夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

19009 フィリップ・リーヴ 「移動都市」

 荒々しいジブリ!先が全くわからないノンストップアクション!!

移動都市 (創元SF文庫)

移動都市 (創元SF文庫)

 

60分戦争で文明が荒廃した遙かな未来。世界は都市間自然淘汰主義に則り、移動しながら狩ったり狩られたり、食ったり食われたりを繰り返す都市と、それに反撥する反移動都市同盟にわかれて争っていた。移動都市ロンドンに住むギルド見習いの孤児トムは、ギルド長の命を狙う謎の少女ヘスターを助けるが…。過酷な世界でたくましく生きるトムとヘスターの冒険。傑作シリーズ開幕。

最近映画化されたものの、そんなに評判を聞かないうちに公開が終わってしまった…本国でもさほど評判にならなかった様子。よほどきちんと作り込まないとチープな作品になりそうな危険性はある。アニメのほうが向いてる。宮崎駿がもうちょっと若かったら飛びついたんじゃないかしら、というか、作者の方がジブリが好きだったら納得できる。

勇ましい女の子、単純で人を見る目が微妙だけど賢くてまっすぐな気性の男の子、正義感が強い美少女、学者の矜持で命を張るじいさん、気が良くて強いお姉さん、ジブリキャラでイメージできる…雰囲気的にジブリ×マッド・マックスちょいターミネーター

 

世界観は火の7日間から何千年も経った荒廃した世界でディストピアっぽさもありながらの、スチームパンクの匂いもありながらの、その中での冒険活劇なんだけど、まあ展開が読めない。どうやったら打破できるかわかんないような絶望的な展開でも思いもよらないところで話が動いたり、そこ想像ついたわというところもあるにはあったけど、ピンチに次ぐピンチでそこそこ怪我もしたりするのでこいつら大丈夫かと登場人物たちに対してヒヤヒヤするわけで。

 

濃密な世界観を都市部で真実を突き止めようとするパートと、突然の出来事から外の世界で翻弄されるパートで余すところなく見せてくれるのは広がりがあってよい。もともとあった都市を舞台にしているので個人的に馴染みのある場所もいっぱい出てきます。ロンドン、大好きなものでね(行ったことないけど)

 

主人公の性格は多少やきもきするけれど、リアルな少年像ではある。ヒロインがよくあるタイプのヒロインでないし主人公よりたくましいところが結構好き。彼女の過去の話を延々と読んでいたかったかも。同時進行で進むパートのお嬢様のくだりも愛おしい。すごくいい子。彼女を知るためにも読んだらいいよ。

 

文庫で400ページ満たないのに読み応えあって面白かった。若いうちに読んだほうがもっと面白いかもね。続編も持っているので、見つけておきたい(例によってどこにあるかちょっとわからない)

 

追記。初版本を読んだのだけど、209ページに校正ミス。「歩きずらい」って。「歩きづらい」な。辛いだから。でも重版されたら直されているといいな。

 

掠奪都市の黄金 (創元SF文庫)

掠奪都市の黄金 (創元SF文庫)

 

 

でも例によってすぐに読むわけではない感じではある…

 

付記:「掠奪都市の黄金」はすぐに見つかりました。買った時期を覚えていれば地層で当たれるよねー。ねー。