イギリスにも古墳があるのか!あるわなー?っていう程度の知識から見ております。
見る前後に「イプスウィッチ 史跡」で検索していろいろチェックしておくといいかも。
こちらの商品紹介より下はネタバレを含みます。
The Dig: A Novel Based on True Events (English Edition)
- 作者:Preston, John
- 発売日: 2016/04/05
- メディア: Kindle版
第二次大戦直前のイギリス。 不思議な塚の発掘を望む未亡人が雇ったのは、経験豊富なアマチュア考古学者。 この出会いが、歴史に残る大発見へとつながっていく。
イギリス南東部イプスウィッチで広大な邸宅を持つMrs.プリティ(プリティは苗字:キャリー・マリガン)が何かしらの勘で自分の所有する土地の塚の発掘をバジル・ブラウン(レイフ・ファインズ。イプスウィッチ出身なので説得力ありありというか、出身地で主演するなんてどんな気持ちなんでしょうね)に依頼する。最初は夫人が指定した塚を既に盗掘されていると判断して別の塚を掘っていたが、落盤事故で九死に一生を得たときに天啓を受けて?夫人の言う塚を掘ることに。
この時代の少し前にツタンカーメンを発掘したカーターもそういう感じの天啓を受けたって漫画で読んだことがあるから、それに影響を受けてたまたま当たったのかどうか。
レイフ・ファインズが「スネイプの墳丘では鉄の鋲が出たよな?」という台詞を言うので私一人がニタァと笑ってもーたんですが、どうでもいいですね。サフォーク州の地名だそうです。
最初吹き替えで見ていたんですが、レイフ・ファインズの吹き替えがあまりにも老け込んでいてたしかに年齢より老け込んだ役柄で、それっぽい佇まいを見せます。007と大違い。さすが。昔からこの方の出演する映画を見ているので(「イングリッシュ・ペイシェント」と「ことの終わり」が大好き)この方の演技の巧さは理解しているつもりだけど、こういう滋味のある役もされるようになったのねえとしみじみ。だから元の声に馴染みがあるので字幕にしました。
キャリー・マリガンも実年齢より老けて見える役です。「ドライブ」の時かなあ、ふんわりとした笑顔の可愛いお嬢さんだったけど(あのときもシンママだったっけ?DV夫がいる人だったっけ?)ちょっと貫禄のあるマダムの役も合っている。1930年代の流行りのドレスも似合う。心臓疾患を抱えているからやつれた面差しになっているのね。しんどそうなのが伝わってきて私まで心臓が苦しくなりそう。
この二人が古墳の発掘を巡って静かな友情というか信頼関係を育んでいきます。
最初は人手不足で断ってきていた博物館が発掘品が思いがけないほど重要だと知ると自分たちに扱わせろと越権行為にも及ぶなど静かな作風の中にも波風あり。
なんのために考古学があるのかというのを奥さんが語りかける台詞が私もちょっとだけ疑問に思っていたところがあるので(考古学は大好きですよ、なんなら専攻しようとしていた)胸アツでした。
途中からリリー・ジェイムズも登場するんですが、こちらは老けて見えずピチピチです。キャリー・マリガンとそんなに歳は変わらないのに。
女性で体重が軽いってだけで発掘に採用されるなど、途中で発掘の主導権を握った教授の学歴と性別での扱いが悪くて感じが悪いのでプリティ親子に地味にいけずされるのが面白い。
歴史を知らなくても、それが本来見つからないはずの時代のものだとかどういう意味で重要なものかは台詞の端々で伝わってきます。
その側面で第二次世界大戦開戦間近で夫人の従兄弟のローリー(美丈夫さん)も空軍に配属されるし発掘自体も中止になる前にやってしまおうと取り組んでいるという流れ。
第二次世界大戦のイギリスでは若い男性が随分亡くなっていますから、その悲劇の前兆のような雰囲気がそこかしこでしております。不穏と言うより、寂寥感というか日常から離されていく悲しさというもののほうが濃い演出です。
明言されないけどリリー・ジェイムズの夫が隠れゲイで同僚のイケメンと怪しいんだよね。そこを妻も察してる。カメラの映し方があやしい。めっちゃ匂わせ。だから戦争を前にセンチメンタルになり気味の従兄弟といい雰囲気になるわね。
台詞で直接語らず、カメラや人の目線や仕草で様々なことを知らせてくる上手な作品でした。学歴がないというだけで功績が認められない人や、幼くて賢い息子がいる上で目の前に死がある夫人、夫に愛してもらえず好きな研究でも軽い扱いの女性など強くはない立場の人がその時代にいたことをそっと伝えてくる。子役も魅力的でした。
レイフ・ファインズもよかったけどキャリー・マリガンがうまかったなあ。アカデミー賞取らないかしら(2021年の作品だから来年かな)身内に心臓疾患を抱えた人がいるんですが、仕草や表情が一緒でした。
大きな動きはほとんどなく、スカッとするような作品でもないけどたまにはこういう作品も見たほうがいいですね。かなり上質でした。じっくり見られました。