夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

気象庁の人々 社内恋愛は予測不能?! (韓国ドラマ) 感想

1話を見てしばらく経って一気に完走しました。

パク・ミニョンさん主演作を見るのはこれで3本目。

「キム秘書はいったい、なぜ?」と「彼女の私生活」では相手役が同い年とかちょっと年上だったっけ?今回は相手役は少し離れた年下で20代、本人は明言されていないけれど30代で気象庁の重要な部署で管理職ができるほど仕事ができる人ということで、「仕事ができるいい女」ポジションは3本連続。でもこの佇まいである程度ドジっ子は許されても仕事はできる方が説得力あるよねーと思ったり。

相手役のソン・ガンさんは去年まで学生役とかもふつーにやってたくらい若いのでどう見ても年下の雰囲気があって、流行っているらしい女性が年上の恋人関係の恋愛ものなんでしょうね。

 

パク・ミニョンさん演じる気象庁で働く気象予報士チン・ハギョンは10年付き合って婚約もしていた同じ気象庁で働くハン・ギジュンが気象庁出入りの記者チェ・ユジンと浮気した挙げ句スピード結婚を済ませてしまったため大勢の同僚の中で屈辱を味わった上に元カレと金銭問題やマンションの権利問題などでこじれて疲弊した中で出会ったのが後に同じ部署に赴任してくることになる、ソン・ガンさん演じる実力ある気象予報士のイ・シウ。

彼は彼で前述のスピード婚した記者の女性に突然フラれた過去があった。つまり新婚カップルの元カレと元カノというややこしい関係。

なんやかんやで色々あって酒を飲んだ勢いで一夜を共にしてしまうのですが、社内恋愛は懲り懲りだからその場限りで済まそうとするチン・ハギョンとそんなつもりはあまりないイ・シウがあれやこれやいろいろあった挙げ句、社内では内緒で付き合うことになるんだけれど、内緒で付き合うようになる過程が見ているとびっくりするんですよ。

 

3話の終わりでチン・ハギョンから一線を引いて距離をおいたような展開を見せ、イ・シウは割と距離を縮めたそうにしているし仕事しているときも物理的な距離感も近くて牽制されるという展開があったのだけど、それはチン・ハギョンが彼女の周りの人に見せたい二人の関係性であり、実は3話の終わりですでに出来上がっていたというのが4話の終盤に明かされるという、つまり視聴者は4話のあいだじゅう騙されていたんですよね。

これ知らなかったらびっくりします。こういう「騙り」好きです。

 

でもそこからラブラブの要素より不穏さが混じるようになります。イ・シウの父親が子どもから搾取するタイプの飲む打つ買うクズだったり、チン・ハギョンは元カレと度々揉めるしハギョンの母親役の人が、「彼女の私生活」でも母親役を演じていた人(この人大好き)で、すごい干渉癖と娘の婚活をむちゃくちゃ願っている、可愛げはあるけど重たい親だったり。母親サイドの話はコメディに振ってるけれど、イ・シウの父親のクズさはシャレにならないし、元カレは厚かましいしで大変。

同僚は同僚で問題を抱えている人もいて、単身赴任から戻ってきた先輩なのに部下という人は離婚寸前、結婚出産でキャリアを逃した部下は夫がキャリアアップのための休職中で子育てが大変とか。

 

だから二人が仲良くしているより周りがゴタゴタしていたり、付き合っているのがバレないようにするためのすったもんだがアリので目まぐるしい。

さすが韓国ドラマなのでクズのクズっぷりがひどいのですが、セクハラ、マタハラやミソジニストもエグいくらい出てきて社会問題を露呈してきます。日本も似たような性差別があるけれど、韓国も抱えているんですよね。上下関係も厳しいし、男尊女卑も露骨。コンプラパワハラがどの程度許されないのかちょっとわかんないけど上の立場の人が部下を人前で怒鳴ることなんかしょっちゅう。

 

パク・ミニョンさんはコメディエンヌみたいなところが多分にあって可愛らしくて魅力的なのですが、この作品では仕事上重要な立場にある大人の女で秘密の彼氏は問題を抱え、結婚観やさまざまなことで食い違いも生じてくるなど困難なことも多いからか、曇り顔や引締まった表情のほうが多くて、笑顔がいいのにあんまり笑わないのがもったいない。

