夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

23012 墨香銅臭 著  鄭穎馨 訳 「天官賜福」2巻 感想 袋とじでネタバレ 理性無し

3分の1はドキドキしながら何度も行ったり来たりしながら読み、残りはギャーッと駆け抜けながら前の3分の1に「だぢげで花城!」って戻って呼吸を整えてまた戻りの繰り返しでした。

二度の追放を経て、八百年ぶりに神官に復帰した謝憐(シエ・リェン)は、
下界で三郎(サンラン)という少年に出会い、ほんの数日の間に親しくなる。
謝憐(シエ・リェン)のことを「兄さん」と呼び、常に悠然と笑っている
三郎(サンラン)。しかしその正体は、天界の神々ですら恐れるほどの絶大な
力を持つ鬼王、花城(ホワチョン)だった――! 再会を約束するかのように、
指輪を一つ残して姿を消した花城(ホワチョン)。一方、天界に戻った謝憐
(シエ・リェン)だったが、失踪した神官の捜索という任務を受けて鬼市に潜入
することになる。そこはまさに花城(ホワチョン)の縄張りで、彼の住処に招か
れた謝憐(シエ・リェン)は、少年ではない真の姿で現れた彼に「会えて嬉しい」と歓迎されて!?

しんどかったーーーー!

3分の1以降は花城出てこないしあんまり明るい内容でもなさそうなので捗らなかったらどうしたものかと思ったんですけど、まあそこはいろんな意味で杞憂でした。

 

ホラー要素というか脳内のイメージとしてかなりやばい描写がたくさんあったり、思いの外殿下がとんでもねーピンチになったりと慌ただしく忙しく、蝶よ花よと育てられた(これダブルミーニングあるな)王子様が誠心誠意を尽くして頑張ったつもりが全部裏目に出てなにもいいことがなくて見てるこっちが辛くなるという展開の中で、唯一の救いが読者にしかわからない紅紅児と少年兵の存在。影となり影となり(日向にならないわ)密かに現れるのだけど、本当に運命的といいましょうか、出てくるたびになんだか泣けちゃって。

ああそうやって救われて、頑張って、大切に思ってきたんだなあ…って。

彼が居なかったら本当に辛い、そして殿下の記憶の中では紅紅児も少年兵もただの人間の少年でそこに居ただけの存在だから彼にとっては辛いだけの記憶なんでしょうよ。

 

他にもこれから語られることを経て、信者もおらず周りからも嘲笑われることが多い笑いものの神様になっちゃったんだなあ、なにがあったんや…だいたい想像つくけども。

 

容赦なく悲惨なのでその辺打たれ弱い私は普段だったら挫折したかもしれないけれど、そこかしこにある紅紅児と少年兵の存在が読む力を与えますよね。

続きも結構大変そうだけど、現在の部分でも殿下は嫌な選択を迫られており、私はそこからが気になるので、台湾版をとっとと読み進めとうございます。過去編はあとちょっとで終わりそうってところだったんですよね。

 

これ続き本当に半年ちょっと待たないと出ないの?日本語でちゃんと読みたいなあ。

 

ここからは、現実というか過去編からの逃避で800年後の世界を主に取り上げようと思います。ネタバレ全開で、袋とじ(この項単品では畳めないのですが、ブログのトップページからでは畳める仕様になっています)で。

 

 

 

 

1巻の終盤での白熱した賭場でのやりとりのあと、割とすぐにまた再会してるの、作者さんはなるべく殿下と花城を一緒に居させたいんじゃないかと思いました。

時々そういう小説あるよね。結構無理めな展開でも会わせようとするの、私は大歓迎です。

 

まあそれより花城が殿下に会いたくて会いたくてたまらないんでしょうね。

花城は本当に爆イケ散らかしていて出るたびに私の呼吸が浅くなるのですが、殿下も知らず識らずときめいているようでとても楽しかったです。二人でいるときのイチャつきぶりがまあ、面白い。

 

物語は殿下の視点で綴られているので他の人のセリフからじゃないと客観的な視点が得られないのですが、私の大好きな風師どのの目で見ると自分たちはひどい目に遭っているのに花城の歓待を受ける殿下は常に花城と仲良く楽しそうであったと。イチャイチャしていたと。いいぞもっと見ろ風師どの!!

なんかちょっとした拍子によくお互いの手を触りあっていて、花城は抵抗を見せるときもあるんだけどわりと無理やり触れていく殿下が無駄に男前でよろしい。

 

武器庫での殿下のテンションの高まりは武神らしく可愛く、たぶん花城にとっても期待通りの喜びようだったのでご満悦の瞬間でしたね。武器庫から戻るときには花城と手をつないでるのヤバない?

