夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

20003 シャンナ・スウェンドソン 「カエルの魔法をとく方法」

 やっと…読めた…

愛しのオーウェンと晴れて婚約したケイティに、魔法界のマフィアと言われる謎の組織コレジウムが接触してきた。コレジウムは以前からMSIの取乗っ取りを企てており、その目論見はいったんはマーリンに挫かれたものの、彼らの息のかかった社員はいまだMSI内部に多数いるらしい。マーリンは一計を案じ、逆にスパイを送り込むことに。となれば適任なのはケイティしかいない。結婚目前で潜入捜査? 大人気シリーズ待望の第8弾。

時間がかかったのはねえ、男女カップルの恋愛話にさほど食指が動かなくなっていて幸せならそれでいいのになんでわざわざ問題が起こったらそこに首を突っ込んでいくのかわからない、シリーズものによくあるパターンになっていく感じがしてそれは…この作品には…避けて…もらいたいけど…ケイティってそういうとこ…前から…ある…と思っていたのでした。

で、実際読んで数ページでそんな感じがあるのでなかなか進まなかったのだけど、まあ強引すぎる首のつっこみ方じゃない、正直誰がカエルになろうがオーウェンが素敵なら私はどうでもいいのだけど、ケイティが敵対企業にヘッドハンティングされて潜入捜査することになったらオーウェンの出番が減るじゃんよ、と思っていたらたしかに出番は減ってしまった。

 

が。

 

減ったら減ったでね。

私は往年の名歌謡曲が頭をよぎったのであった。

 あえないじかんがーあいそだてるのさーめをつむればきみがいるー

よろしく哀愁

よろしく哀愁

 

 そこまで世代じゃないんですけどね。

 

オーウェンがあの手この手を駆使して逢瀬を試みるのはすべてがロマンティックであった…さすがオーウェン、シャイだけど決して朴念仁ではない。そこが日本人男性のテンプレと違う。ロマンス上手。

 

あくまでケイティの視点で語られるので、どういう状況でそうなったかはわかんないけど、様々な場面で魔術の天才と言われているのにとっとと罠に落ちるのがなるほどアメリカンヒーローという感じもする。アメリカのヒーローってなんでここであっさりやられるのよってくらいしょっぱい目に遭うよね。

 

謎の企業に潜入捜査のくだりはすごく設定がしっかりしていたのだけどしっかりしすぎていてこれ何の話だっけ、企業スパイの話だっけ、魔法恋愛ファンタジーじゃなかったっけ、って疑うくらいの徹底ぶり。そうそう、この作家さんはそういうちゃんとしたところがあった。「魔法無用のマジカルミッション」でもそんなにやるかっていうくらい終始マンハッタンを走り回っていたわ、それは丁寧に。

だからすごく地に足がついた内容で、読み応えはあるんです。そのへんをちょいちょいちょいとつまんで読み手が求める美味しいシーンしかないみたいな本がたくさんあるけど、そうことはないんです。でもそこまで頑張らなくてもいいんじゃない?ってくらいオーウェンが出てこなくなっちゃうんだけれども。

 

魔法使いの企業の潜入捜査って実際こんなかな?って思えるくらいしっかりしていてね、魔法使いのバトルってこんなだろうな(ハリポタのイメージで補完)って思えるシーンもあり。

結局どの程度大きな組織がどの程度世界を脅かしていたのかはピンとこない部分もあったんだけど、ケイティがそう言っているんだから大変だったんだと思うよ!って感じです。読者に伝わる説得力が若干謎だった。でもケイティにしかできない判断、ケイティにしか出来ないものの見方、ケイティにしか出来ない戦い方がしっかりしていて、やっぱり主役はケイティなのでそれでいいんです。

 

で、ここからはあくまで今の私が読んでの感想ですが。

ネタバレを含むのでたたみます。

 

 

 

 

 

 

オーウェンがカエルになるとか、しかもなったところの細かな描写がないとか、そこ、あくまでケイティが視点だからとはいえ雑じゃない?ケイティに見せ場を与えるためだったらちょっと他にもあったでしょーよ。

でも結果的にロマンティックな展開もあったからいいけれども…それに前からこういうところがあったからそんなもんだとも思うけれども…オーウェンがカエルて。

私はたまたま昨日、「珍しい死に方」というのをウィキペディアで調べ、度胸試しでナメクジを食べて細菌か寄生虫だかにあたって死んでしまった人の話を読んだばかりだったので多少「うへえ」と思ったのでした。ヤモリを食べて死んだ人の記事もあったよ。

ゲコゲコ言う状態じゃなかったのがヒーロー補正かな。

 

私がこのシリーズを読み始めたのが2010年の年末ごろだったのですが、その時点では円卓の騎士とかアーサー王の伝説って至極まっとうな知識しかありませんでした。

永遠の王〈上〉―アーサーの書 (創元推理文庫)

永遠の王〈上〉―アーサーの書 (創元推理文庫)

 

これに出てくるマーリンのイメージしかなかったような。

 

が、いまは2020年。

マーリンといえば、日本でスマホゲームやってるオタク層のちょっとした割合でイメージするのが

 花の魔術師。夢魔の混血、あとなんだっけ、人でなしだっけ。

 

で、モードレットといえば。

 これなのであった。

混ぜる気はないけれど、経年によって付加するイメージがいろいろできるよね、と思った次第。

聖杯伝説がもともと大好きだから、有名人が出てきて活躍するお話は大好きです。

そういえば救出した元カエルで長い間そこにいたモードレットのご同輩って誰だったんだろ。マーリンがそんなに気にかけてないとしたらキャメロットの中のモブ騎士かもしれないけど、そこまで保存されていたのだとしたらねえ。ギャラハッドかケイ卿だったら面白いんだけど。

というかモードレット魔法使えたっけ、あ、お母さんが魔女か。

なるほど、モードレットだったのは納得の人選なのか。

 

なんてことを考えたりもして、変な世界観を知ったうえで読んでも楽しかったです。

ここまで来たら一応完結編という次巻もまた読みます。