夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

ファンタスティック・プラネット(映画)

 これを祝日の午前に放映したNHK大丈夫か

悪夢から覚めたらテレビで悪夢やってたレベル

 

物語の舞台は宇宙のどこかの星。
進んだ科学を操る巨大な人型宇宙人ドラーグ族と、彼らから虫けらのように虐げられている、地球人によく似た人類オム族。
ドラーグ族による大規模な掃討作戦を前に、ついに二つの種族の全面対決が始まる…!

作風や変な世界観で確かに悪夢的だけど、話自体は皮肉が効いていて猿の惑星の続編みたいなところもあり。猿の惑星も原作はフランスだものね。宮崎駿監督がナウシカに出てくる生物の着想を得た作品とのことだけどナウシカに出てくる動物のほうが秩序があるというか抑制が効いていたような気がする。まだ地球の行く末にあって人間の想像の及ぶ生物という感じ。

この作品に出てくる野生の生物は本当に変だったな…それに対応する人間の行動も変だったけど。

主人公のテールがあかちゃんのうちにドラーグ族の女の子のペットになって変な服を着せられるんだけど小型犬が人間に着せられるのと似ていて50年近く前の作品なのに今にも通じる風刺にもとれる。わんこにも保温のために着なければいけないタイプもいるけれど、エゴにも見えるときもある。

その人間の衣装にしても感情ののってない表情にしてもなにかに似てるなと記憶を探して一致したのがAC部が手掛けたNHKの名曲アルバム+の「ウィリアム・テル序曲」の映像。

あの珍妙な中世の人たちの衣装と通じるものがあった…あと、「伝染るんです。」の斎藤さんが入っていた謎のサークルの服。変なんだけどどこが変か説明しようとしているとわたしの感覚が間違ってるのではと疑っちゃうような徹底した変さがある。ちょっと中毒性もある。人間の偉い人のあのタコのような頭の飾りはいったいなんだったんだ…被ってみたい…

 

話自体は人間目線で見ると不条理でシュールでもあるけど、強そうなおばあさんが出た途端にマッドマックスっぽさも出てきて物語のいやーな流れがマシになりました。途中いろいろあったけど、人間が害虫扱いでバルサン焚かれるのが、ゴキブリってこんな気持なんやろうなって思ったり。

変な映画だけど独特の色使いや映像の感触はほぼ同じ時期にフランスで作られた「ペイネ愛の世界旅行」を見たことがあったので似てるなーと思ってました。ファンタスティック・プラネットのほうがザラついているしシュールさが強い。

 ファンタスティック・プラネットはまた見たいかと言われたら「もういい」って気持ちになる。でも見たのと見てないのとではいろいろ経験値が変わるかもよ。改めてよく放映したなNHK

 

配信ではシネフィルWOWOWプラスに課金すれば見放題で、22日までアマゾンプライムビデオのキャンペーンで2ヶ月間、ひと月99円なので気安く課金して見ました。一昔前のBunkamuraで見られたようなラインナップが見放題で、わたしとしては嬉しかったのがクシシュトフ・キェシロフスキの「トリコロール」シリーズと「ふたりのベロニカ」も見られること。どれもDVDで持っているけど。それとチャイナ・ミエヴィル原作で映像化なんか無理やろと思っていた「都市と都市」が映像化されているものも見られるという…よく作ったね。

見られるのでオススメ?はリュック・ベッソンの「サブウェイ」。ジャン・レノも出ていて、変な映画だけど最後まで面白かったような覚えがあります。他のサブスクでは今の所見られないので、見たことがなかったら見るのもアリかも。

ふたりのベロニカ」は私には特別すぎるけれど、映像が雄弁でセリフや説明がいらない映画とはこういうものだと教えてくれます。クシシュトフ・キェシロフスキの映画は変態と偏愛の境目が曖昧だけど、そんなもんだと思えるのもいい。