪魔から授かった酒を飲んだ人が不死者になる、不死者を殺せるのは不死者だけ(右手で頭を掴んだら相手の記憶やスキルを吸収するというシステム)などそれはそれで物語を面白くさせる設定があったんだけど、こちらは「いつか受けた傷が治らなくなって死ぬ時が来る(かもしれない、実際一人はそういうことがあった)」という部分と、不死者であることで人に狙われたりする場合に拘束されることには細心の注意をはらわなければいけないとかスリルがある。冒頭から「狙われている」のが明らかだったので、ずーっとスリル満点。屈強な面々だけど拘束されたらアウトっていうのはなんとなくわかるから安心感なんてないの。

バッカーノは名作ですよ。すごくできの良い作品です。原作も面白いんだけどアニメが好きすぎて円盤持ってる。 

そういえば拘束されたまま海に沈められたら、ってくだりも被ってるエピソードがありますね。あれは想像しただけでゾッとした。

 

冒頭から不死者である説明とか関係性がバッチリ語られることはなく、新人のナイルに教える程度や襲われたシーンでどういうタイプの不死者かわかるという作りは私は非常に好みです。映画は映像で説明してくれるのがいい。言葉では説明せず、表情でなんとなくお察しくださいというシーンがちょいちょいあって、それがワクワクしたり萌えたりするの。

字幕のセンスですが、アンディの言葉遣いが荒すぎず、美しすぎず、ただただ当たりが良くて素敵。

 

音楽もかっこいいんですよね。サントラでまとまってるのかな。

主人公のアンディはマジで英霊レベルのすごい人なのだけど、それをシャーリーズ・セロンが演じるとたしかに英霊として召喚したくなる。アクションも美しいんですよね。斧を振り回してもそりゃあ振り回されるわ斧って思うほど体幹がしっかりしていて当たると本当に死んじゃう感じがする。

脇の人たちも前述の通り最高で、「新人」の海兵隊員ナイルも新人だけにキラキラしているの。なぜ選ばれたのかわかるほど正義の味方たりえるちゃんとした子でまったくイラッとしなかったなあ。ニヒルなブッカーもいろいろと納得しちゃえるんですよ。くたびれ方がうまい。

 

いま続編を製作中ですごい終わり方をしたので気になるあれやこれやが2作目でどうなるのか、ネトフリのすごいところは公開されたら家ですぐに見られること。ありがたやー

字幕で見たんですけど、吹き替えだとシャーリーズ・セロン本田貴子さんが演じるらしい。女性で戦士を演じるなら本田貴子さんってイメージあるわ…

血なまぐさいのが平気なときにまた見るとしたら、今度は吹き替えで見ます。

グレッグ・ルッカってミステリ作家としても有名ですごく面白いと評判の作品が日本語でも読まれます。絶版だけども、マケプレで格安で買えますよ。読んだときにはなるほどその時代の男女間のあれやこれやを伺えたけど、時代が変わったことで価値観もブラッシュアップしたのを彼はちゃんと活かしたから素晴らしい。

本当、素敵で頼もしくて、シャーリーズ・セロン演じるアンディがあまり担うところのないくすぐりも担当してくれるいいカップルだったなあ。もっと見たい。続編本当に楽しみ。