その少しあとで同じ武器庫の天井に開いた扉から花城の膝の上に落ちたり武器庫は見どころ多いけどまさかすぐに焼失するとは、いろいろ忙しいなあと思っていたけど花城はまったく気にせず。って思ったら過去に彼が原因で太子殿を燃やしていたのでおあいこみたいなものだったというのも読者の私は知るんですね。

 

「私にもこんな武器庫があったんだけど焼き払われてしまってね」って言ってる殿下に原因そこにおるがなーって読み返して笑ってる。

このあたりは単独行動する殿下も冒険しているようで面白く、私の中で「スパイディ殿下」とニックネームがついた瞬間がありました。若邪ってスパイダーウェブみたいよね。ほうとうサイズのスパイダーウェブ。

 

扉が開いて武器庫にいる花城の久の上に落ちちゃうのって、賽子振ったときに花城のことを考えていたのかなと思ったらそれらしい描写はなくて開ける瞬間は郎蛍のことを考えていたので他の人のことを考えていてもちゃんとそこへ行けるのならマジでどこでもドア…結果的に読者と花城が美味しかったけど。花城なんも動じないで嬉しそうだった。

 

花城は自分の縄張りに殿下が来てすごくご機嫌だし彼になら何されても全然気にしないけど、千秋と花城の戦いに割って入って厄命によって怪我をさせてしまったことに恐らく相当心を痛めたらしい描写がそこかしこにあって私が代わりに泣きそうになったり。

ニヤニヤ、ウルウル忙しい。

 

その騒動で明らかになった事実のせいで殿下は天界の自分のお屋敷から禁足になり、そこで武器庫を燃やしたことでどうやって弁償しようか考えていて一生かけても(死なないんだから一生なんて永遠じゃないの)返すと考えていて、そんなん花城には願ったり叶ったりなのではと一人でニヤけていると、ご本人が迎えに現れてみんなびっくり!ってお迎えの仕方が実にスタイリッシュ。

そこに居合わせた風信と慕情が銀の蝶の群れにひどい目に遭っているのに殿下は一匹の美しい蝶とニコニコ戯れているの君らほんま仲いいな!花城のだいたいのことを引かずに「なんか好き、ウェルカム」って感じの対応してるの安心感があるし花城も存在から強くて安心感があるから頼むから君たちずっと一緒に居てほしい。

 

ここで南風と扶瑶じゃなくて風信と慕情が現れて似たような役回りと口調なのも面白い。将軍とか神という立ち位置じゃなくて配下に戻ってる。

賽子次第で出るところが変わる扉の仕掛けがよく出るけど(今後も出るっぽい)縮地千里もどこでもドアみたいだし、乾坤袋は四次元ポケットみたいだしちょいちょいドラえもんなのが好きです。そして殿下が花城に会いたかったらどの目を出しても花城に会えるという殺し文句と花城に会いたい殿下という、素敵な情報がギュッと押し込まれている会話に私がときめく。花城が助けに来たのも殿下がその前に花城を思いながら賽子を振っていたからってのもあるのかも。

 

千秋から自分のかつての宝剣を返されて決闘となったときの殿下にたぶん花城は見とれてますね。そうですね。推しの本領発揮にときめいてますね。きっとね。知恵を働かせてお互い無傷で決闘に勝った殿下に嬉しそうに笑ってるの可愛い…

 

戚容と再会したときも殿下と花城がそれぞれ自分のことは何言われても気にしないのにお互いがお互いを貶されているときはガチでキレるの友情じゃなくて愛よ愛って思いながらボコボコにされてる戚容にスッとしてました。戚容なかなかのクソですねえ。

怒ってくれる花城に手で「ありがとう」と伝えるシーンとか殿下も場の空気を柔らかくする雰囲気があってこういうところ花城は好きなんだろうなあと私が癒やされてる。私はこの二人にこの度たくさん癒やされているような気がする。殿下が様々なことに落ち込んで腹立ち紛れに怒っているいるときに花城が掛ける言葉がもう、たまらないんですよ。自分が傷つくことはまったく厭わなくて自分がそこまで悪くないことが知られることで憎まれる人が増えたり実直な人に歪みを与えてしまったことを怒っている殿下を花城は隣りに座って受け止めるのいいですよね。安易に抱きしめないの。そういう関係じゃないって弁えてるの。

花城が怒ってるときに背中をぽんぽん叩いて宥めて落ち着かせるのは過去ともリンクしていて過去編で見て我知らず声が漏れましたね。

 

花城からの大きな親愛を感じる殿下が自分を買いかぶりすぎていると諌めようとするのだけど、「一部の人にとっては、誰かがこの世に存在すること自体が希望なんだ」と何気なく言うのが、花城が生き続けるきっかけとなった言葉とリンクしていてそれ知ってるの読者ああああ!って転げてました。

花城を何者なのか問い詰めても結局誰であっても関係ないと気にしないことにする殿下、思い出したとしてもどうなるんだろうなあ…

 

それにしてもこの二人の仲の良さってハンパなくて、戚容の愚行のケリをつける処理をしているさなかでも落ち着いたら「雑談」してるのなに。その内容教えて。他愛ないんでしょうけど教えて。