ちょっと悲観的な部分を抱えているのもあるのかな。

お互いどんどん相手のことが好きになるのになればなるほどうまくいかなくなるというのがじっくり描かれているのでこじれをじっくり書かれると見ているこちらがたまらんこともありますね。

 

私は母親が搾取型の毒親だったので(父親もそういう部分があるけど母親よりは反論の余地があったのでまだマシ、母親は搾取を断ると「殺す気か」と脅してくる厄介なタイプ)イ・シウの父親への見方は厳しく、終盤の展開は「そうはならんやろ」とちょっとシニカルな気持ちになりました。

 

切なさのほうが強い作中で魅力があったのが、シウの大学の先輩で同僚であり、ハギョンのマンションの上階に住む主任とハギョンの姉の関係性。「逃げるは恥だが役に立つ」の平匡さんみたいな人でとてもかわいかった。「賢い医師生活」で脳外科の若手医師の役を演じていた人なんだけど、こちらでは情けない表情もいっぱいしていて、その顔を見ていると「あつまれどうぶつの森」の「きんぞう」に見えてきます。

 

それと、単身赴任から帰ってきて家族から疎まれた挙げ句家出してシウとともにハギョンのマンションに転がり込む先任が私は大好きでした。

笑顔がすごくいいんですよね。本当に嬉しそうなお顔。仕事人間でいままで家族をないがしろにしてきたツケを払うことになるのですが、徹頭徹尾おっさんで、悪気なく大声で人のセンシティブで(おっさんからすれば素敵なお話だからって)秘密にしておきたい話をしちゃうけど全然憎めないしかわいいんですよね。性格が良いのもそこかしこで見せてきます。

 

元カレのハン・ギジュンと妻のチェ・ユジンもクセがあって面倒くさいしなんでこの夫妻、自分たちの結婚写真を引き伸ばしてマンションのリビングに飾ってんの?ガルマ・ザビの自宅ですか?ってツッコミどころもあるんだけど(しかも1枚だけじゃないんだな…)後半からはキャラのイメージがV字回復していくのがいいですね。

しょっちゅうお金の話でこじれるけど結婚とかはお金は絶対絡んでくるから仕方がないのかもしれない。

序盤からぐっと印象が変わったけど作品の期間を通して、元カノのハギョンにマジで怒られたり、妻とのこじれなど経て成長したのだと思うし、もともと素直な人なんでしょうね、いろんな理由で殴り合いの喧嘩をしたイ・シウとも仕事を通して一目置くようになるような変化が見られてキャラクターの変遷が不自然じゃない。

 

社内恋愛という面倒くさい人間関係から発生するあらゆる事件、毒親との切っても切れない関係性など生々しくてなかなか見逃せません。

お仕事ドラマの側面も十分で「君ら仕事せえよ」と思う瞬間はそんなにありませんでした。

 

毒親を持つ子どもの気持ちは、毒親を持たない人たちにはなかなか理解できないし普通の親との違いを理解できないから親を尊重させようとするムーブがあるのが押し付けがましいし迷惑というのがわからないというのも細かに描かれていて、毒親と子どもの関係性が割と理解されているんじゃないかと思いました。

 

子どもの親への複雑かつ冷たい心情が理解されず、親を憎む事自体を否定されるというのはよくあることです。

作中でもそれで衝突することもあったのですが、父親が大病を患って改心するという夢のような展開があってハッピーエンドになったのが、私にとっては仕事ができるいい女×仕事ができる年下のイケメンという関係性より非現実的で「そうはならんやろ」って何回か言ってしまいました。

うちの母は大病を患って寛解してもその前も子どもからの搾取を当たり前のようにしてますからね、現実はそんなもんです。喉元過ぎれば熱さを忘れるといいますが、喉元過ぎる前からも過ぎている途中も熱くても飲んでる感じ?

 

改心した父親が可愛かったし、ハッピーエンドだったので水を指したくないけどそこだけは妙に引っかかるのでした。

 

それでも全体的に質が高いし、知っている俳優さんがいっぱい出て楽しかったです。

パク・ミニョンにはもっと笑ってほしいなあ。

 

追記

ハン・ギジュンとユジン夫妻がよくお金で揉めてたけどギジュンがメーカー提供なのかBMW乗りなので「それを売ってバス通勤にすれば全てが解決するのでは」と何度も思ってましたね。