夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

「ダンガン×ヒーロー」をご存知ですか

諸事情で持っている漫画をいろいろ読んでいるのですが、こちらは発売当時から持っているものです。電子書籍化はされていないのかー。もったいない。

 人をガン見してしまう癖やいわゆる高校デビュー的要素から治安の悪い街の強面から苦手な女子までに追いかけられがちの主人公、真弓ちゃん(1巻の表紙の男の子)は用心棒として天野あきらというガサツで腕自慢の同級生女子を雇う。一人暮らしを始めた彼は、生活費を酒とパチンコで使い切った彼女と、地上げで住んでいるアパートを失った子持ちの怪力高校教師田原坂先生と自分の部屋で暮らし、全員喧嘩が強いことからその日の食材稼ぎに覆面をかぶって治安の悪い街の正義の味方稼業を始める、という今どきはいろいろありえないストーリーなんですが、当時から痛快で面白かったんですよね。

高校生が飲酒したり、サブキャラだけど生徒会長がホストクラブに通ったりとか当時は別に流せた描写が多いけど現在は少女マンガ誌では見られないはず。最近の少女漫画はあんまり読まないから知らんけど。

 

それぞれの登場人物が家庭に事情を抱えていて、田原坂先生は赤ちゃんを男手一つで育てているけれど実は血がつながっていないとか、あきらの保護者は性転換した美しい元父で最近男性と結婚した新婚さんだとか。

このあきらの母の「ひかるさん」が素敵なのですが、あきらが子供の頃に性転換したときのあきらのフラットさや、話の途中で真弓ちゃんがそれを知っても反応がいいんですよね。真弓ちゃんは誰にも迷惑をかけていないし本人が幸せなら、ってスタンス。あきらは父ちゃんか母ちゃんか呼び方に困ってるだけ。

こういう素直で優しい人達の優しい世界のなかにヤクザの密輸事件や刑事の脅迫事件が絡むからなかなかバイオレンスだけど基本的には本当に優しい話なんですよ。

 

作者は山口美由紀先生ですが、この方は赤ちゃんから大人まで体のデッサンがしっかりしていて赤ちゃんの丸っこいところから大人の男性の筋肉質まで、美しい女性の女体まで見応えがあります。とくに生徒会長のブルマー姿が美しいんだわ。いまは現実でもあまりないらしいブルマーですが、この漫画では割と多めに見られます。

 

物語のテーマとしては、男女の関係性についてですが、友達よりも繋がりが深いけれど、恋人と呼ぶにはふたりとも「おぼこい(方言)」。あれこれちょっとずつ悩みながらも距離感とその感じをうまく表現する言葉を見つけていく過程がとても可愛らしいです。

 

30年以上前の漫画だけどいつ読んでも楽しい。

 

コンプラ的には酒、(正義のための)暴力が絡みますが、私が学生の頃にこれを読んでも酒も暴力も全然興味がなく未だにお酒もめったに飲まないから、読む本とかドラマとかに酒や暴力が絡んでいても影響力なんて微々たるものだと思うけれどな。

それより、最近昔の漫画をよく読んでいるんだけど小学生の主人公の男友達が大好きな相手が男の子であるとかいう描写があったり、カードキャプターさくらはいろいろ関係性に興味深いものがあるし、昔のほうがその辺が特に狙いすぎずごく普通に寛容で当たり前のように溶け込んでいて普通に読み流せる感じがする。同性で愛し合っていても「そういうこともある」と自然と思っていたし、逆にそれをおかしいとか自分の感覚を他人に押し付けて相手を傷つけることが理解できなかったものだった。

 

最近漫画の単行本をあまり買わなくなったのは、単行本自体が様々な事情でケチ臭く薄くなってしまったのと、1回読んだら(面白かったら)10年は覚えているから本棚にあっても読み返す機会が少ないのと、面白さより様々な規制がかかってこういう描写なんだろうなというのが頭に引っかかるようになったからなんですよね。

いま買ってるのって「ミステリと言う勿れ」と「よつばと!」と「3月のライオン」と「きのう何食べた?」と「ダンジョン飯」と「ゴールデンカムイ」くらいかな…「乙嫁語り」と「宝石の国」は好きなんだけど途中から買いそびれている。

たまに1巻無料とかで本を読んだりするけど、続きを読みたいほど面白いものはそんなにない。

 

コンプラとかなーんも考えないで読んでいた時代の漫画がやっぱり読みやすいけれど、いまの子どもはいろいろ気遣われたものを手にするんですよね。これどんな感覚なんだろうな…大人以外が酒を飲むとか。そういえば「今日から俺は!」のドラマ化は子どもに大ウケだったとか。どれだけ現代の漫画が気をつかっても(アニメとか血が赤くないこともあったり)昔の無茶やってるほうが面白くてウケるのは現代の人のすり減る気遣いが空回りしているようで悲しくもある。こうやって縛りに縛ったものを、緩めることって難しいからますます締め付けられていくのかなー

その頃には漫画ってどうなってるんやろ。鬼滅は結構残酷な描写が多いけれどそれを懸念する親とかいたりそれでも好きな子どもがいたり。それを言うとコナンくんなんかほぼ毎回少年少女たちがリアルな死体と向き合ってたり、下手したら自分たちが狙われるという状況に追い込まれている。でも人気だから許されているような。

 

そのへんの線引き、締付けについて思いながらも昔の大好きだった漫画をいま消化しているのでした。