夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

アーサー・C・クラーク 「幼年期の終り」

幼年期の終り ハヤカワ文庫 SF (341)

幼年期の終り ハヤカワ文庫 SF (341)

SF読みの基本中の基本だと勝手に思っている本。13年くらい前に突如として訪れたSFブームのときかな?そのときに青背を購入。同時期にブラッドミュージックとか虎よ、虎よも買っていた。
このお話はゼノギアスのカレルレンの元ネタの人が出てくるのだとか思いつつ、読まないまま光文社古典新訳文庫でも購入。
幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

なにか得体のしれない敷居の高さを感じつつ読まないでいたのだけど、このたびKindle版がお安かったので購入。iPhoneをお風呂に持ち込んで読み、寝床ではiPadで読みと電子書籍の利点を生かして読了。
結果として、早いうちから読んでおけば良かったと後悔。
こんな話でカレルレンというかオーバーロードがどんなものか知っていればすごい勢いで食いついていたはず。SFだけどオカルト要素が重要な位置を占めていて、オカルトがオカルトである部分の理由がまたすごい。
たんなる未知との遭遇とか宇宙戦争的なものかと思っていただけに全然違う結末を迎えて驚いた。
私は読書をする上で一番嬉しいかったり期待することは、びっくりさせられることなので、このお話の随所で感じた驚きが嬉しくて。どう展開してなにが「終り」なのか全然予想がつかなくて、面白かった。
やっぱり思い込みはいけない。あと、余計な知識なく読む方が良い。
ああいう面白いものを読んでいても核心的な部分に触れず勧めてくれたたくさんのSF好きさんに感謝。

アーサー・C・クラークの著作で持っているもの

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)

都市と星(新訳版)

都市と星(新訳版)

銀河帝国の崩壊 (創元SF文庫 (611-1))

銀河帝国の崩壊 (創元SF文庫 (611-1))

楽園の泉 (ハヤカワ文庫SF)

楽園の泉 (ハヤカワ文庫SF)

2001年宇宙の旅は映画でまず原始人のところで眠り、いちど持ちこたえたら次の美しく青きドナウで爆睡、起きたらなんか赤かったって記憶しかない…まともに全部見てみたい。

頭がぼちぼち整理できてきたのでここから本編の感想




冒頭の冷戦時代の凌ぎ合いのエピソード、最初の章の事務総長の冒険などはラストがああなんだから瑣末なことというか、特に冷戦に関しては作者は「んなの、圧倒的支配力を持つ宇宙人がきたり人類の子孫繁栄が絶望的になれば意味ないんじゃけえね」って言いたかったのか。
本当にそう思うのでくだらんことで所有権の主張とかしてないで仲良くしなさいよ。どうすれば仲良くなるのか?もう、考えるのも面倒臭いからオーバーロードに…と思うけど、オーバーロードが来たら結果的に地球は滅ぶので、奴らがこなくてもいい社会を築いてもらいたいものです。
オーバーロードの姿、彼らの目的など、途中まで秘密扱いされたことでそれが明らかになる様子はスリリング。
人類が長い間悪魔の姿を恐怖の対象として表現してきた理由というのが面白かった。あのアイディアだけでお話がひとつできそう。
翼、角などの異形の証は日本にも海外からの文化の伝来が変質して伝わっているけれど、その根本が過去に獲得した恐怖感からではなかったら、って思うとこわい。
そして変貌を遂げた子供達の、なんでこうなったって展開が悲惨。彼らに思想がないだけになす術もなく、子孫ができないということがどれだけ恐ろしいことなのか。
私はこのお話は漠然と怖そうだとは思っていたけれどそれは宇宙人が怖いんだろうと予想していて、実は一番怖いのは人間の子供達でした、というのに驚いた。
面白かったけど心のざわつきはしばらく消えないだろうな。