夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

21009 マーサ・ウェルズ「マーダーボット・ダイアリー 」下

 大空翼くんがロボになったらこんな感じというロボが出ます。

プリザベーション補助隊の事件をきっかけに保険会社の業務を離れた“弊機”は、強化人間を装いながら自らの大量殺人事件の真相を求め、企業リムを旅する。なぜかトラブルに巻きこまれどおしの弊機は、出会う人間たちの行動に苛立ちながらも、しだいに芽生えてくるさまざまな感情に戸惑う。そんな中で、人類の宇宙進出以前に存在した異星文明の遺物をひそかに発掘・独占しようとしている悪徳企業グレイクリス社の策動が浮かび上がる。弊機はメンサー博士のため、惑星ミルーのテラフォーム施設に潜入を試みるが、そこにはまたしても未知の危険が!

この物語は弊機くんをどんな運命に誘いたいのか、ちょっと謎。

弊機くんは自分のメンタルの調整に人間が作ったドラマを見たがるんだけど、その渇望具合はジャンキーのようです。

3話目「暴走プロトコル

ここで弊機くんが出会うのが大空翼くんのようなテンションの高いペットボット(でも人型)で、そんなことは言わないけど「ボールは友達だよ!」と言いそうな言い回しに弊機くんでなくても脱力と閉口しそうと思いつつも、ペットボットと人間との温かい関係性やなかなかとんでもない展開にスリルもあり(でもあの二人が出た時点でこいつら…と思ったのであった)、面白く読めました。

とにかく弊機くんが運が悪いのかなにかを引き寄せているのか、それとも彼とグレイクリス社をめぐる問題にはつきものなのか、めっちゃトラブルに遭い、その都度人間なら死んでるようなことが起こるのでドラマより自分の人生のほうが面白くないか?と思うのでありました。

 

4話で一旦おしまいですね。寝る前に何となく読んでいるのですが、いい感じに読み進められています。

 

4話「出口戦略の無謀」読了。

1話で始まった冒険が一旦落ち着くまでで、全体的に見渡すと序章という感じもある。実際、次は長編らしいし。

弊機くんの視点で細かく描写されるのがとにかく細かいのでそれをいちいち拾い読むのはもうちょっとショートカットしても良かったのではと思うけど、コミュ障の弊機くんが様々なことに困惑しながら持てるスペックをフル活用して恩義のある人間を助けようとし、仲間と友達を得るまでの物語は妙に私の心を癒やしました。

人の形を取るとどうしても人間はそれに感情を持つものらしいです。人だけじゃなく、動物でもか。

その向けられる感情に戸惑いながら、人間を好まないようATフィールドを広げながらも、窮地に陥った人間は助けたいし、それは人間だけじゃなくてペットロボットに対してもそうでそして傷ついたり悲しんだりする弊機くんがとても愛おしい。

彼が次の作品で得るものはなんだろう、またARTと会うなら楽しみです。