先日親友と「モッキンバード」という小説について話をしたときに、ウォルター・テヴィスかべつの作者の作品かというやりとりをしました。親友が挙げたのはテヴィスじゃないほうでした。私はテヴィスの方をたぶん持ってるんじゃないかしらん。
この手元の「駒」が物語を表していますね。
母親の無理心中未遂により孤児になったベスは養護院で雑用係からチェスを習い、引取先で養母と連携を取りチェスの天才として名声を恣にしていくというのが前半。
その表層的な展開とは別に、養護院でおとなしくさせるために子どものうちから精神安定剤を与えられ、その薬によって齎されたチェスボードの幻影でプレイすることに快感を憶えていき、ドラッグとアルコールも学生のうちから知っていくことに。途中で旅先で養母を失い、「母親の死」を二度まだ成人しないうちに体験することも人生に大きな影響を与えたのかな。
それでも薬やアルコールに溺れると言うより研ぎ澄まされていくようだった。でも何度も忠告をされる(自分が体を壊している自覚がない養母以外)
天才は放っておけないのかいい支援が受けられる環境を不安定ながら持たれるのが面白いけれど、ちょいちょい亡くなった実母の人間不信、男性不信のような呪いの言葉を思い出すのが特徴的。孤独な人がなにかを庇護する(ここでは孤独な母と娘)と、日々の思いや思い込みや、悪くなると呪いをじわじわと吹き込んでいくのよね。私もおぼえがある。
孤高の天才の話かと思ったら、終盤は熱血スポ根的な印象も受けました。元カレや負かしてきた男たちが激励するシーンが面白いくらい胸熱。
男性社会のチェスプレイヤーの世界に美しい衣装とバリバリのメイク、とんでもない眼力で挑むのだけど、ジェンダーとかセクハラ的な要素はチェスプレイヤーの上へ行けば行くほどあまり気にしてない、スポーツマンシップというか、同好の士というか、彼らはたぶんただただ「つええやつとたたかいてえ」って気持ちでいるんじゃないかしら。負けてショックの人もいれば、嬉しそうにしている人さまざまいて私はひげもじゃのソ連人の負け方が好きでした。
養護院時代の仲間の人がいいアフロだったなあ…
ワッツ役の人が子役から知っていてあのまま成長しているのでびっくり。お髭が生えてるだけで顔は変わってない。
こちらですごく可愛かった。マライア・キャリーを唄うクールな女の子が好きな子。
このブログでもたまに触れているのですが、私はチェスが取り上げられた物語が大好きなんですよ。駒の動きはざっくりしか知らない、将棋は知っていて詰将棋はやってますけど。将棋と違って持ち駒として再び盤面には出せないのよね。
作中でも引用されたチェスの駒が宇宙だとかどうとかもいままで読んだ小説で知っていてチェスがモチーフの作品だったらわりと取り上げられがち。それもあるからか、チェスボードが眠っているときの天井に浮かぶというこの作品でのシーンは宇宙を見ているようにも感じられました。
チェス用語も大好きで特に好きなのはツーツクワンクですね。動きたくないのに動かされてしまうという比喩にも使われるやつ。
チェスの駒の美しさや私には理解の及ばないテクニックで戦う様子を見るのが大好きなのです。将棋も対局は苦手なのよね。カードバトルと同じで、自分の手駒とか手札にしか集中できず、相手の出方に興味を持たないからそりゃあ負ける。向いてない。(人を操るのは割と好きで得意だし、行動も読めるのになあ…)でも詰将棋はパズルだから大好き。チェスプロブレムにも挑戦したいと思いながらも、駒の動きや特色がいまいちピンとこないからまだ無理。
作中でチェスの勉強をする姿が沢山でてくるのだけど、そうしている人を見るのが好きだからそれだけでも見てよかった。人が勉強したり、本を読んでいるのを見るのが好きという変な性癖があるんですよ。
チェスプレイヤーといえばソ連人(ロシア人)、天才、孤独、というイメージが付きまとうけれど今作でもソ連がバリバリでてきてそこも好きです。チェスプレイヤーは外国人でもアイドル扱いというのは全然大げさな描写じゃないと思う。
ボビー・フィッシャーの本を持っているので読みたくなっちゃった。
チェスもので好きなものを3作挙げておこう
大好きなローレンス・フィッシュバーンがいい役で出ます。
すごく美しい小説です。
学生の頃に何回も読んだ歴史SF…かな!?歴史ミステリよりもSFかな?私の好みがふんだんに取り込まれています。
それにしても、クイーンズ・ギャンビットが日本でもヒットしたらたぶん原作が翻訳されるのでもっと盛り上がってほしいな。読みたいです。