風師どのはどこまでも誠実で殿下どころか花城のフォローもしようとするので私の中では信頼度MAX、様々な頼みごとも引き受けるし、私の中で超胡散臭い裴茗のことが嫌いなのも「気が合うね!」という感じ。作者様も風師どのは動かしやすいキャラなんじゃないかな。

風師どのが「ものすごく仲がいい」と認定してくださってさらに信頼度が上がったな…でも「杯を交わした兄弟」って思ってるのは花城は認めたくないみたい。お酒を一緒に飲んでたから風師どのはそう思ったのかもしれないけど、花城は信者だものね。

「新しい遊び」とか「君の三郎」とか殿下を照れさせるのうまくてもっとやれーと何回も言ってる。

それにしても女嫌いの風信に女体セクハラするし、めちゃくちゃ楽しい人だ。

 

過去編になる直前のヒリヒリした展開は本当に「花城来てー!いますぐ来てー!殿下を助けてー!」って思ったけど続きは3巻で!なので慌てて台湾版を見ましたねえ…

 

そして過去編。花城居ないからなあとぼんやり思いながら読んでいると、居ないどころか全編に渡ってわりといたのがすごい!

そこかしこに彼の気配が。まだ幼くて未熟で健気でボロボロだけど、なんか強い片鱗はある。

 

殿下がよかれと思ったことがどんどん悪手になっていく中で間欠的に傍に居た紅紅児、少年兵。これアニメを見てたり帯に匂わせがあるから分かってるけど気づかなかったら気づかなかったのでは(いや、2巻の表紙がSNSで発表されたのを見たときから1巻を読んでなくても察するところがあったけれども。天官賜福は全巻殿下と花城のツーショットなんですよね。魔道祖師もそうだけど)

 

最初の出会いこそ殿下が一番輝いていたかもしれない瞬間だったけれど、その後は殿下がしんどくなるというか読者がしんどくなるときに現れるので私が救われたような気持ちになりました。

 

お花を備えていたことが殿下にとって一番嬉しかったとか、彼のささやかな信仰が殿下にとってはいちいちツボなのも本当に相性がいい。毛布も優しさとか温かい気遣いを感じて嗚咽が漏れましたよ…なんて健気なの。800年後にあんな百戦錬磨に見えるイケ散らかし鬼になるとは思えないけどいまでもそういうことやるやん????やるよね?

 

スケベ洞窟でも。

 

まさかあんな展開だとは思わなくてとんでもねー嫌ったらしい罠でこれなんの超設定AVだよって思わなくもないし、アニメ化無理なのではって心配にもなるけど、すごいのが、殿下のあられもない姿のいちばんしんどいときを見たのは少年兵だけで、わざとじゃないけど彼を感じさせたのも少年兵なんですよね。ほかの誰でもなかったってことに胸をなでおろすわけです。少年兵はおぼこいからなにもかもあんまり良くわかってなかったけど成長したあとは思い返してしんどいだろうなあ…

 

(あとで知ったんですが、花妖が少年兵が一番好きななものとして化けたのが殿下の姿をしていたらしい。助けに来た風信と慕情が先に見つけたのがそれで、「くそったれ!」と怒鳴ったやつ。あの時点では殿下をまだ見つけてなかったんですね。少年兵がぽかんとしたのは相手が殿下に化けたからとか自分が欲情するのが殿下だと心の底を当てられたかは知らんけど、信仰の対象だけでなくそっちの欲の対象であると指摘された感じ?ちゃんと読んでもここに気づくのはわからんて!でもすごい!あの花妖下品だなあ!)

 

この時点では殿下は花城に好意を感じているけどそれがどういう好意なのか全然はっきりしてないし、他の人への好意との差があまりない感じがする。

花城もアイドルに近づきたかったら自分もアイドルになればいいじゃないってノリでちょっと方向性の違うところでブレイクした感じがあるけど推しとして好きなのか性愛なのかがちょっと曖昧。まあ序盤で結婚してるし途中で指輪あげてるし禁欲の話を聞いてホッとしたような複雑そうな雰囲気だったからそのつもりなんだろうけども。

1巻の半月国のあとの夜のやり取り(アニメ12話の前半ですね)で「花婿になりすましてはいない」というあたり、なりすましたわけじゃなくてガチで花婿になりに行ったらしいので!!!

こういう台詞回し大好き(血涙)!!!

 

花城はどうあれ、殿下の方は花城を徐々に好きになることを自覚していくのかなあとワクワクしております。魔道祖師みたいにお互い思い合ってるのになんか掠ってるってるのは好きです。いじいじする。

 

さてここからは己の持てる知恵とガジェットとお婿を総動員させて3巻魔翻訳に入りたいと思います。

日本語版3巻、早く出版されないかな!?半年以上空くとか辛すぎるわ。