夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

激突!(スピルバーグの映画)ネタばれ感想

AT車?なにそれ?って時代の車のスリラーです。 

スピルバーグは短編を作っても長編を作ってもスピルバーグなんですよね。駄作じゃない。若くてもスピルバーグ、老いてもスピルバーグ。50年近く前の作品ですが、いま見てもすごく面白いので見られる環境があったら見たらいいですよ。85分と短いのも気持ちいい。

激突! (字幕版)

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カリフォルニア州を車で南へ走る平凡なサラリーマン、デヴィッド(デニス・ウィーヴァー)は大型タンクローリー車を追い越したところ、その車に執拗に追い回される羽目になる。
   当時25歳のスティーヴン・スピルバーグ監督が劇場用映画監督デビュー前に撮ったTVムービーだが、そのあまりのおもしろさゆえに日本では劇場公開され、大ヒット。アヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭でもグランプリを受賞している。
   タンクローリー車の運転手を一切画面に登場させず、あくまでクルマのみが映し出されることが、不気味な恐怖を倍増させていると同時に、顔の見えない現代社会の不安をも反映させてもいる。シンプル・イズ・ベストを地でいく怒涛の展開ののち、荒涼とした空しさを醸し出すラストも印象的。

子供の頃に1回、10代のころに1回見たはず。だからかなり久々ですが、やっぱり面白いんですよね。予算かけなくてもおもしろいものが作られることの代表例としてたまに挙がるんじゃないかしらん。子どもの頃に見ても、よくわからない怖さを感じるのです。

 

車内エアコンが不十分でなかった時代(って1970年代前半ってそんなもんかなあ、私もよく知らんけど。その時点でラジエーターホースに欠陥がある車だからもっと古いのか)窓を開けて荒涼としたハイウェイを走っていたら、前を走るタンクローリーの排気が直接入ってきて煙たいから追い越しをかけたらマジギレされてやたら煽られる、諦めて追い越させてやったら待っていてまた煽る体制になる、という入り口から煽るローリーの恐怖が始まるんですが、誰でも語ると思うのですがドライバーの顔がまったく出ないんですよね。足首から下しか映らない。そこが怖い。

いちどドライブインで屯しているドライバーの誰がそうか、特定してやんわりやめていただこうとお願いしたら全然的外れで逆ギレされるという展開もあり、あの犯人探しも緊迫感があるんだけど私は「このなかにいない」とわかっているから気の毒でたまりませんでした。

警察に助けを求めるために公衆電話を借りたシーンで完全に一線を越えたと思うんですけど、そのあいだの小学生たちを乗せたスクールバス(あれどこからどこへ向かうスクールバスなんだろう…あのルートのどこにも住宅街みたいなところはなかったけど。周辺10kmは確実に荒野っぽかったのに)が立ち往生しているのは車両をローリーで押して元の道に戻る手伝いをするという謎の善行をしていてそこは助けるんや、さすがスピルバーグ…と唸ってしまいました。

 

そこからローリーVS普通車でカーチェイスが始まるのですが、上り坂でローリーが不利なときは普通車のラジエーターに異常が起こってさらなるスリルがあり、退屈しないんですよね。

日本でも狂気じみた煽りで煽られた側が犠牲になることが多々ある今、逆ギレした主人公が行うラストを見ていただきたいものです。たかが追い越しをかけたくらいでなんで命がけのデスゲームになるんだと昔から信じられない気持ちで見ていたけれども、リアルにもこういうことはままある。

私が実際目撃したのは逆だったけれども。普通車が大型トラックに喧嘩売って蛇行したり幅寄せしたり、信号待ちで横付けして車内から腕を振り上げて怒っていたけど、後続車をヒヤヒヤさせるような抗議はやめましょうね。

 

ラストの主人公の行為、カメラの撮り方もリアルです。私もああいう状況になったらああする。この主人公はわりとずっとボヤいているんですが、ダイハードのマクリーンのボヤきの原点かもね。

家庭にちょっと問題を抱えていて早く帰りたい理由があるなど主人公はいろいろ見えるものがあるけれど、ローリーのドライバーにはないのも対比的で行動原理はシンプルに「追い越されたことがムカつく」一択なんでしょうね。そこが怖い。でもグロテスクなシーンがないから目を覆わず面白がって見られます。

 

久々だし、時代の古さを懸念して見るか迷ったけど見てよかったー。シンプルに怖い映画って好きなんですよね。スピルバーグはやっぱり好きです。戦争が絡んだやつはそんなに見てないけど。