面白かったんだけど…この作品がどういう経緯でどういうシリーズで出版されたか知らなかったからさ…
死すべき罪人の名をネットで募り、予告殺人を繰り返す劇場型シリアルキラー〈エウメニデス〉。挑戦状を受け取った刑事・羅飛は事件を食い止めようと奔走するが……果たして命を懸けたゲームの行方は? 本国でシリーズ累計120万部突破の華文ミステリ最高峰
刑事の羅飛は18年前の因縁から事件に巻き込まれて捜査に加わるのだけど、なかなか事件の捜査に入れてもらえないの。本来は管轄外の刑事だから。だから事件の捜査を行い、渦中でいろいろ行動をするのは別の刑事たち、その分羅飛はちょっと自由に動けるという利点があるの。
その辺面白いし、警察小説が大好きだから手に汗握る展開、主要登場人物がなにかしら隠し事をしている、誰が犯人か、なにが起こっているのかなかなか分かりづらい。もう出ているのか、出ていないのか、いろいろ。謎が謎を読んで、それを明かすタイミングが上手くてグイグイ引き込まれるんだけどまあそれでも疑問点はあって、登場人物の行動より作者の作為や物語のための展開なんだな、と思う部分も大きくあり。
終盤の羅飛の判断も、その判断に至らしめたある作為も、大元になった事件についても一通りちょっと軽いのが気にかかってしまった。
面白いんですけどね。
そしてラストの一文で私は目を剥くのですよ。
ネタバレにはならないとは思うけど、一応離しておくか。
「第一部 完」
な、なんだってえええええええええ!?
シリーズ物なのは知っていたけど!3部作ってそういうこと!?って。
以下、本当のネタバレ
まさか真犯人というか実行犯が逃げた状態で物語が終わるとは…
それと真犯人と言うか実行犯が最初からぜんぜん本当に姿がない存在だったとは…これはズルい。フーダニットじゃなかった。
ミステリとかサスペンスでかなりの損傷の遺体ってのは、DNA鑑定ができない時代の話に限定されがちだけど亡くなった本人じゃない可能性が高い。この物語においてもそのへんが怪しいとは思わされる。それは当たっていたんだけど、実行犯になりえない人物ではある。
登場人物が変な動きをする度にこの人?この人?と思ってしまう。が、この人?が出てこないんだからズルいわあ。
実行犯じゃなくて計画犯の最初の犯行について、わざわざ羅飛の恋人を巻き込んで殺す理由がわからん。コインの裏表のような存在の羅飛を後に自分の計画に引き込むつもりでにしても命が軽すぎる。そらーキレて自爆するわ。それに自分の順風満帆な人生を犠牲にしてでも友人の恋人を殺してでもって重たい選択にしては動機になる事件がいまいち弱い気がする。法律に疑問を抱いたとしても、優秀でエリート刑事の未来があった人がやることかなー恨みがある相手にももっとほかの制裁の手段はあるっしょ
実行犯のほうの真犯人にしても信念にブレがあって、罪がなくても邪魔なら殺す(殺させる)判断をするのもなあ、ブレるような人は成功しないものなのに。そのへんの流儀がよわくて殉職した熊の人かわいそう。
そのへんの抜けや疑問点は、作者が物語を面白くするために行動させたんじゃないかって思っちゃう。そこらへんのリアリティが弱いと急に冷静になるものです。
あと、トランシーバーの爆発音が大きな疑問。爆発した時点でトランシーバーが破損するなら爆音は聞こえないからなー。それがずーっと気にかかったけど作者がリアリティを追求しなかっただけっぽい。
命の軽さといえば、まあ殺しても惜しくはない人間にしても選択を迫られたら刑事一人の密かな判断で死なせる方に決められるのも。ちょっとクレイジーじゃなかった?この辺の人道的な部分が希薄なのは文化とか教育の違いとかじゃない気がする。物語の都合上…?
そのへんに不満を抱えたけれど、3部作で気になるところで終わったのでそりゃあ続きが出版されたら読むでしょうねえ。面白かったし。この作品の前身になる物語はちょっと趣きが違うらしいのですが(同じ主人公で刑事モノだけど伝奇ものなんだって)それはそれで気になる。
この作品で一番驚いたのは巻末の「第一部 完」だけどな。
ジョジョの奇妙な冒険の「To Be Continued」が頭をよぎったばい。