夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

アン・ペリー 「見知らぬ顔」

見知らぬ顔 (創元推理文庫)

見知らぬ顔 (創元推理文庫)

もともと「十六歳の闇」をずっと積んでいて、その作者の背景と大好きな19世紀イギリスものばかりを書いているというので気になっていたところ、このモンクシリーズが話題になって最近3作目が日本で出版されたので良い機会と手配。

夢も見ない眠りから覚めたとき、彼はすべての記憶を喪っていた。自分がモンクという名の刑事だと知らされ、病状を隠して職場に復帰したが、割りふられたクリミア戦争帰りの退役少佐殺しは容易ならざる難事件。十九世紀英国に孤立無援の警部が展開する、自分探しと真相究明の旅の結末は? 構成堅牢、時代ミステリの決定版!

割り振られた事件というのが序盤、そこまでそそられなかったのだけど被害者の人物像とその周りを取り囲む人々がはっきりとするにつれ、モンクが記憶喪失前に知り合った人物とのやり取りが増えるに連れ面白くなってくる。
物語の鍵を握るのは今後のシリーズにも出てくるクリミア戦争従軍看護婦だったへスター。彼女が出てくるとお話がぐっと面白くなっていき、その目線でみる人物像とモンクが獲得する人物像で読みては様々な情報を得ることに。モンクが記憶喪失前の自分に失望しつつも記憶を取り返そうと躍起になるのもお話に深みを与えています。

ここで触れたいのはモンクが記憶喪失を隠したまま事件究明に乗り出すときに相棒になるエヴァン。牧師の息子で上流階級と変わらない教育を受け、上品な所作を身につけた素直で擦れていない容貌も良い青年が、記憶喪失で手探りで事件と向き合わなければいけないモンクの心の拠り所に。

この作品に出てくる女性は被害者の義理の姉のロザモンドとへスターの義理の姉のイモージェン以外、気が強いか意地が悪いか面倒くさいなかで(へスターは強烈。強い。怖い。いい人ではあるけど)エヴァンが一番可憐で主人公に優しい。
もちろんモンクが異性に心を惹かれて揺れる描写もあり、エヴァンが同性愛に嫌悪感を示すシーンもあるものの、

妄想可能

と読み取りました。
このシリーズは18年の歳月をかけて3作目までは翻訳されているのだけど、本国では8作目まで出版されていて固定ファンからは時々話題になっているらしい。最近の3作目の出版はその評判をうけたのかな…3作目の評判はかなりいいので、ぜひとも続きもコンスタントにだしてもらいたい。
あと、これと2作目も復刊して欲しい。面白いのは間違いない。

私はもう2作目も手にいれていて、割とすぐにでも読みたいけど…さて、お部屋のどこにあるんだろう、さがさないと。


災いの黒衣 (創元推理文庫)

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護りと裏切り 上 (創元推理文庫)

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護りと裏切り 下 (創元推理文庫)

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十六歳の闇 (集英社文庫)

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