
- 作者: 夏目漱石
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学生の頃は漾虚集としてまとまったものの一作とみなしていたけれど青空文庫では分けられているので一作一作分けて考える。
これは先生の倫敦留学時の旅行記とも取れるけれど、フィクションの匂いもあり、どこまでが現実かそうでないかがわかりにくく書かれている。
文章があまりに美しいので声に出して読んでみた。読むうちに主人公=先生の見た幻影に誘われる。
多くの人が投獄され処刑された倫敦塔を観光するにあたって目にする要所にて昔起こったにちがいない光景が目の前に浮かぶというのを、当時先生が倫敦で見たらしい絵画になぞらえて描写されるのだけど、その元になった絵をたまたま美術館の催しで見たばかりだったので鮮やかに想像できた。というか、それを忘れていたので鮮やかにイメージできる自分に先生とのシンクロを感じるという勘違いまで体験した。
様々な象徴的な体験をしたあと、現実に戻った先生にパブの主人は「倫敦塔あるあるじゃん?」と興を削ぐことを言い、これ以上知ると幻想がぶち壊されるからもう行かないもんね!と思うお話を、先生だからさらっと美しく、ナイーヴに綴っている。でも興を削がれたあたりの落差、オチの付け方は可笑しかった。是非、声に出して読んでね。